第136回『スイングバイ』→正選王★★
徹夜で飲んだ朝帰りの千葉駅で、一年前に別れた元カノを見かけた。
紺色のスーツに身を包み、黒髪をまとめている。颯爽と改札を抜ける後姿を、俺は思わず追いかけた。
総武線東京行きホームへ上がる階段。揺れるうなじとタイトスカートの御御足が俺の心を奪う。
「あいつ、こんなに奇麗だったっけ?」
あの頃、俺達はまだ学生だった。あれから彼女は就職したのだろう。ホームに着くと、その姿は白い電車の中に消えていく。
「えっ、特急?」
千葉から東京までの間、特急でも快速でも時間はそれほど変わらない。メリットは乗り心地だけだ。つまり、それだけ経済的に余裕があるということ。
「俺はまだこんなことやってんのに」
飲んでばかりの自分が情けなかった。差をつけられてしまった。だからどんな会社なのか見てやろうと思った。
幸い彼女が乗ったのは自由席。通路側に座る彼女の後姿を眺めながら、俺は三つ後ろの席に深く腰掛けた……
「お客さん、終点ですよ」
ヤバい、つい寝てしまった。彼女もすでに居ない。それ以上に俺を驚かせたのは車窓の景色だった。
「こ、ここはどこですか?」
「南小谷ですよ。長野県の」
深々と降る雪に、やはりすれ違う二人だったと俺は思うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます