第3話ユーゴ
土曜日の夕方、クレモンは母のサラと一緒にクロエを迎えに行ったあと、リヨンの空港へ向かっていた。
「ほら、見えてきたわよ、あれが空港よ。」
「私は何度もここに来てるから知ってるわ。クレモンは初めて?」
「そう。初めて。うちはいつも車で旅行するからね。」
「そう言えばそうね。あなたと一緒に空港に来たことなんてなかったわね、クレモン。ほら、キレイでしょう?白鳥が羽根を広げたみたいで。」
「うん。確かにキレイな形だね。有名な建築家が設計したのかな?」
「そうよ、有名な人よ。でも、誰だったっけ?忘れちゃったわ。確かスペイン人の…。アテネのオリンピックスタジアムを設計した人だけど…。クロエは知ってる、誰だったか?」
「いいえ、知りません。有名な人だったことも知らなかったわ。」
空港が近づいてきた。美しいガラス張りの建築物に目を奪われる。ホールに入ると、三家族ほどの家族がそれぞれの日本人を迎えに既に到着していた。
「さ、着いたわ。この出口で待ってたら出てくるわよ。ボンソワール、サブリナの家も受け入れるのね。あら、あなたのところのジェレミーも日本語してたの?知らなかったわ。それにしても先生は来ないのね。」
しばらくすると、到着済みとの表示が出て、その後、荷物の受け取りが始まった、荷物の受け取りベルトへの積み込みが終わった、と次々に案内が変わっていった。
「もう出てくるわ。楽しみだわね~、どんな子かしら。」
次々と到着した人が通り過ぎる中、日本人と思しき6人の若者が出口を通って出てきた。次々とステイ先の家族と落ち合う中、
「あ、ユーゴだ!こっちこっち!」
「クレモン、どうしてすぐに顔が分かるの?」
「Facebookでもうやり取りしてるからさ!」
「まぁ、親にも知らせずに!」
「ボンソワール、ジュマペルユーゴ、アンシャンテ。(こんばんは。わたしはユーゴです。どうぞよろしくお願いします。)」
たどたどしくもフランス語で挨拶を交わしてきたユーゴに、
「いらっしゃーい、楽しみにしてたわよ!思ったより大きくて大人っぽいわね。日本人は幼く見える、って聞いてたのに。」
とサラが頬を寄せていった。
ユーゴは一瞬驚いたが、すぐに授業で挨拶の仕方を習ったことを思い出し、頬を一回二回とサラの頬に寄せていった。
「サリュ、クレモン。」
クレモンとは既に顔見知りなので、さも久しぶりに会ったかのように握手。
「あれ?この
「あぁ、クロエだよ。話したでしょ、一緒に迎えに来るって。」
「あ、そうだっけか。ヤベェ、忘れてた。アンシャンテ。」
「アンシャンテ。クロエよ。よろしくね。」
今度はすんなりと頬を重ねて挨拶ができた。学校で習った時は香水の香りまでは教えてくれなかったが。
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