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誰もが諦めかけた、その時だった。大きな声とともに光輝く一閃が影ごと兵士を切り裂く。


「ぬぉ!!これは……!」


影ごと切り裂いたが、無事だった兵士を抱き抱え、こちらに下がってきたのはカインだった。


「陛下、よくぞご無事で!皆も無事か!?」

「カインこそ。先に何かと対峙していたと聞いたが、よく来てくれた」

「はい、早急に対処してきた次第です。それに陛下の危機とあらば、私は何処へなりと参上致します!」

「いつも心配をかけてすまないな。あとは任せる」

「はっ!」


隙をついて2本の触手がカインに襲いかかる。カインはそれを既に見切っていたのか、同時に一瞬で切り伏せる。

「隙を狙った程度で私がやられると思ったか?」

「…粋がるなよ若造が!」


8本の触手が同時にカインを襲ってくる。だがカインはそれを物怖じ一つせず、1本1本を恐ろしいほど丁寧に切り伏せる。

「ぬぅ……やるな若造」

「この位は出来なくて、親父を越えられるはずがないからな」

「そうか。ならばこれならどうかな」


男は指をならす。すると黒い影が一ヶ所に集まり始め、重なりあう影は徐々に形を成してゆき、黒い竜が生まれた。

「黒龍…か、趣味の悪いことだ。だが怯むなどと思わないことだ!」

「くはは。もちろんこれで終わりではないぞ。分かっているな、我が娘よ!」

「…娘だと?」


カインの疑問は直ぐに解消される。先程まで大人しかったはずの…否、体がすくんでいて動けなかったはずのソフィアが変装シエラに対して、ナイフを取り出して襲っていた。

「な、なにを!」

「ごめんなさい……でも…こうしなければ私も…母も!」

「ソフィアさん、やめてくれ!」


不意打ちのせいで反応が遅れて体制が悪かったせいで、そのまま押し倒されてしまう。ソフィアは倒れこんだ私の上に乗っかり、そのままナイフで突き刺そうとする。

「陛下!今いきます!」

「おっと、君の相手はこちらだよ」


ドラゴンは巨体に似合わない早さで目の前に立ちはだかると、足でカインを踏み潰そうとする。カインはギリギリで転がり避ける。

「くっ…」

「やるじゃないか。ならこれはどうかな」


触手がカインに迫る。それを対処をしていると、黒龍が足で踏み潰そうとしてくる。触手を先に対処し、黒龍の踏みつけをギリギリで避ける。しかし避けた先に更なる触手の攻撃がくる。

「くそ!このままでは陛下が!」

「よそ見をしていて良いのかね?」

「くっ…」


激しい猛攻は続く。迫る多数の触手、黒龍のドス黒い息や、踏みつけがカインを襲う。カインは猛攻を躱し続ける。だがシエラが気になるせいで、少しずつだが攻撃を受けていく。それはカインを徐々に劣勢へと追い込むには十分なものだ。それでもカインは必死に食らいつく、守るべき者のためにも引き下がるわけにはいかないのだ。


「カイン!こちらは気にせずに集中しろ!」「しかしそれではあなたが!」

「大丈夫、なんとかしてみせる。だから今は僕を信じて、戦ってくれ!」

「陛下……、承知しました!」


カインは男と黒龍を見据え、武器を構える。速やかに終わらせ、そして陛下を御守りする。私の使命、全うさせてもらう。

カインは剣を男に突きつける。


「3分で決着をつけさせてもらう!!」

「くははは!やってみるがいい!!」

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