第1話「俺に終わりと始まりがあるなんてまだしらないっ!!」
そう、俺の人生はここから変わるんだ。
「朝だぁー!起きろー!春休みが始まって2日だからってグータラはだめだよぉ。」
家の目覚まし時計犁兎が六時半に俺の毛布を取って起こしてきた。
「もう少し寝させてくれ」
犁兎から毛布を取り返して、自分の体を覆った。
「こんなに可愛い妹が言ってあげてるのになんなのよその態度は。私に感謝しなさいよね。」
「顔だけじゃダメなんだよ。まあ犁兎は顔可愛いけどさあ?」
毛布の隙間から顔を除かせて犁兎を見た。
「もうお兄ちゃんたら!」
犁兎はそう言うと顔を赤くしてすぐに俺の部屋から出て行った。
俺は携帯を見ると画面の下辺りが青くなっているのが見えた。
俺は、美樹からだと思い、すぐに携帯を開きメール受信ボックスを確認した。見るとやはり美樹からであった。
“今日の11時に緑ヶ丘公園にきて、大事な話があるから。“
俺は昼から春休みにしたテストの返却があるためちょうどその時間なら会えると思った。
この時なにをするのかなどを考えると顔がにやけすぎていた。
その後10時までゲームをしたり歯磨きをし、どのような私服で行くかなどを悩んでいた。
時計を見ると10時30分をまわっていた。
すぐに支度を済ませて家を出た。
俺はゆっくりと歩きながら快晴の空を見上げていた。
公園に着いたのは10時50分であったため、まだ美樹の姿はなかった。
時計の針が11時に差し掛かる頃誰かの声が聞こえた。
「ごめんね。ちょっと着替えてて遅れちゃった。」
制服姿の美樹は、どこか悲しい目をしていた。
「大丈夫だよ!」
「大事な話があるの。」
美樹は自分の胸に手を当てながら話した。
「どうした?」
その時の俺の気持ちは、キスしたくなったのか、それとも…。
考えていてにやけそうになってしまっていたのでそれを我慢した。
美樹が何かを言おうと一息ついた時、俺はそれにあわせて舌で唇を湿らせた
「私もう絢介の事好きじゃない。新しく好きな人ができたから・・・」
「え?」
「ごめんなさい」
俺が何も言う間もなく美樹は涙を流しながら走って帰ってしまった。
さっきこの言葉を言われるまでは薔薇色の人生であったが
その言葉を言われた途端に世界から色彩がなくなったようであった。
俺は公園に一人だけ取り残され、何をすればよいのかわからなくなった。
昔に美樹と話していた事などを思い出しながらも公園を出た。
何度も涙が出ては腕でそれを拭きながらも耐えた
俺はテストを返してもらうために学校に向かった。
学校に行く途中何度も心が折れそうになったが何とか学校につくことができた。
校門から学校へ入り昇降口に差し掛かると玄関で艶やかな赤髪をした少女が担任と話しているように見えた。
俺は遠目からだったので可愛いかどうかはわからなかったが、やはり失恋が辛すぎて、そんな事を思える余裕もなかった。
職員室に向かい学年主任からテストを渡された。
「どうしたんだ絢介?おまえがこんなに点数悪いのなんて初めてだぞ」
自分の成績を確認するとこれまでにないほどの成績をとってしまった。
点数は、126点、順位は178位中152位。
「貧血気味なんで帰ります」
先生は俺に何かを言おうとしたが、俺はその言葉を聞けるほど心に余裕が無かった。
昇降口から出ようとすると、そこにさきほどみた赤髪の少女が立っていた。
さっきよりも距離が近く目は大きく瞳は澄んでいて鼻はきれいに整っており
唇は冴えた美しい色であった。遠くからみた感じとはその姿は違っていた。
胸の奥でギュッと締め付けられたような感覚がした。
俺は歩きながらその子の事を意識したが、やはりテストの件と美樹の件で、頭が一杯であった。
