『ホンバン』
放課後、誰もいない教室に彼女を呼び出した。
風戸さん、エレナさん、エリスさんとの練習の成果を……ちゃんと示さないと。今、とっても緊張しているけれど。
「エイミーちゃん、急に呼び出したりしてどうしたの?」
「……あなたに伝えたいことがあって。セーラ」
あたしがそう言っても、心当たりがないようで……セーラは首を傾げている。あたしの気持ちには気付いていないみたい。
それなら、尚更……あたしがここでしっかりと伝えないと。
「私に伝えたいことって、なに?」
「……セーラに対するあたしの気持ち、だよ」
ここまでは順調。
あとはセーラのことが好きだっていう気持ちを口にするだけ。相談室での練習を思い出して、セーラに告白するんだ。
「……セーラ。あたし、あなたのことが好き。あたしと付き合ってくれませんか」
緊張はしたけれど、無言の時間をあまり作ることなく、セーラに告白することができた。あとはセーラからの返事を待つだけ――。
「ごめんなさい」
あたしの告白に対するセーラの答えは単純なものだった。
「……ごめんね、エイミーちゃん。私、女の子と付き合うことなんてできないよ。それに、エイミーちゃん……私のこと、そういう風に見ていたんだ」
「確かに、セーラに対しては友達以上の感情を抱いているけど、そんな……決して厭らしい意味じゃないよ。それだけは分かってくれないかな……」
きっと、エイミーは誤解している。恋愛感情を抱いているけれど、決してエイミーを傷つけるためじゃない、ってことだけは理解して欲しい。
しかし、セーラは少し悲しそうな表情をして、ゆっくりと首を横に振る。
「……ごめんね、エイミーちゃん。エイミーちゃんとは友達としても付き合えないよ」
「ど、どうして……!」
「……ごめんね。私は、恋愛感情を持つような人とは付き合えない。ましてや、エイミーちゃんとは、ね。だって、私は……友達だから付き合っていたんだもの。本当にごめんなさい、エイミーちゃん」
あたしの心に刺さっていく言葉を次々と放ち、セーラは走って教室を出て行ってしまった。
告白は……失敗した。そのショックもあるし、セーラの言葉が今でも心を抉っている。今はもう、何も考えられなかったのであった。
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