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僕は光放つ扉に勢いよく飛び込む。今度は真っ黒な景色から真っ白な景色へと落下していき、かと思えば次の瞬間には現実に戻っていた。変わらず不思議な光景だ。こちらに来なければ経験しえないものだなと思いつつ、即座に唇を離し、ソフィアさんを地面に横たわらせ、体に手を翳し「魔力探知」を発動する。「魔力探知」は文字通り魔力を探るだけのスキルだ。どこにあるかすぐに分かればいいが。
そんなことをしていると、黒い何か達と戦っているカインと幼馴染から罵倒を浴びせられる。
「陛下!くっ……戻られたなら一言くらい言って頂けませんか!」
「本当だよ、このバカ。あたし達がどれだけ…こいつ!……苦労したか分かるか」
「悪かった。でももう少し待ってくれ。シエラ」
言葉選びが悪かったのか、もっと罵声を浴びせられたがそんなのを気にしている時間はない。
「こちらに」
「手伝ってくれ。体に住み着いてる蟲を取り除くのと同時に傷ついた個所を治療する」
「では治療は私が」
「任せる。タイミングは僕が言う」
「合わせます、いつでも」
翳している手に違和感が走る、かすかにだが手に集めた魔力が震えたのだ。つまり魔力の乱れを検知したということだ。へそ周辺つまりは丹田、ないしは子宮辺りに住み着いている。魔力が貯まりやすいところに住み着くとは頭のいい蟲だ。
「見つかりましたか?」
「うん。0でやる」
「わかりました。どうぞ」
「行くぞ。3、2、1、…0!」
「
「これで大丈夫。後は任せる」
「お任せを」
さてと、と辺りを見回す。カインと幼馴染が黒い物体や黒い龍と戦っている最中であることが見受けられる中、それに指示出しもせずずっと見つめているだけの男が一人。僕は先ほど精神世界で見た男性と同じその人物を見る。あれが父親…なのだろうか。まるで別人にも捉えられる程のどす黒い魔力が彼から流れ出ているのが分かる。
それに…あの世界で見た過去の彼とはとても思えない。いったい何が…
「あれは闇の力です」
「追い付いたんですね、テミスさん」
敵を見据えながら横目で端の方を見ると、カイン達に参戦しに行った二人と、息切れして横たわる三人、三人はわざとらしいと言えるくらい肩で息をしているが放置しておこう。「無視かーい」っと突っ込まれた気がするが、ややこしくなるので放置一択である。
「ところで闇の力って?」
「闇の力は、魔界に住んでると言われている魔族が使う力です」
「魔族…って昔に滅んだんじゃないの?」
確かなんかの文献で見た気がするが……勘違いだったか?
「どのような物語を見たかは分かりませんが、正確にはこの世界から魔界に追い出しただけで滅んではいません。もっとも…あちらからこちらに関わることは出来ないはずですが…」
それが存在しているってことは、少なくともこちら側に何らかの方法で来れてしまうということだろう。
「更に言えば向こう側の存在を認知している人がこちら側に居ることになります」「ふーむ。この話も後で詳しく話さないと…だね。とりあえず今はどうにかすることに集中しよう。何か弱点とかないの?」
「あります。彼ら闇の存在には、こちら側に伝わり続けている光の魔法や力が有効です」
あー、それなら僕も魔術本で見て覚えたな。確か…。
「光よ。我が手に集い矢と成りて敵を穿て。|
手に光が集まり、それが矢に変わり、投げ放つことで一直線に黒龍に向かって飛んでいく。放たれた矢は黒龍の体を貫き、穴を開ける。
「おー、確かに有効だね」
「な、なぜ使えるのですか?光魔法は……いえ、そもそも魔法が使えること事態が…」
「んー、それも後でだね。今は集中しよう。魔導隊、僕の援護を。歩兵は魔導隊を守るんだ。カイン、シエラは指揮を頼む。マリアとローザは遊撃を」
「承りました」「お任せを!」「任しときなさい!」「承りました」
「ねー、あたしは?」
「君は僕を護ってくれるでしょ?」
「分かってるけど…たまには指示してよ」
「分かったわかった。じゃあ君は僕に敵の攻撃が届かないように護衛を頼む」
「よっしゃー!任せなさーい!」
やる気になってくれたみたいでよかったと思った彼は、後を各々に任せることにして、自分の為すべき事に集中しする。目を瞑り、大詠唱を始める。いち早く詠唱に気付いた男は触手を彼に向ける。だが護衛を任された彼女は、向けられた無数の触手を一瞬で凪ぎ払う。
「ふふん♪悪いけど、あいつには指一本触れさせないから」
「くっ…小娘がぁ!」
もう一度仕向けようとするが、今度は龍がよろめく。シエラが指揮する魔導隊が交代しながら、魔法を放つ。威力が低く、あまり効果がないかと思われたが、さすがに連続で喰らえばあるらしい。でかぶつだから当てやすいってのも相まってなのかな。
「貴様ら……殺してくれるわ!」
「騎士隊、盾を構えろ!」
触手で攻撃してくるが、カインが指揮する騎士隊は大盾を構えた人を、二人で支えることで衝撃に耐えて弾いた。あるやつを除いて。
「小癪な真似を…」
「この程度、おで達には痛くも痒くもねぇ!」
「態勢を立て直せ。次の攻撃に備えるんだ!」
「いや、大丈夫だ。皆、よくやってくれた」
「くっ…しまった!もう…」
「もう遅い!その身に食らえ、悪しきを裁く神の雷を!」
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