第12話 オルタナ:入り口

「研一君」

「ん?」

「いつになったら、オルタナ始まるの?」


 果てしなく続く白い空間。そこにぽつんと置かれた2つのパイプ椅子と丸テーブル、その横に研一と雪は立っていた。


「いつって……もう始まってるぞ」


 そう言って、パイプ椅子に腰掛け、頭の後ろで手を組む研一は、リラックスした表情で答えた。

 雪は白い空気の中、自分の両手に目をやってから、辺りを見回した。


「だって、ほらまだ何も変わってないじゃない」


 ああ、と研一は漏らしてから立ち上がった。

「驚くのも無理ない。これがオルタナなんだ。今俺たちはもう既に仮想現実の世界にいる。『俺たちの実体』はオルタナギアを被ってただ横になってるだけだ」

 雪は、目を大きく見開いた。


「えーーー!? これ全部、うそなの?」


 そう言ってその場でジャンプしたり、足踏みをしたりした後、丸テーブルをぱん、ぱん、と叩いた。


「まあそんなところだ。それだけじゃない、じゃあそろそろ始めようか」

 そう言って研一は白い空間にぽつりと佇む茶色の扉を指差した。そしてその扉に向かって歩き出し、ドアノブに手をかける。


「準備はいいか?」


 その声に雪は、緊張の面持ちでひとつ大きく頷いた。

 研一が勢い良く扉を開けると、突然目をつむりたくなるような風が二人を襲った。雪はおもわず背けた目を、やっとのことで見開いてその景色を見てみると、そこには想像を絶する世界が広がっていた。

 遠くにある遊園地のような観覧車、彼方には山々がそびえ立ち、そこをドラゴンが火を吹きながら飛び去る。空には見たことの無い飛行物や生き物。プテラノドンの様な生物も混じって見えた。

 目下に広がる景色は和風とも洋風ともとれる港町。陸と海がぼやけそうな位遠くで二つに分けられていた。右半分は真っ青な海と左半分は多くの建物。そのいずれも沢山の人、動物、キャラクター達で溢れていた。


「すごーい……」


 雪が一歩前にでると、横から吹きすさぶ風に思わず前髪がきらりと揺れた。

 すると突然、赤いサッカーボール程の大きさの球体が、すっと二人の前に現れた。そして、青い風船を雪に渡す。


「ありがとう、これは?」


 球体がくるりと回転すると、愛らしいロボットの表情が現れた。

「ようこそ、オルタナの世界へ! 私は案内人のジョーです。ご用件があればいつでもこの風船をタッチして下さい。お待ちしております」

 そう言って一つ礼をすると、さっとそのまま去って行った。


99:99:99

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