第14話
……。情報の漏洩には気をつけてください、って書かれてあるのに、こんな机の上に置いておいて大丈夫なのだろうか。私は少し父が心配になった。
けれど、私の関心事はそこではない。太白の正体について一歩手がかりが見つかった。霊獣、それは陰陽師を守るため、単なるお呼び出しではなくて契約によって使役する、一種の守り神のようなものだ。太白の正体がそれであるということがわかった。私にとってはそちらのほうが重要だった。
太白はその昔、誰かと一緒にいてその誰かのために戦い続けたのかもしれない。それとも、自分の満足の為に人間を殺めたのかもしれない。はっきりしたことは太白が言っていた人間を喰ったという話は嘘ではないかもしれないということだった。少し、太白のことが怖くなった。でも、太白が私を騙して何かしようとしているとは思わなかった。
私は書類を元あったところに戻しておいて、静かに父の部屋を後にした。
父の部屋の前には眠そうにあくびをしている太白の姿があった。退屈そうにしていたのに、律儀に私のことを待っていたみたいだ。
「それで、私のことは何かわかったか?」
太白は私が彼のことを調べていたことがわかったみたいだった。それでも太白は嫌な顔はしていなかった。
「少しわかった。太白が昔誰かの霊獣だったってことくらいは」
「その通りだ。我は当時使役されていた身。人殺しと呼ばれる厄災よ」
「でも、それだけで、太白が悪い猫なのかどうかは決められない」
私は自分に言い聞かせるようにその言葉をつぶやいた。やっぱり怖いことは怖い。
「そうか。晴、お前が我を信じるというならそれで良い。信じぬと言うならそれでも良い。ただ、お前には真実を我の言葉でなく己の手で知って欲しかった」
そう言った太白の顔は何だか寂しく見えた。猫だというのに、その表情が人間である私にも読み取ることができるだなんて何だか不思議な話だ。
「太白は私に知って欲しかったの?どうして?」
「何故だろうな。我にもわからぬ」
太白はそれ以上語ろうとしなくて、そのまま、私の部屋の方に入っていった。何だか、不思議な猫だ。前々から感じていたことだけれど。
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