第3話「今日から平凡な日常が始まる。」

教室を出て廊下に向かった時俺は榑亜を見た。

すると榑亜もこちらを見ていて手を振りながら笑っていた。

なんなんだあいつは、転校してきて一日目だぞ。

もし普通の高校生なら榑亜にメロメロだな。

俺が失恋なんかしてなかったらすぐにアタックしてるわ!なんちゃって。

「絢介!どーしたお前顔がにやけてるぞ?」

魔琴が後ろから俺に話しかかる。

昔からの友達にはお見通しというわけか

「ん。笑ってなんかないさ!」

「おまえ榑亜ちゃんの事好きだな?けっこう狙ってる人多いから気を付けろよ?」

なんでいきなり好きになる?

昔の俺じゃあるまいし断じてそんなことはない。

「お、おう!って俺は恋愛しないって決めたんだよ!」

「あ、そうだったな」

魔琴は申し訳ないと思ったらしくすぐに俺から目をそらした。

そんな会話をしている間に体育館に着いた。

用意されているパイプ椅子に座った。

正直恋愛なんてしたくないと思ってる。理由は簡単さ。

人を信じて傷つくなら最初から信じない方がいいということ。

俺ははっきりいって、女を見ると、胸が痛くなる。

美樹の事を思い出してしまうからだ。

でももうそんなこと考えている場合ではない。と自分にいい聞かせているが俺にはそんなことできない。

しかも美樹がまったくといっていいほど魅力のない俺を彼氏としてくれた事が嬉しかった。

一時期は幼なじみが好きだったことも、一時期は、妹LOVEだったときも。

でも今まででの一番は美樹だった。

「絢~介?」

隣に座っている彩華は俺の顔をのぞくように見てきた。

「あっ、なんだ彩華か。」

「どーしたの?元気いきなり無くなったね?」

やっぱり彩華は優しいな。

昔から俺に何かありそうなだけで彩華に助けられてばっかりだった。

高校生にもなったからには、迷惑をかけたくない。

「いやいや、ちょっと考え事してただけだよ。心配すんなよ。」

「う、うん。わかった。でも相談は乗るから」

「ありがとな彩華」

「う、うん。」

先生がステージに上がり、式台の前に立った。

「入学生入場!」

マイクを通してそう言った直後、聞いたことのない音楽が流れた。

体育館の入り口から、1年生が入学してくるのが見える。

俺はさっそく妹探しをした。

行進してくる1年生。

犁兎が見えた。クラスは1の2だ。

おっ、シスタークラスの時の合唱同じか!ってこんなんで喜ぶとか俺頭イッテるな。

犁兎と目が合ったたね、俺は笑ってやった。

犁兎は、ウインクをしてパイプ椅子に座った。

入学式は終わり教室に戻った。

教室に戻り席に座ると隣の榑亜がこっちをみていた。

俺はいけないいけないと思い、目をそらした。

「竜宮君?」

冷たくて柔らかい物が俺の唇を触った。

「お…おい。いきなりどーした?てかなにっ?」

俺の唇を榑亜が指で触った?

俺の事好きなのか?いやいや、そんなはずは…。

「大好き! 」

「えーーーーーーーーーーーー?」

このクラス全ての視線が俺に向けられている。

先生がいなくてよかったー!と安心している場合じゃない!

はじめての大好きだぞ?

美樹からはすきとしか言われたことないし。

転校してきて1日でこんな事を言うはずがない。

それとも俺をこの学校のいじめの的にしたいのか?

あーもうよくわかんねえよ。

でもこの子嘘つくとは思わないけどな!

でも俺は美樹に…

なんて考えるな!俺!

「バカじゃないのか?」

「大好き?!」

「はいはい!」

俺は言葉を冷たく返した。

榑亜は何かを俺に言っていたが、俺はあえて聞かなかった。

早帰りで昼休みがないので、先生の話を聞き、すぐに下校しようとした。

「絢~!一緒に帰ろ?」

「おう!いいぜ!」

ほんとうに彩華は話しやすい。

玄関を出て家に向かった。

「あれ?犁兎ちゃんはいいのかな?」

「あいつは大丈夫だろ。」

「そうかそうか。なんか二人きりで帰るのって久しぶりだね。」

彩華は手をもぞもぞして言った。

もし俺に恋愛というなのゲームがありレベルMAXだったら、[手…つなごうか?]とでもいえたが、

俺のレベルは2ぐらいの見習いってとこだから言えるはずもなく挙動不審気味になりながらも言葉を返した。

「久しぶりだな。ああ久しぶりだな」

あまり会話がないうちに彩華との分かれ道まで来ていた。

「うん!じゃあ私はここら辺で。また明日ね」

俺は手を振りながら交差点をわたった。

「もし…彩華が俺の事好きだったらなあ。」

やべえ…独り言で俺は何をいってんだよ!

俺には心の傷もあるし、恋愛とは無縁だな。

てか今日の榑亜?だっけ?あの子滅茶苦茶顔タイプだけどな。

なんか引っ掛かる。

初めてあったとは思えないって言うか…どこかであったような?

まあどうせ勘違いだ。

俺は勘違いだけは天下一品だからな。

小学校の頃、バレンタインデーの前日とある女子が3人ほどいてその人たちに呼ばれたんだ。

「明日チョコ…」

そういわれただけで自分がもらえると勘違いしてしまったんだよな。

「おう!ありがとね!明日またね!」

その後のことは何も聞かずにすぐ帰ったんだっけ。

次の日学校にいくと、俺の机のなかにチョコが3つ入っていた。

俺はあの子たちかな。とか思い、チョコを取り出そうとすると、なんかの紙が落ちた。

俺はそれを拾い、何かが書いてあるようなのでそれを読んだ。

”昨日の話聞いてた?いきなり飛び出したからよく話せなかったけど、これ竜宮のじゃないからね?

魔琴君にね。私が言ったのは明日チョコを魔琴君に渡しておいてって言おうとしたの”


そうこれが初めての勘違いである。

今思えばそんなに可愛くない、てかむしろブスだったので気にしてはいない。本当に気にしてはいない。

家に着き、俺は玄関のドアを開けようとして、鍵を取り出そうとすると、

鍵がポケットのなかに入っていなかった。

俺は必死にバックのなかをあさりだしたが、見つからなかった。

ドアノブを握ってみると鍵がかかっていない。

俺はてっきり犁兎が早めに、帰ってきていて、家の鍵をいつのまにか俺からとっていたと思っていた。

そう…まったく想像のつかないことが起きていた。

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