Dreamf-4 SSCの戦士(avan)

「――ッ!?」

 今、光が一つ消えた。

 先程恵里衣を掠めた悪意といい、先程の感覚といい、悪い予感がする。


(円……)

 消えた光が円であるとは信じない。スピリットがまさかビーストに負けるとは思いたくない。


「しっかり、生きてるわよね」

 ぼそりと呟きながら恵里衣は空を飛び、今、境域の中に入り込んだ。

 見えない壁を突破した瞬間、バキンッという物が割れるような音と共に、世界が反転した。


 いつも発生地点にいる時に境域が発動する時に感じる感覚だ。

 世界が反転したあとすぐ、視界が元に戻り――。


「……ッ!? 円!!」

 まず目に移った、天ヶ瀬円の状態。

 地面に伏せるように倒れ、ぴくりとも動かなくなっていた。

 そして前方には円に迫り来る二頭のビースト。どちらも、殺意を円に向けている。


(倒れてるのに、体が光ってない。って事はッ!)

 すぐさま恵里衣は円の方に飛び寄り、

「円!」

 呼びかけながら体を揺する。


(エネルギーが切れてる!?そんなのって――ッ!)

 思った通り、円のエネルギーが底を尽きていた。スピリットが自らのエネルギーを失うこと。すなわち、スピリットの消滅。人間で言う「死」である。円の姿が消えていないのは、自分の体を維持するエネルギーがスピリット自身の命を維持するエネルギーの代替をしているからである。だが、それも持って数分程がいいところであろう。


 円がこうしてまだビーストに止めを刺されていない事から、まだ時間はそれほど経っていないのだろう。

 今の内にビーストを倒してしまうか――


「しっかりしなさいよッ、円! アンタを友里の所に帰すって、約束したんだから!」

 だが、最初に生まれた選択肢を選ぶことはなかった。

 今すぐこの境域から脱出してビーストの追撃を逃れる事。円を、完全にビーストの攻撃対象から外れさせる事。


 恵里衣は円に肩を貸して立ち上がり、牽制にもう片方の手を振り払いビーストの足下に光刃を撃つ。


 この光刃は普通の光刃と違い、対象に当たると弾けてほんのしばらく周囲に動きを鈍くする光の粉塵がまき散らされる。

 実際、ニ体のビーストはその場から足が進ませることができず戸惑っているのか、その場でバタバタと暴れてうなり声をあげている。


「――ッ!」

 その隙に恵里衣は円を支えたまま飛び上がった。

 境域の壁を突破し、円と共に空を飛ぶ。


(円……ッ!)

 瀕死の円の顔を見やる。

 恵里衣は空を飛ぶ。それは、あの人物に助けを請うためであった。何を条件にだされるのか、当然恵里衣は考えてはいない。

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