自分が生きる意味なんてあるのか?と自分に問いかけたりして本当に頭が真っ白になった。
「ただいま」
「おかえりーっ」
リビングになぜかは知らないが父と母と妹がいた。
その事に疑問を持ちながらも母に成績を見せた。
「どうしたの?絢介」
その言葉に俺はなんとも言い返す事ができなかった。
その哀れさに気が付いたのか犁兎は俺をフォローし始めた。
「お兄ちゃんにだって、失敗はあるよ。人間だもん。ねーお兄ちゃん?」
正直頭のよい妹から言われたのは悔しかったが、でも俺は心のどこかで、何ていい妹なんだと思ってしまっていた。
舌打ちをして自分の部屋に向かおうとすると、父親から一喝が入った。
「次頑れば良い。だが次もこんな結果になったら家には一秒たりともいれんぞ」
俺はガッツポーズをとり、父親を見た。
「おうよ。やってやんよ!」
父はフッっと鼻で笑った。
「明日から俺と母さんは、仕事の関係でアメリカにいかなければならない。明日の午前5時半出発の便には乗らなくてはならない。
だから犁兎を頼む。たまに、お前の幼馴染みの彩華が来てくれるから。そのときは頼んだ」
いきなりの事に戸惑いを隠せなかったが、仕事の関係といわれたらなんともいえない。
彩華か。高校同じで昔からの知り合いなのに最近は全然話してないな。
「ああ、わかった」
俺はリビングから出て風呂に向かった。
すぐに服を脱ぎ、公園では出しきれなかった涙と汗を全て出した。
風呂に入るの早いとか突っ込まないでくれ。
もう意味がわかんねえよ。
何でいきなり振られる。
桶一杯のお湯を頭からかけて風呂を出た。
タオルで頭を拭いていると妹が入ってきた。
「何、お兄ちゃんどこ見せてるの!いくら私が高校生になるからって、変な事しちゃだめ。ばーかっ」
犁兎は顔を赤くしながら自分の手で目を隠した。
「わっ!ごめんっっっ」
大事な部分を手で隠しすぐにパンツを履いて自分の部屋へと逃げた。
よく考えればただ単に妹がいきなり入るのが悪いという事に気がついた。
でもさすがに明日から二人きりで暮らすのに最初から怒ったりしたら気まずくなるに決まっている。
しかも両親が帰ってくるのは、俺の卒業式の3日後だという事。それに俺が耐えられるか心配である。
だが犁兎も来月から同じ学校の生徒だ。
料理は得意と言っていたので、そこだけには期待をしておこうと思った。
部屋に戻った俺は一番最初に携帯を開いた。
メールが来ていないかを確認したがやはり来ていなかった。
俺は受信BOXを開いてこれまでの美樹とのメールのやりとりを読んでみた。
2つだけ気づいた点がある。それはとても俺を失望させた。
1つめは、2年前に好きだよって言われてから言われた事がない事。
2つめは、キスもハグもした事が無いという事だ。
俺はそれに気づくのが遅すぎたらしい。
さっきまで色々な出来事があり、少し忘れていた俺だったがやはり三年間も大好きだった美樹をそんなに早く忘れることなんて出来なかった。
美樹に言いたい事はたくさんというか、もう数えきれない程あったが、
現実を受け止めるという方法を選ぶしかなかった。
テストの成績は悪くなり親からは信用が少しなくなり、
挙げ句の果てに、大好きな美樹にフラれて、せっかくの春休みが台無しになるところだった。
春休み中俺は自分の部屋からでるのはとても少なく3食の飯を食べるときだけであった。あまり食欲もなく、部屋にひきこもっていた俺を犁兎は心配していた。
俺はもう、恋愛なんてしないように決めた。
俺が夜寝ようとすると誰かが部屋に入ってきた。
「誰だ?」
人間の形をした何かがこちらに近づいてくる。
「私だよ」
それが誰なのか。
