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青の国、東門駐屯地。今日は陛下がお帰りになる日。この国の大臣を務める私は何事もない事を祈っていたが、どうやらそうもいかないらしい。駐屯中の兵士たちが騒ぎ始める。
「何事か」
「だ、大臣様。実は前国王陛下が傷だらけで戻っておりまして…」
「なにぃ!?」
大臣は急ぎ門に向かう。閉めきっていた門は前国王陛下が帰ってきたことにより開かれ、大変な騒ぎになっている。大臣はすぐさま前国王陛下のもとへ駆け寄る。
「陛下、この傷は一体どうされたのですか」
「王都軍に襲われてな…追撃部隊が来ている。今すぐ…門を…」
ハッとした大臣は門をすぐに閉じるように命令する。救護兵に前国王陛下を医務室へと運ばせる。門がしまって少ししたぐらいで追撃部隊と思われる四人が現れる。
「こちらに男が逃げ込まなかったか!」
「黙れ!貴様らが国王陛下を傷つけた王都兵だな!」
「えっ、確かに傷はつけたけど…」
「やはり貴様らか!弓兵、構え!」
弓兵が矢を番えて、一斉射をしようとしてくる。
「ちょ、待って待って!」
「お止めなさい、ショルノーツ大臣」
「こ、この声は…姫様!」
「大臣、あの男は父ではありません!父の姿を模した偽物です!」
「そんなバカな話がありますか!お父上を侮辱するおつもりですか!」
「……本当のお父様だとしたら……だとしたらあんな酷い仕打ちをしたりしません!」
言葉に詰まる。もしかしたらそうなのかもしれない…このところの国王陛下は態度がおかしい。だからといって私もそれを認めてしまったら…。
だが大臣の考えとは裏腹に現実は甘くはなかった。大臣の腹を突き破り黒い触手が出てくる。突然の出来事になすすべもなく絶命する大臣。さらに顔を出してきたのはあの国王陛下と呼ばれたあの男だった。
「こんなところまで追いかけてきてご苦労なことだ」
「お父様!あなたは…なんてことを!」
「くはは!実にうまい餌だったよ。さて、この辺りは食いつくしてしまったし、街に入って食事をするとしよう」
「待て!」
引き留める言葉は空しく空にとけていき、彼を引き留めることは叶わなかった。それから少しもしないうちに門の向こう側から悲鳴が聞こえてくる。
「このままじゃまずいわよ、早く中に入らないと!」
「ですがこの門を開けるには内側から…」
ソフィアが言い切る前に門が爆発する。煙が晴れると門の一部が崩れ、馬に乗っていても通り抜けられそうな穴が開いている。三人でポカーンとしていると主人公が謝り始める。
「あっと…ごめんね、あとで修繕費は払うから」
「い、いえ、今は一刻を争いますし。とりあえず行きましょう」
中に入ると酷い状況だった。砦の内部は貪られた死体がその辺に転がっており、壁や床に血が飛び散っている。その場はどうすることもできないので通り過ぎたが、砦を抜けた先も酷かった。逃げ惑う人々、死体、その中心で笑いながら触手で人を殺す男。まさしく阿鼻叫喚であった。
「おやおや、遅いご到着ですなぁ」
「あなたは…何をしたのか分かってるのか!」
「ははは、分かっているとも!皆私の血肉と…力になってくれたのさ!」
物凄い数の触手が襲い掛かってくる。だがシエラが魔障壁を張ることにより全て弾かれた。だがそれをされてもなお余裕があるのか、男は高笑いをしながら触手を戻す。僕たちは馬から降り、馬を後ろに逃がす。
「ふはは、中々やるではないか」
「それはどうも。でも油断は禁物じゃないかな」
「なに?」
頭上から音もなく彼女が切りかかる。しかし不意打ちにも関わらず、男は触手を巧みに操り攻撃をかわす。そしてそこから始まる連撃もすんなりと避けられてしまう。彼女は余り深追いせずに戻ってくる。
「やっぱりというか、あのうねうねが多いと攻撃しても防がれちゃうわね」
「あれは使えないの?」
「使いすぎると負担がかかるのよ。使ってとどめを刺せなかったら…」
ばたんきゅ~ってわけか。今彼女に倒れられたら、最悪の展開になってしまうだろうから無茶はさせられない。かといって具体的な策があるわけでもないし、僕も度重なる魔法の行使で疲れているから、これ以上は無茶できない。思案していると男が数えきれないほどの触手による猛攻撃を放つ。それを彼女は物ともせずに剣の一振りで全てを薙ぎ払う。
「とりあえずこの場は任せなさいよ。あんたはさっさと何とかする方法を模索してなさい」
「そんな投げっぱなし…」
「適材適所…でしょ?」
そう言うと彼女は迎撃に向かう。まさか彼女にそう返答されるとは思わなかった。僕は思わず面を食らうが両頬を叩き、気合いを入れ直す。
「ったく…あーだこーだ考えてる時間はないな。シエラ!」
「何なりと」
「しばらく動けなくなる。援護とソフィアさんを頼む」
「畏まりました」
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