第2話「囮勇者のモンスター討伐2」
王国の城壁を出ると、緑の草で敷き詰められた絨毯のような草原が広がっている。
ここはエルボーデン草原。
王国に近いことからそう名付けられた。
まだ見習いの兵士達ははここで出没するゴブリンやスライムなどと戦ったりしてお金を稼いでいる。
まあもともと俺もそれをしていたんだが。
今度ゆっくりと俺が勇者になった経緯を話したいと思う。
「転移魔法を使います。私に触れてください」
王国は城壁に結界が張り巡らされているため、転移魔法が使えない。
だからこそ外に出てから言ったのだ。
昔のことを思い出しながら草原を見渡しキュールの方へと手を伸ばした。
いつもなら肩に手を置いていくといつの間にか景色が変わり転移をしているものだった。
「ひゃっ//」
「どうした!?」
俺の右手には弾力のある餅のような感覚がした。
離そうとするも俺の中の理性という生物がそれをしようとはしない。
「すまない!! これはわざとじゃないんだ!!」
「エスタロス……。お前はなんでこんなに変態なんだ!触って良いからと言ってそこを触る馬鹿がどこにいる!」
エルメロの頭が蒸発したように湯気が出て、大きな槌を俺の方へと向ける。
「ライト様……。こんな所では恥ずかしいです……」
「エロ!キュール!これは違うんだ!わざとじゃなくて!!」
そこでようやくその貧相なる胸から手を離す。
これは本当に邪な気持ちで行った訳ではない。
みんな大好きラッキースケベが起きてしまったのだ。
するとエルメロは槌を振り回す態勢に入った。
「まってくれ!これは本当に偶然で……」
「問答無用だ」
時すでに遅し。
次の瞬間俺は空中に飛び上がっていた。
槌で殴られた衝撃により身体はピクピクと痙攣している。
下を見るとキュールとエルメロが緑の中の小さな塵に見えた。
雲にまで達すると呼吸が苦しくなる。
そこから急降下すると、腹を波のようにうねらせて寝ているゴブリンに着地をした。
だが俺の変体質は敵にダメージを与えることができないのでゴブリンはビクともしていない。
そして腹をかきながら置いてある棍棒を持ち、鋭い目つきで俺を睨む。
「痙攣して動けないんだ……。ゴブちゃん攻撃はやめーー」
ゴブリンは手に持った棍棒で何度も俺を撲殺しようと叩いてきた。
美少女から虐められるのはいいが、こんな獣からのは全然嬉しくない!
何度も殴られた後、PTの可愛い二人が現れた。
「エスタロス。次からはもうしないか?」
「はい!もうしませんから助けてください!」
エルメロは槌を使わずに、素手でゴブリンを後ろから殴る。
ゴブリンはその一撃に耐えられないのか空高くへ吹っ飛んでいき、宇宙の星となった。
「おい……!!死んだらどうするんだよ……!!童貞のまま死んだら一生後悔し続けるわ!!てか死んでも死に切れないって!!」
痙攣は未だに治らない。
「死んでもないのにそういうな。死んでからいうんだな」
「いやいや!死んだら言えないし、死ねないから!」
「このぐらいの痛い思いしないとわからないだろう。変態な勇者なんだから」
「ごめん……次から気をつけます……ってわざとじゃないって!!」
この寝転がっている状態だとエルメロの大きな胸がより強調されて見えるな。
何考えてるんだ。
だから勘違いされるんだ。
でもひっじょうに!けしからん!!
痙攣して倒れこんでいる俺の肩をキュールが優しく叩く。
「薬草です。口を開けてください」
「あ…ありがとう。さっきはごめん!!まじでわざとじゃない!!」
「大丈夫ですよ。私こそ小さくてすみません」
「へ!?」
キュールは口に手をつけ、徐々に顔があかくなっていく。
「い…いや、何でもないですっ!」
動揺しているためか乱雑に薬草を俺の口の中へと入れてきた。
「ごっ……苦しい」
「すみません」
俺は口の中に入った雑草をムシャムシャと嚙み砕き、むせながらも腹の中へと入れる。
すぐに痙攣は治り、身体を起こすことが出来た。
「エスタロス……すまん。さっきはつい……カッとなってしまった。」
俺から目を離しながら話している。
なんでこんなにもすぐに謝ってくるのだろうか。
そう。エロはツンデレなのだ。
この娘はデレツン巨乳なのだ。
何回も言うがそうなのだ。
「でもエロはそこがたまらん!!それじゃあ気を取り直していくか」
エルメロは顔を上げると俺を見て笑い出した。
顔がおかしいのだろうか。
いや、もしそうなら前からずっと笑わられてるはず。
「どうした?」
エルメロは自分の口を人差し指で指した。
「ここに薬草ついてるぞ」
俺はすぐに爪で歯に着いた薬草を取ろうとした。
「真ん中だ」
前歯をこすり始めると爪の中に緑の粕が溜まっていた。
「取れた?」
エルメロはこくりと縦に頷く。
「それでは、行きますので私の身体に触れてください」
俺はさっきの失態を繰り返さないようにキュールの後ろへと周り背中にてを伸ばした。
「ライト様どこに行かれるんですか?」
キュールはこちらへと振り返る。
俺は背中ではなく発達途中の胸を触る。
「ひゃっ//」
「あ……」
「エスタロス。もう許さんぞ」
エルメロは槌を地面に置きポキポキと指慣らしをしながら歩いてくる。
「違うんだ!」
「黙れ!」
エルメロの一撃がみぞおちに入り、また気付くと空へと飛んでいた。
先ほどと同様に痙攣をしている。
一日に何度こんな目にあえば良いのだろうか。
次は山へと落ちそうだ。
モンスターがいなかったら、不幸中の幸いだな。
そして地面に着陸すると目の前に大きな鉄の胸当てをしたブヒーモスが立ちはだかっていた。
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