12月31日(土)
特別編-Year End and New Year of 2016~2017-
2016年もついに大晦日。
クリスマスのときと同じで、年末年始も栞の家でお世話になっている。もちろん、栞と一緒に受験勉強をするのが主な目的だけれど。
気付けば、節目のときは栞の家で過ごすのがお決まりになったなぁ。僕がここに泊まる度に、栞の御両親に温かく迎えていただくことを有り難く思う。
「悠介君、ここが分からないんだけど」
「ええとね、ここは……」
栞が分からないことを教えることが多いけれども、知識をより深く理解する機会でもあるので僕にとってもいい勉強になる。質問ばかりでごめんねと栞は言うけれど。
「うん、前よりもできてるね。あと一歩って感じかな」
「良かったぁ」
「……今日くらいはもうこの辺でいいんじゃない? あとは年越し蕎麦を食べながら紅白歌合戦とか観てゆっくりしようよ」
もう午後7時過ぎになっている。外もすっかりと暗くなってしまった。
今日も午前中からずっと受験勉強をしていた。僕にとっては栞に教えていたこともあって、あっという間に日が暮れてしまった感じだけれど。
「そうだね。今日と明日くらいはゆっくりしていいよね」
ゆっくりしてもいい時間が明日まで伸びてしまったけれど、明日は元日だし……初詣に行くつもりなので明日まではゆっくりと休むことにしよう。
「じゃあ、悠介君。ぎゅーってしていい?」
「うん、いいよ」
そう言って、僕が両手を広げると、栞は僕の胸の中に飛び込んできて、ぎゅっと僕のことを抱きしめてきた。
「今年もお世話になりました、悠介君」
そう言うと、栞は僕のことを見上げて、ニコッと笑ってくる。もう、これだけで受験勉強の疲れが吹っ飛ぶんだけど。本当にかわいい。
「うん。お世話になりました、栞」
僕は栞のことをぎゅっと抱きしめる。こうして抱きしめてみると、栞の体は華奢だなと改めて思う。
「今年は受験勉強をちゃんとすることができるかなって思ったけれど、悠介君のおかげで何とかここまで来ることができたよ」
「僕の方こそ。栞のおかげでここまで頑張ることができたよ。来年は絶対に2人で合格して、一緒に大学生活を送れるように頑張ろうね」
「……うん。じゃあ、その……約束の口づけをしてくれるかな?」
「もちろんだよ」
僕は栞と少しの間見つめ合って、そっと口づけをした。いつも温かくて柔らかい唇をしている。
唇を離すと栞は顔を真っ赤にしていた。
「……来年も頑張れそう」
「そっか。僕も栞と一緒なら頑張れそうだよ」
「……一緒に頑張ろうね」
「うん。一緒にね」
栞は「一緒」という言葉をとても大切にしているような気がする。受験生になり、同じ大学を目指しているからなのか、今年は栞から「一緒」という言葉をたくさん聞いた気がする。
『栞、悠介君。年越しそばができたから一緒に食べましょう』
部屋の扉の向こうから、栞のお母さんの声が聞こえた。
「はーい! すぐに行くね! じゃあ、悠介君、行こっか」
「そうだね。紅白を観ながら年越しかな」
「一昨年も昨年もそうだったもんね。去年は紅組が勝ったけれど、今年はどっちが勝つのかなぁ……」
「僕は白組だと思うけどなぁ」
大ヒットしたアニメ映画の主題歌とか、ドラマのエンディングで流れていたダンスとか。僕が注目している歌手は白組が多い。
「私は今年も紅組だと思うなぁ。あの人が初出場だし」
「ああ、朝ドラの主題歌も歌ったもんなぁ」
待望の初出場とも言われているし。そう考えると紅組が勝ちそうな感じもするか。
『2人とも、早くしないとそばがのびちゃうわよ!』
「はーい! じゃあ、行こっか」
「そうだね」
受験生となった2016年も色々なことがあったな。栞のおかげで第1志望の大学に合格できるラインまで辿り着くことができたし。
僕は今年一年を振り返りながら、栞と一緒に紅白歌合戦を観るのであった。
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