110日目〔3〕わかりやすいやつ『スラスラ』

 これはまずい。陽が暮れようとしているが、どんどん街に近づいている。このままだと戦場に突っ込んでしまう。

 多分、砲弾ならここまで届くな。


 寒さが厳しくなってきた。かなり軽装で来たせいで寒い。『スラスラ』の背中の上だから暖かいけど、途中で毛布が落ちたのがまずかったな。


「ど、どこまで行くんですか?」

「…………」

「あの、………………下ろしてください!」

 彼は手を離して、後ろに反った。俺はドサッと落っこちた。

「いっ……た」


 雪で衝撃は吸収されたけど、足が痛い。

「その、帰らないんですか?」

「………………そうだな」

 こいつ、完全にクロだろ。

「帰らなければいけない……俺もお前も」

「じゃあ…………」


「ここ最近、ドイツ軍は苦戦を強いられている」

 どうした? 急に。

「それは、ソ連軍の物量、司令部のミス、兵士の質などいろいろな理由からだ」

 は? 関係ないよね? 今。

「だが、なにより足を引っ張っているのは…………総統閣下の介入だ」

 え? こいつドイツ軍なのに……。


「総統閣下のミスはドイツ軍のミスだ」

 内容が読めないんだけど。

「総統閣下はとても苛立っていらっしゃる、それはソ連戦における苦戦もあるが……」

 ヒュゥゥゥーー

 こんな時に砲撃がっっ!

 ドォォン


 意外と離れたところに着弾した。

「同盟国の弱行にあり、統率力のなさにも理由がある」

 話、続けるんだね。

「総統閣下の判断に狂いはない、全ては同盟国のせいなのだ」

 嘘だろ、まさか。

「そして、ここに来て……貴様が現れた……総統の悩みの種が増えたんだよ」


 そういう事になるのかよ。

「言いたい事はわかるだろう

『スラスラ』はマグナムを取り出した。

「死んでもらわないとな」

 わかりやすいやつだな。どうにも出来ないけど。


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