110日目〔2〕『カタコト』『スラスラ』

 スラスラ日本語お兄さんの背中の上におんぶされてる。毛布もかけてくれて、親切な奴だ。

 外に出て、暫く歩いた(スラスラ日本語お兄さんが)。


 すると、カタコト日本語お兄さんに出会った。

「何処へ、行くんですか?」

 いつもの感じじゃないな。

「少し、散歩に……」

「○☆♪€¥+=#%ッ」

 急にドイツ語でカタコト日本語お兄さんに喋られておどろいた。俺に話してるんじゃなく、スラスラ日本語お兄さんに話している。


「×〒〆々〒○☆<\,〜/#ッ」

 すると、スラスラ日本語お兄さんは突然走り出した。

 ん? え? どうしたの? あっ、毛布が落ちた!

「→☆♪÷¥ッ!」

 なんか、カタコト日本語お兄さんが言ってるけどいいのかな? 追いかけてきてるし。


「あの、ど、何処に行くんですか?」

「逃げる」

「な、な、なんで?」

「彼は貴様を殺そうとしている」

 へーー?


 凄い走った。もちろん俺は背中の上。枯れ木の下に降ろされた。かなりカタコト日本語お兄さんとの距離は離れた。

「少し待て」

「え、ちょ」

 スラスラ日本語お兄さんはマグナムを取り出して、どこかへ行ってしまった。


 面倒くさいなカタコト日本語お兄さんは『カタコト』、スラスラ日本語お兄さんは『スラスラ』って呼ぼう。



 パァン パァン

 雪原に破裂音が響いた。

 明らかに『スラスラ』のマグナムの音だった。



『スラスラ』が戻ってきた。

「行くぞ」

 再び彼の背中の上に乗ることになった。


 どこに行くんだろう。『カタコト』を殺したみたいだし。

「あ、あの、どこに向かってるんですか?」

「…………散歩だ」

 怪しすぎる。どう考えても違うぞ。

「そういえば彼がこれを君に、と」


 彼の手には手帳があった。

『カタコト』が持ってたんだな。全部、装備品は没収されてたからな。てか、本当に殺したのか? 「彼が」って言ったよね?

 わけわからん。


 すると、雪原の向こうに街が見えてきた。俺がいた野戦病院とは真逆の方向に。

 これは、ヤバイな。再びピンチ。絶対、散歩じゃねぇよ。

 本当に『カタコト』は俺を殺そうとしてたのか?




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