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ライラの合図と同時にマリアが速攻を仕掛けてくる。槍で薙ぎと突きを交互に組み合わせてくる。僕はそれを必死に受け流すが、力も速度もカイル達とは比べ物にならないほど桁外れだ。流石は竜人と言ったところか。
「ほらほら、どうしたんですか。防御ばかりでは勝てませんよ!」
そうやって挑発しながらも猛攻は止まない。それどころか徐々に早くなってきている気もする。早めに何とかしないとやられちゃうな。
「ふむ、早くも決着がつきそうだな」
「いえ、あの程度ではご主人様には勝てませんよ」
それを聞いたベルメリオは不思議そうな顔をする。でもローザは淡々と続ける。
「ご主人様はお強い御方です。なんといっても私たちのご主人さまですからね」
妄信的とも言えるほどの信頼。面白い、彼がどの程度の実力か見定める良い機会だ。存分に見定めさせてもらおうか。
たく、参ったもんだ。このままじゃあちらが消耗する前に、こっちが完全消耗しそうだ。現に彼女は汗一つかいてないが、僕は息も上がってきたし、汗も大量だ。とりあえず突きを剣で思い切り弾き、距離をとる。
「ふむ、まだこんな余力を残してたのですか。中々やりますね」
「そりゃ……どーも……」
にしても竜人は本当に凄まじいな。あれだけ動いたのに疲れてないとか、人間の域を超えてる存在なんだと思い知らされるよ、こっちはへとへとだってのに。仕方ない、性に合わない武器はやめるか。僕は剣を地面に突き立てる。
「あら、もう降参ですか?」
「違うよ。ここからは本気で行こうと思ってね」
僕は両手を合わせ礼をしてから、構えて気組みをする。
師匠、あなたに鍛えてもらったことを人に振るうことを許してください。
「ふっ、素手なら私に勝てるとでも思ったんですか?」
「少なくとも武器を使うよりかはね」
「その考えはお菓子より甘いです!」
そう言うと彼女は鋭い突きを放つ。確かに先程よりも更に早くなった突きは、僕を捉えていた。しかしその一撃は僕には届かなかった。「えっ?」っと不思議そうな顔をするマリア。彼女が繰り出した突きは、常人などには見えるはずがなく、絶対に避けられない自身もあった、外すわけもない。しかし僕には当たらなかった。
「何を…したの?」
「何もしてないさ。特別なことはなにも…ね」
「そんなことあるはずがない!」
次は薙ぎ、突き、払いのコンビネーションできたが、一切僕には当たらない。そうただ避けるだけだ。当たる寸前で…だけどね。
「そんな遅い攻撃じゃ当たらないよ」
「うるさいうるさい!」
当たらなくて悔しいのか、彼女は槍を"ぶんぶん"と言う効果音が似合いそうな勢いで振り回してくるが、そんなのが当たるはずもない。「くそ~!」と彼女は悪態付きながら後退した。そして槍を杖のように使い、息をきらしている。
「もう終わりかな?じゃあ今度はこっちから行くよ」
疲れ始めた彼女に対し、僕は拳と蹴りで怒涛のラッシュを仕掛ける。彼女も必死に防御をする。しかし僕はそこをつくように、ラッシュの途中で武器に衝撃を与える一撃を放った。武器弾きをまともに受けてしまったマリアは、「しまった」と言い、槍を手放してしまい、衝撃でよろける。僕は逃すことなく、そのまま顔に向かって拳を打ち込む。
「殺られる」とマリアは感じ微動だに出来なかったが、僕は当たる前に拳を止めた。
「な、何のつもり?」
「…まいったと思わせても僕の勝ちだよね?」
「べ、別に参ってなんかないわよ!」
「けど目を瞑ってたよね?」
「それは……目にごみが……」
ゴニョゴニョと何かを言い始めたが、ライラが割り込んでくる。
「そこまでだ。もう決着はついているだろう。貴様の敗けだ、マリア」
「そんな……」
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