110日目〔1〕カタコト(スラスラ)日本語お兄さん

 あれから2日たってカタコト日本語お兄さんがまたやってきた。


 まず1つ目。かなりソ連兵の学力がないようだな。

「何故、貴方がソ連兵として行動できたのか、一部ですがわかりました」

 気になる。

「試しに、捕虜に地図を見せて日本の位置を確かめさせたところ……『なんだ? これは?』という反応が返ってきました」

 待て待て待てい!


「さらに、日本を知っているかと聞いたところ『何それ? おいし……知らないぞ』という反応でした」

 あーね、単に馬鹿なだけか。頑張って理解しないと。出来るかな……。

「戦場では全くと言っていいほど貴方は意識されていなかったようです『ソ連って広いな』ぐらいに感じていたことでしょう」


 無理だな。解せん。

「もう一度確認しますが、気づいたらソ連兵としてあの街にいたのですね?」

「は、はい」

 こう答えるしかない。

 その後はこの周りの施設や戦況を一部だけど、教えてくれた。



 そして、何日かたって今日にいたる。日にちの感覚がない。時々、負傷者が運ばれてくる。それと、巡回のひとがやってくる。

 暇だ。


 午後になって、カタコト日本語お兄さんがやってきた。

「明日、後方に移送されることになりました」

「え、は、はい……」

「そこで詳しい取り調べと傷の療養をしてもらいます」

 いろいろ質問したいことがあったけど……。

「SSの監視が厳しいので、これで失礼します」

 行っちゃったよ。


 外に出てみたい。でも、無理だ。車椅子とかで外に出せる余裕はここにはないみたい。それに明らかにここのテントだけ警備が厳しい。

 俺がいるベッドからギリ外が見える。


 すると、外からドイツ兵が入ってきた。かなりの長身でもう、これを言ったらおしまいだが、イケメンだ。

 ……イケメンしかいないじゃん!


 この興奮を伝えたくても、説明が下手なんだよ

 なぁぁぁーーーっ!

「外に出るぞ」

 彼の襟には他のドイツ兵には見られない紋章があった。長方形が2つ重なったのが二つ。


 これがこの前から出てきてるSSらしいですね。 なんの略だろう。まさか……ドSのS? それが二つも……。んな訳ないか。


「乗れ」

 背負ってくれた。

 キャーーーーーッ! イケメンの背中にっ!

 …………ホモ臭っ。


 でも、なんでかな? てか、日本語うまい。こっちはスラスラ日本語お兄さんだな。こっちの方が若いし。イケメンだし。


 さぁさぁ、こっからどうしたものか。



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