2日目〔1〕まわりは皆ロシア人

 普通の人が1942年のスターリングラードって聞いても戦時中ぐらいしか思いつかないと思う。一度は教科書などで見た覚えがあると思う。なんで教科書に載るのかっていうとそれはよく分からん。

 だって俺はその時、そこにいたんだもん(理由になってない)。


 まず、1つ目の感想。寒い。いや、そこまで寒くないのかな? 暖房に慣れているからかもしれない。

 2つ目の感想。言葉分かんない。

 助けて。怖い。なんか偉そうな人がなんか言ってる。

「○☆¥°#<|々・*:〒-÷×¥」

 なんか、いろいろ気前の良い兄さんが喋りかけてくれるけど、言葉分かんないから。

「○*・*→♪☆¥$」

「「「「Урааааааааааウラァァァーーーッ‼︎」」」」

 今の、ロシア語だよね。それくらいわかるよ。万歳だよね。あーあ、なんとなくわかってきたよーー。どう見ても現代の軍隊じゃないもん。


 こうして、俺は農家三代目、借金まみれ、都会へ逃走。これに更にタイムスリップという履歴が追加された。この時はタイムスリップについてはあまり意識してない。


 急にみんな歩き出したから俺も歩くけど、何処に行ってんの?

「○*→♪☆$×÷<=+×………+*÷*○・々〒〆|^>×¥€$%°#☆♪→」

 いや、だから分かんない。これは伝えといた方がいいな。

「ワタシ、ロシアゴデキマセーン」

「⁉︎」

 あっ、ダメだ。理解してもらってないし、怪しまれてるよね。

 そうだ!

 俺はのどに手を当てたり、ジェスチャーで彼に伝えた。

「*○→♪!」

 多分、声が出せないって伝わったと思う。違ったらOUTだけど。しかも、声出てたし。


 どれぐらい歩いたかな……。どんどん街に近づいてる。砲声? 爆発音? が近づいてくるんんだけど。

 てか、ここが本当にタイムスリップで戦時中?どの戦争かわかんないけど、そうだとしたら、俺どうやって戻ればいいんだ?

「うっ」

 急止まるからぶつかったじゃないか。

 川が見える。船もあるな。…………まさか、あれであの街に⁉︎

「☆○×÷+$€%°#」

 また、偉そうな人がなんか言ってる。分からんな。

「☆×÷×+・*」

「→♪¥$」

「*・×+÷÷=<=」

「→♪¥$」」

「々〆|++×>>=」

「→♪¥$」

 えっ、これってもしかして、点呼?

 俺は絶対に呼ばれない。でも横の彼はおれが声出せないって分かってるはず。

「'々×$4♪°=」

「→♪¥$」

 横の彼も呼ばれてるし。

「/#&/-/-^+×÷」

「「「「………………」」」」

「/#&/-/-^+×÷!」

「/#&/-/-^+×÷-^-\|||〒×〆!」

 あれっこれは……。 1人いないのかな。


 そうだっ!!


 横の彼の肩を叩く。そして自分に指を指して。

「-々:[*÷=」

 おっ、理解してもらえたかな。

「/#&/-/-^+×÷×=+*々×$+○<〒」

「$×</#&/-/-^+×÷×*・♪☆÷#$×」

「×*々4○々〆〆=」

「×*→$¥・々…〜-〜〆=<:」

 なんか偉そうな人がこっち向いてる。っ! 急に肩を叩くなよ。って、すごい笑顔。ああ、上手くいったと、そういう事なら良かったです。にしても、彼も優しいな。




 その後、なんとか乗り切って街についたは良いものの……。てか、飛行機怖かったわ。

 武器持ってないし、俺。ん、なんだ?

 彼はナイフを取り出した。

 えっ、これを俺にくれるって。使えねぇよナイフなんて。刃物は野菜を切ったり料理するのに使ってたから慣れてるけど。ナイフじゃ切った事無いかも。

 彼は肩にかけていた銃を持った。右肩にかけていたから彼の左側に立ってた俺はわかんなかったんだな、うん。

 なるほどね、自分は銃を持っているから大丈夫です、というわけですか。


 にしてもボロボロの街だな。そからの建物は崩れかけてるし瓦礫だらけだし……

 ヒュウゥゥゥーーーーーーー

「×+$€°=!!!」

 急に彼が俺の頭を押さえた。みんな伏せたので俺も伏せる。

 勢いよく笛を吹いたような音を立てて、空気を裂いて砲弾が飛んできた。

 ドゴォーンッ

 なんだ今の。爆弾? 砲撃? なんで街がボロボロなのかわかったぞ。

 立ち上がって泥を落として、ふと前を見た。

 あっ。


 死体。


 いつからあった? ずっと前から? いや、今の爆発で出来たんだ。

 なんでか分からないけどすぐに死体だとわかった。


 俺がここまでボロボロの死体を見るのはこれが最初だったけどまだマシな方だ。これから俺は地獄を見る。この時の俺はまだわかってないけど。


 俺はスターリングラード市街戦の真っ只中にあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る