声を聞いて瞬時に理解することができた。
「どうした?」
「お兄ちゃんのことが心配なの。]
俺のことを心配してくれるのはうれしいのだが、いまは妹を相手する余裕すら少ししかない。
「大丈夫だ」
すると俺の背中辺りにやわらかいクッションのようなものがあたった。
俺の後ろに犁兎が寝転がったのだ。
「お兄ちゃん辛いことあるなら相談して?犁兎が支えになってあげるから。あと今日は怖いから一緒に寝て?」
余裕がなかったのはつかの間で、俺のやんだ心が犁兎のおかげで少しは軽くなった。
「犁兎、ありがとう」
「大好きなお兄ちゃんだもん。」
まて。前に寝ていたときは胸がぺちゃんこだっただろ。
まあもう何年前か忘れたけど。
「このままじゃ変な事しちゃいそうだから俺は寝る。明日の朝になったら部屋に戻るんだぞ!今日だけ特別な。」
俺は動揺を隠すことができなく、気持ちが少し高ぶっていた。
「お兄ちゃんやっぱり私としたいんだあ~」
「うるせえなあ!」
「今度私がその気になったらね?」
俺は寝たふりをした。
すると頬の部分にキスをされた。
俺は動いちゃまずいと思い犁兎が寝るまで動かなかった。
そして犁兎が寝たのを確認してから睡眠についた。
6時半の目覚まし時計が鳴る。チリチリーンチリチリーンチリチリーンチリチリーン。
俺はボタンを押し止めて、隣を確認すると犁兎の姿はなかった。
昨日のことが夢かと思いリビングに向かった。
そこにはピンクと白のドットのフリルのついたエプロンをした犁兎の姿が見えた。
「おはよう。朝ごはんは何だ?」
ふわぁー。
口を大きく開いてあくびをしながら話す。
「お兄ちゃんのだいすきな私特製のチャーハンだよ!」
にこにこしながら俺のほうを見てくる。
「俺そんなにチャーハン大好きじゃねえぞ?」
「お兄ちゃんの大好きな私が作ったものだからなんでも美味しく感じるでしょ?」
なんなんだこいつ…。
昨日甘い所みせなけりゃよかった。
「そーだな」
苦笑いをしながらもいすに腰をかけた。
「冷める前に食べてね」
テーブルの上にチャーハンを置いて俺の前の席に座った。
見た目は黄金のように輝いていて、チャーハンであるのにチャーハンに見えない錯覚にとらわれた。
「いただきまーす」
「どーぞっ☆」
スプーンでチャーハンをすくい口いっぱいにほお張った。
口の中に程よいスパイスと絶妙な塩加減の美味しさが広がった。
「ごちそうさま」
俺は両手を合わせて深く頭を下げた。
「もっと美味しいの作るねお兄ちゃんのためにっ//」
ほんとにこの先妹と結婚しようかな。
なんてね。
恋愛はもう怖すぎるよ
「おう。もっと美味しく頼むぞ」
犁兎はひひっと笑った。
やっぱ犁兎は笑うと可愛いなあと思い直した。
笑ってなくてもかわいいけどね。
でも部屋に戻れば現実が俺を襲う。
明日は入学式、もう春休みが終わる。
さすがに妹とデレデレするのも今日までだなと思っていた。
すっかり夜になり明日の準備をした。
するとドアがいきなり開いた。
「私似合うでしょー?」
そこには制服姿の犁兎がいた。
えっへんと手を腰において無い胸を張りながら、俺にそれを見せ付けた。
制服似合いすぎだろ。
見えそうで見えないパンツと足の細さが絶妙なjk感をだしている!
たまらんな。
「ほんと似合ってるな、かわいいよ」
犁兎は突然喜んで部屋を出た。
いやいやいきなり来ていきなり消えるなよ。
用件はそれだけだったのか。
明日から学校。またつまらない日常。
友達がいない訳じゃないが、どこかだるい気がした。
明日何か良いことがあるように神頼みをして俺は眠った。
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