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「たのもー!!」
そこに立っているのは、急所をのみを守る甲冑に身を包み、頭に角、背面には羽と尻尾が生えている、身の丈より大きな槍をもった小さな少女だった。
「は、はぁ」とさすがに間抜けな声が出てしまう。
「む、貴様が例の…………中央の王か!」
今の一瞬だけ間があったのはきっと忘れてたからだな。
「やい、貴様!私と……」
「ごるぁ!」
言い切る前に現れたのは赤の王ライラ。彼女は小さな少女の頭に拳骨を落とした。
「い……った~い!!」
「何を粗相しているマリア!」
「い、いや勝負を挑もうと……」
「だからと言って『貴様』などと言いおって、相手は私と同じ王だぞ!」
「でも……」
なんだ!と言わんばかりにライラはマリアと呼ばれた少女を睨む。睨まれた彼女は縮こまってしまう。このままだとなくなってしまいそうだ。というかこの展開、さっきもやらなかったか?
「ま、まぁまぁ。彼女も反省してるみたいだし、許してあげなよ」
「しかし……」
「僕は気にしてないからさ」
「分かった。貴様がそういうのであれば、私も許そう」
マリアもほっとした表情をする。
「で、いったい何の用かな?」
「あぁ、実はこいつを我が国からの使者として預けようと思ってな。話をしたら……」
「なるほど」
その言葉で僕はすべてを理解した。ライラが話す→どんなやつか見てみよう→お宅訪問って感じだな。
「それで君は何をしに来たの?」
「私はき……貴方に勝負を挑みにきたのだ」
「勝負って?」
「私達、竜人の悪い風習だと思ってくれ。私たちドラグーン族は強者の下にしかつかない。強者、それは誰よりも力が強い者なり、とな」
「そういうことか」
お宅訪問×勝負じゃあ!◎ってことか。
「まぁ、そう言う仕来りなら仕方ないね。せっかく訪ねてもくれたんだ、戦おうか」
「良いのか?俺の命令で就けと言えば、聞くと思うぞ」
「それじゃ本人は納得しないでしょ。無理やり就かせるのは違うと思うな」
「……そうか。なら好きにするといい」
「じゃ、外に出ようか」
僕たちはその場を後にして、試合が出来る試合場に向かった。
「さーて着いたけど、試合方法とかルールとかは?」
「ルール無用のデスマッチ。お互いのどちらかが死ぬ、または降参したら終了だ」
「は?何言ってんの?」
「だから言ったのだよ、良いのかと。しかも人間と竜人では"試合"どころか”死合”になる可能性もあるな」
まさに殺死合ってか。やかましい!などと突っ込みをいれたいが、そっと心にしまうことにしよう。というか突っ込んだところで状況変わんないし。
「まぁ、言ってしまった以上はやるしかないか」
「潔いな。では両者は武器を持ち、中央に」
僕とマリアは中央に見会うように立つ。
「怖じ気づきませんでしたね。それともバカなのでしょうか?」
「そうだなー、言うなら後者が7割ってとこだろうね」
「ふん!なら人間風情が竜人に勝てないことを教えてあげます!」
「そうか、ならしっかりと教えてもらおうかな」
僕は剣を鞘から抜く。マリアは槍を構える。その姿、気迫は正に武人である。
まともに戦えば…命はないかも。まともに戦えばね。
「試合開始!」
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