Dreamf-9 幻の皇
夢を見た。
それはまるで予知夢染みていて、夢を見ている円自身、不気味さを覚えるものだった。
その夢に出ているのは自分自身だろうか。
ビーストと戦っている。
何故自分かと思ったか。
光の色と、戦い方。
光は銀色。武器を使わず格闘で。銀色の光と言う事は即ち、まだモードチェンジをおこなっていない。銀色の光では、致命的なダメージは与えられない。
反撃を受ける。
ビーストの剛腕の拳を防ぎきれず、吹っ飛ばされる。
だがおかげで大きく距離が開くことで、攻撃を受けづらくなった。モードチェンジを行うならば、今しかない。
コロナを出現させ、片手を天に掲げる――
はずだった。
だがいつも出現してくるはずの赤いコロナは出現しなかった。
代わりに、水面のを表すような青い光の揺らめきとその揺らめきを縁取る同じ色のリングが現れた。
だがそれに気づかないようでいつもの様に掲げた右手を下ろす。
右手を下ろすと、青い光が纏われ、初めて気づく。いつもの色の光とは違っている事と。
その時、円は思った。
(これは……僕か……?)
刹那であった、映画のカットインが入ったかのように突然、円自身の身が刃に貫かれた。
「――ッ!?」
傍観から主観に切り替わった時には、もはや抵抗するほどの力は残っていなかった。
乱暴に地面に叩き落とされた円は立ち上がる事すらも出来ない。
その時、円は自分を殺した者を見上げる。そこに居たのはビーストではない。
(櫻満……カイト……ッ!?)
あの時と同じように自分を見据え、また立ち去る――
「――――ッ」
その時、円は目を覚ました。
叫ぶ事もなく、静かに。
身を起こし、目覚まし時計のアラームを見る。時間は午前五時半。
(もう一眠りか……)
小さく溜め息を吐く。だが、眠れそうにない。夢見心地が悪すぎる。円は自分の胸に手を当てる。貫かれた穴は当然ない。夢だったのだから。
そしてまたもう一度小さく溜め息を吐いて頭を押さえる。
苦笑いを浮かべ自嘲し、
「なんて夢だ……」
と小さくつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます