110日目〔4〕待ったなし!
手帳の謎は全く解明されてない。考えてみたら凄いことに気づいた。
俺がこっちに来た時、俺は死んでなかった。つまり、死ぬ以外にも帰れる方法はあるんじゃないか?
何でもっと早く気付かなかったのか、この状況じゃ何も出来ないぞ。
マグナムの銃口を真っ直ぐ俺に向ける、スラスラ日本語お兄さん。少しずつ俺に近づいてくる。
意味あるのか? 絶対、早く撃った方がいいだろ。
映画とかでもある、殺す直前に喋るやつ。
「これは総統のためであり、貴様の国の為でもあるんだ……わかってくれ」
わかるわけないだろ。この時代の人間じゃないんだから。あ、それを言えばいいのか。
「あっ! 待って下さい!」
「何だ、命乞いをしても無駄だ」
「いや、違くて……俺は、そのっ…………」
言ったらやばいかな? ええぃ! ままよ!
「未来から、来たんです」
唖然とする『スラスラ』。まぁ、当たり前といえば、当たり前。
「何を言ってる……なめるなよ」
そうなっちゃいますよね〜。
ヒュゥゥゥーー…………
え? 嘘でしょ。
空気を裂いて砲弾が飛翔してくる。ソ連の何処かで取られた鉱石が成形され、ソ連の何処かの工場で炸薬を詰められた砲弾。はたまた、何処か別の国かで作られ、輸入されたものかもしれない。
どちらにしろ着弾した数メートルの範囲では、生き残る事は難しい。
信管が動作しなければいいかもしれない。その確率はとても低いけど。
ドォォン
見事に信管は動作し、炸薬も通常通り炸裂した。そして、十数メートルの範囲に爆風と破片を撒き散らす。
街側に落ちた。ほんの、2、3メートル先。
自分に危険が迫った時、よく言われるのが「ゆっくりに見えた」ってやつだけど、まさにそれだ。
破片が『スラスラ』の頭に当たったのが見えた。銃を暴発させたけど、狙いは既に俺の方じゃなくなっていた。『スラスラ』は倒れた、というか吹き飛んだ。その時、彼の手がもげるのが見えた。
俺にも、破片が当たった。爆風が後から来る。
俺も吹っ飛んだ。右足、膝から下が無い。
完全に致命傷。タイムスリップ待ったなし。
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