第1話「囮勇者のモンスター討伐1」

「今日のクエストは何にしますかっ?」

片方が垂れたうさ耳に蝶ネクタイをつけた黒いレオタードの受付嬢がニコニコと笑いながら尋ねてきた。

この娘がこのクエスト受注所の受け付け係のピュアちゃんである。

大抵の男共はここでクエストを受けるのではなくこの娘目的でここを訪れている。

もちろんこのワガママボディーを自分のモノにしたいが、うちのPTには可愛い娘達に怒られてしまうためナンパなんてできない。

「一番難しい依頼を頼む」

俺がこの集会所に依頼を受けに来れば、ここにいる人々誰もがこちらを見てくる。

まあ勇者だから当然か。

ピュアの胸に目が行きながら必死にそらそうとするもののそのバニーガールの魅惑に取り憑かれ、じっくりと眺めてしまう。

その際鼻の下が餅のように伸びる。

「あ……ライト様……恥ずかしいのであまり見ないでもらえますか……」

胸で手を隠し、顔を真っ赤にしながら言った。

恥じらった顔に俺は責めずにいられない。

「その顔……最高だっ!!最高すぎる!!もう一回!もう一回言ってくれ!」

そう言った後突然、俺の頭に衝撃が走った。

頭を触ると腫れているのがわかる。

ズキズキして痛い。

いったい何が……。

後ろを見ると、エルメロが目をつぶりながら拳をプルプルと震えさせていた。

一発殴られたのであろう。

「もう一発食らわせるぞ。エスタロス。卑猥な目で女を見るのではない!」

やばい。

エロを怒らせちゃったよ。

俺は必死になって手を横に振りながらなだめようとする。

「いや……これは違うんだ!別にピュアちゃんの胸が誘惑的だったからみてただけで……ってあれ」

ドゴンと音が集会所に鳴り響く。

俺はもう一発エロの拳を頭に食らったのであった。

頭を触ると腫れが二つになっている。

まるで鼠にでもなったかのようだ。

チュウチュウ!!

「気を取り直してクエストを受けましょうか」

「あ…はい」

俺は涙目になりながらもピュアを見つめた。

少し焦った様子で壁に貼ってある紙を俺の前まで持ってくる。

「これが今日の最高難易度です!」

そのクエストは、この王国周辺のテルス山のヌシブヒーモスを討伐するという内容であった。

テルス山は山菜に恵まれ貴重な食料が多く採れる。

だがブヒーモスがそこにいれば山菜取りの人々が近づけない。

そこで邪魔な豚野郎を退かすための依頼なのだろう。

ブヒーモスは胴体がオークで顔が豚といった凶悪な生物だ。

報酬金は1ゴールド20シルバー

この世界では、カッパー、シルバー、ゴールドという通貨がある。

カッパー100枚でシルバー1枚。

シルバー100枚でゴールドが1枚だな。

痛い目に会うのはごめんだが、一番お金が貰えるんだからこれを受けるしかない。

「じゃあこれで頼む」

ピュアはその紙に印を押し俺に渡してきた。

俺がブヒーモスを倒してこの紙とそいつをここに連れ帰れば印を押されてクエスト完了。

そしてここは、様々な職種の人たちが依頼を受け、報酬をもらえるところだ。

難しいクエストを受注すればそれなりにいいものがもらえる、逆に簡単なのだったらあまり良くないのがもらえる。

特に職種や、レベルとかは関係なくどんなものでも受けることができる。

例えばレベル1でも最高難易度の五つ星クエストでも受注することができる。

まあ、誰もそんな無謀な挑戦をしないけど。

まあPTに強い人が居れば勝てるってのも事実なんだけど。

俺のレベルは99。

もうカンストしています。

「エスタロス。何を受けたんだ?」

「テルス山のヌシのブヒーモスってヤツを討伐するやつだ!!行くぞ皆の衆!!」

「ブヒーモスと戦うのはあまり好きではないがまあ仕方がない」

どうせあんたは攻撃されないでしょ!

と突っ込みたくなったが、何も言わずに我慢する。

「ライト様。毎日囮役ご苦労様です。今日も3人で頑張りましょう」

キュールは姿勢を正しくし敬礼をする。

そして俺たちはこの集会所を後にしてブヒーモス退治へと向かった。

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