Dreamf-2 赤き髪の少女の紅い光(avan)
突然の事で、円には今の状況が呑み込めずにいた。
円の目に映る事をそのまま言うなれば、友里が急に嗚咽しだして飛びついて泣き出した。まさに見たままであり、それ以外頭の中で理解しようも無い。
「ゆ、友里……どうし――」
「どうして、どうしてぇ!」
「え……?」
「なんで、円、まどか、なんでぇ!」
「友里、突然どうしたんだよ!?」
「円、まどかぁ……、うぐっ……」
何を聞き出そうにも友里はそれから「何で!」や「どうして」だの、果ては円の名前を呼び続けるだけで円の問いかけには答えてくれない。
そしてくれそうにもない。
「あー……」
何を言えばわからず少々うろたえる円。とにかく、今は友里を落ち着かせなければ話に入る事すらも出来ない。
「円、円ぁ、まど――ッ!?」
突然、友里の言葉が途切れた。
当然のことだ。突然円にその体を強く抱きしめられたからである。円も後でこうかいするだろうと思いつつも、そんな行動に走った。
何分今の友里を落ち着かせるには、円がいまここにいるという現実以上の衝撃を与えてやらなければならなかった。正直、抱きしめるだけと言うことですら落ち着くかどうか怪しいものであった。
「とりあえず、心を落ち着けて。じゃないと僕からも言いたいことも言えないし、友里も、僕に聞きたいことも聞けないでしょ?」
「ん……うん……」
親が子供を落ち着かせるように、円は抱きしめた友里の頭を毛並みに沿って撫でる。
そうしてしばらくしていると、友里もいつの間にか落ち着きを取り戻しているようであり、呼吸も次第に静かになっていく。
「落ち着いた?」
「うん、ちょっとだけ……」
「よし」
そうしてゆっくりと友里の体を離し、前髪が乱れていたので、撫でてなおしてやる。
「まずは久しぶり、と言っておこうか」
「うん、うん……っ」
また泣きそうになっている。顔を見るたびにこの様では一向に話が進まない。だが、円のはもう先ほどの様な事をする勇気はない。
「だあ、もう!」
と、友里の手を掴む。
「とりあえず、ここから離れるぞ!」
「えっ」
「危ないだろ、こんな所。さっきみたいなのが来たらどうする」
「う、うん……」
と、強引に――
「あっ」
手を引こうとしたとき友里が何かを思い出したかのように声を上げる。
「何?」
「鞄。置いてきちゃった……」
「…………」
つい先ほど危ないと言われたばかりだと言うのによくそんな事を思い出したものだと、円は唖然とし、じと目で友里を睨んだ。
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