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無慈悲な試合終了宣言、ライラもこれ以上は無意味だと判断したのだろう。拳を引くとマリアはポロポロと涙を流し始める。当たったのかと思いオロオロしてしまう。


「私はまだ闘える……負けてなんか……」

「認めたくない気持ちは分かる。しかし油断が招いた結果は認めなければならない」

「油断なんか…してません!」

「していただろう?あんな戦い方はいつもならしなかったはずだ」

「それは…」

「人間の身体能力では、竜人には勝てないと侮っていたんだろ?」

図星を突かれたのか、マリアは小さく呻いた。


「どんな相手でも全力で仕留めろと教えているだろう?」

「申し訳ありません……」

「まぁまぁ、そこまで怒らなくても」

「黙っていてもらいたい。これは私達の…」

「いやいや、そっちの問題だとしても、彼女はきちんと本気を出していたよ。それが僕に合わせた本気だったんだよ」

「……ふむ、なるほど。本当にそうなのか?」

マリアは首を縦に勢いよく振る。


「わかった。ならばこれでお前にマリアを任せることになるな」

「あぁ、分かった。大切に預からせてもらうよ」

「うむ、では俺は戻る。しっかり支えるんだぞ、マリア」

「ハッ!お任せください」

マリアの返事を聞くとライラは去っていった。


「……ありがとう、助けてくれて」

マリアがぽそりと呟いた。それを聞いた僕は笑ってしまう。

「な、何がおかしい!」

「ごめんごめん、ついね。取り敢えず疲れたから部屋に戻ろうか」


僕達は執務室に戻り、疲れた体を癒しつつ、ローザさんに淹れてもらった紅茶を飲みながら、しばらくゆったりとした時間を過ごしていると、シエラが勢いよく扉を開けて入ってくる。


「マスター!ご無事ですか!?」

「え、あぁ。うん」

「あぁ…よかった…」

安堵したシエラはその場にへたりこむ。


「ど、どうしたの?」

「それが…試合場に戦いの跡が御座いまして、本日は試合場は使わない予定でしたので賊が浸入したものと思い…」

「あ……」

伝え忘れてた。それをシエラが逃すわけなく、僕を睨みつけてくる。思わず僕は萎縮してしまう。


「今の「あ…」ってなんですか?」

「い、いや今のは……」

「そうですか。ローザさん、何があったのか教えて頂いても宜しいですか?」

「分かりました」


あぁ…言い訳する時間も、味方なんてのも居なかったんだと、僕は天井を見上げながらそんなことを考えた。

それから夕食の時間まで、みっちり説教をされたのは言うまでもないだろう。夕食を終えて意気消沈状態の僕は自室に戻る。


「お疲れのようだね」

声を掛けてきたのは、謎の術士の使い魔だ。

「まぁね……」

ベッドに体と顔を埋めたまま返事を返す。

「今のところ私の見ている未来通りに進んでいるようだね」

「そうなんだ……よく分かんないけど…」

「これから先の未来は2つに分かれている。仲間を大切にしたいなら賢い選択をするんだね」

「それってどういう意味…だ?」

意味深な言い回しを聞いた僕は起き上がって、周りを見渡したが使い魔は見当たらない。

「居なくなったのか……」


先ほどの言葉は気にはなるが、色々ありすぎで疲れたし、考えても仕方がないのでとりあえず寝ることにしよう。

そして翌日、先日の途中でお開きになった会議は青の国の事情を考慮し、解決後に持ち越しということになったので、各国の王たちは自国へと帰国することになり、ソフィアはステラとカインと共に青の国へ向かう。

準備で慌ただしい中、僕と幼なじみの彼女とローザ、何故か付いてきたステラとマリアを連れて母親のもとへ向かう。それから今に至るわけである。


「ご理解頂けましたか?」

「そういう理由でしたか。分かりました」

「では行きましょう」

「え?でも準備が……」

「家財は後で取りに来させます。今は少しでも時間が惜しいので」

「分かりました」

「ご主人様、お話が終わりましたのなら急ぎましょう。何やら囮側に問題が発生したそうです」

「何だって!?」

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