カオス、起動
第54話 終わりの始まり
例えるなら電子の台風。
あたり全ての映像が、一方向に煽られ、伸びている。ゴォォォォーーーーという轟音が全ての音をかき消した。そんな中、スクリーンの中そのブロンズの髪を流されながらも、Jはその声を二人の届けた。
「カオスが完全に実行を終えるまであと14分32秒です」
元々あったリミットのデジタル時計の下に、新たに赤文字で表示されるデジタル時計が現れた。それはJが作り出したカオスが完了するまでの時間を表す時計だった。
リミットの時間は15分02秒、その下の数字は14分30秒。リミットまでに何とか間に合うことが見て取れた。
研一と雪は力強くその時計を見つめる。辺りの風景は相変わらず一方向に、まるで暴風に煽られるように、映像が伸びては揺れていた。
「研一!」
轟音の中、そのか弱い大声が研一の耳に届いた。雪の目はしっかりと見開かれ、前髪や頭のうさぎ耳、ピンクのスカートその全てがが見えない風に煽られながらもじっと研一の目を見ていた。研一も大声を張り上げる。
「大丈夫! きっとうまくいく」
その音が雪の元へ届くと、雪はその大きな瞳を目一杯細くして、にこっと笑顔を作った。その笑顔を研一はこの上なく愛おしく思った。2つのサイコメーターは寄り添う様に並び、力強く、赤く拍動していた。
丁度リミットが10分を切ろうとしたその時だった。
ピコーン。
今まで聞いた事の無い機械音が、荒れ狂うフィールドと轟音の中響いた。その機械音の意味することに気づいたとき、一同の全身に戦慄が走る事となる。
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