9月1日(木)
特別編-End of Summer in 2016-
今日から2学期がスタートする。今年は木曜日からのスタートなので、今日と明日さえ終われば休日がやってくるし、今日と明日は授業がないのでまだ半分夏休みという感じである。
といっても、僕や栞は受験生なので勉強をしなければいけないけれど。
午前7時30分。
今日も各駅停車八神行きの列車が到着する。
扉が開くと、そこには天羽女子高等学校の夏服を着た栞が立っていた。
「おはよう、悠介君」
「おはよう、栞」
電車に乗り、僕らを乗せた電車は今日も出発する。
「今日から2学期かぁ。悠介君と会える時間が減っちゃう……」
「こればかりはしょうがないよ」
でも、夏休みは互いに受験生でありながら、結構一緒にいる時間が多かった。受験勉強をしたり、リオデジャネイロオリンピックを観たり。お互いの家に泊まったことも何回かあった。
「受験勉強は大変だけれど、今年の夏休みも楽しかったね」
「オリンピックがあったからね」
時差の関係で夜から翌日の朝にかけてオリンピックを観て、午後に勉強をしていたという日が多かった。
眠くなる日は多かったけれど、オリンピックのおかげでメリハリのある生活が送ることができたかな。
「私、オリンピックのことを今でも思い出すと興奮してくるよ」
「色々な競技でメダルを取ったけれど、栞はどの競技が良かった?」
「私は男子の体操団体とシンクロ! 特に体操は良かったなぁ。久しぶりの金メダルだったもん」
「僕も体操は記憶に残ってるなぁ」
もちろん選手のみなさんの演技が素晴らしかったけれど、それよりも金メダルが決まった瞬間に、栞が僕のことを抱きしめてきたから。オリンピックを見ている中で栞が抱きしめてきたことは何度もあったけれど、その中でも一番強く抱きしめたのは体操男子団体のときだった。
「悠介君は何が一番印象に残ってる?」
「僕は男子400mリレーかな。動画を何度見返しても、あのレースは良かったなって思うよ。後は卓球かな」
「リレーは私も興奮した。予選から凄かったもんね」
「ああ。予選の記録を更に上回るタイムで銀メダルっていうのが泣けたよ」
「……泣いてたよね。悠介君、結構泣いてたよね」
栞はふふっ、と笑いながらそう言った。
オリンピックを観ると、その……結構くるんだよなぁ。歓喜の瞬間だったり、悲しみの瞬間だったり。感極まって涙を流してしまったことが多かった。
「何か、その……こ、こみ上げてこない?」
「こみ上げてくるけれど、私は結構それを声に出すことが多いかな。オリンピックのときは悠介君に抱きつくことが多かったけれど……」
その時のことを思い出しているのか、栞は顔を赤くしている。可愛いな。
「それにしても、今日から2学期かぁ」
「これからも大変だけれど、一緒に潮浜国立大学に行けるように頑張ろう」
「うん!」
僕と栞の志望校は地元の国公立大学である潮浜国立大学。結構頭が良く、これまで何人もの進学実績がある天羽女子高校に通う栞は大丈夫だけれど、トップクラスの生徒がやっと合格する八神高校に通う僕にとっては結構難しめだ。
「僕にとっては高いハードルだけど、頑張るよ」
「悠介君なら大丈夫だよ。模試での判定も上がってきているし。むしろ、私の方がより頑張らないといけないよ。悠介君に教えてもらうことも多かったから」
「それはそうだけど、栞だって判定は上がってきているから大丈夫さ。この調子でお互いに頑張っていこう」
「……うんっ!」
僕は栞の頭を優しく撫でる。
2学期が始まり、僕と栞の会える時間は少なくなるけれど、将来、また一緒にいられる時間が多くすることができるように、頑張っていこう。そんな想いを胸に、高校生活最後の夏が終わり、高校生活最後の秋が始まるのであった。
特別編-End of Summer in 2016- おわり
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