第2話 10年と11ヶ月13日目からの解放(万見)

「……聞き間違いじゃないよな」

 彼の口からは呻きに近い声が思わずもれた。


 10年と11ヶ月13日目


 積み重ねていく内に、いつか外の世界に出られる等思いもしなくてなっていた。


 投獄当初は、様々な感情が押し寄せて行く日々を過ごしてはいたが、時を経て無為に過ごす時間が彼からたくさんのものを奪っていったのだ。


 仮にも名の知れた盗賊デフォードが、まさか奪われる側にたった訳だ。

(……しかしまあ、待ってみるもんだな)

 かつて葛藤した感情がふつふつ沸き上り、目の覚めるような感覚を覚えた。

(……ようやく俺の出番が来たって事でいいんだよな?

 心の中で嘯いたデフォードは、躊躇いながらも万感の思いに駆られていた。

 高まる気持ちとは別にして衛兵に向ける表情、発言、挙動には、牢獄にいた頃の無気力を装い神経を尖らせていく。

(……さてさて、状況の把握をしますかね)

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