第2話日本からの留学生
「おはようございます。」
「おはようございます、クロエさん。あなたはおげんきですか?」
「はい、わたしはげんきです。クレモンくん、あなたも?」
いかにも初心者らしく、ぎこちない。すぐにフランス語に切り替わる。
「もうすぐ、留学生が来るの、知ってるだろ?うちには二週間いるんだ。」
「そうなの。私のうちはちょっと今年は難しくて。。。受け入れたかったんだけどね。」
クロエはその長い髪を後ろに束ねるようなしぐさをしながら、心から残念そうな表情を見せた。
「仕方ないよ。いろんな事情があるし。」
「で、いつ来るの?」
「来週。土曜日に空港に迎えに行くんだ。クロエも一緒に行かない?せっかく近所なんだし、ときどき一緒に遊んだらお互い日本語の勉強になるだろ?今日はそう思って誘いに来たんだよ。」
クレモンは比較的声が高くて通る。トラブールの中庭のような囲まれた空間だとその声が良く響く。上の階の廊下にいた人が、何事かと下にいるクレモンたちの方を覗きこんだ。
「そうね。来週の土曜ね。オッケー。トラムで行くの?」
「いや、母さんが車を出してくれるはず。だから晩の6時半くらいに迎えに来るよ。到着は8時だから。」
「分かったわ。初めての日本人ね。キレイにしていかなきゃ!」
「じゃ、コスプレで!」
また上の人が覗きこんだ。その時スカートを広げるような恰好をしていたクレモンと目が合った。
「ほら、バカみたいじゃない。普通にキレイに、ね。で、名前は何だっけ?」
クロエの青い目は優しく笑っている。
「ユーゴ、だって。」
「ユーゴ?フランス人の名前みたいじゃない?覚えやすくていいわね。」
「だろ?もちろん漢字で書くみたいだけどね。」
「そりゃそうよね。日本人だもん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます