第50話 告白に対する雪の返事
「ねえ、ちょっといい!?」
雪の叫ぶ声が、かろうじて壱の耳に届いた。
「後でも……いいか……な? 今ちょっと手が……放せ……なくて」
「でも、今がいいと思う」
力を緩めたら、ただちに壱の鼻筋を破壊するだろう拳を、目の前で
「あの、私……」
ほとんどその言葉は壱には届いていないように見えた。
「私ね、今まで告られて、考えておいてあげるって言ったとき。断ったこと一度もないから!」
へ?
壱が一瞬だけ、雪の方に目をやったその時、Benkei:
「ケンイチ、危ない!」
突如、壱の頬とその拳の間に虹色のプレートが現れた。その平面に拳が破壊的な威力で叩きつけられた。
その際に流れたビリビリという電流に、思わずおののくBenkei:
虹色のプレートはJの送り込んだ、マルウエアだった。
突如現れたプレートに痺れ、しばらく固まっていたBenkei:
「J!? 大丈夫か?」
「はい、僕は問題ありませんが、これでこのフィールドへアクセス出来なくなりました。あとは一人で頑張ってもらうしかありません。ケンイチ、お願いですから集中してくださいね」
「……集中してくださいね、だと? そもそもこんなことになったのも、お前がこんなところに大事なファイル隠すからだろうが! ちゃんと再侵入しやすいようにバックドア(裏口)つけとけ!」
「そんなことしたら、他の誰かにアクセスしやすくなるじゃないですか。隠す意味がなくなります」
そんな会話が終わる頃に、Benkei:
「J、まだ見つからないのか?」
「はい。解錠設定日を今の時刻に合わせるところまでは完了しています。後はフォーム見つけるだけなのですが、不思議なことにそれが、全く見当たりません」
01:42:10
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