43ページ目

「たのもー!!」


そこに立っているのは、急所をのみを守る甲冑に身を包み、頭に角、背面には羽と尻尾が生えている、身の丈より大きな槍をもった小さな少女だった。


「は、はぁ」とさすがに間抜けな声が出てしまう。

「む、貴様が例の…………中央の王か!」


今の一瞬だけ間があったのはきっと忘れてたからだな。


「やい、貴様!私と……」

「ごるぁ!」


言い切る前に現れたのは赤の王ライラ。彼女は小さな少女の頭に拳骨を落とした。


「い……った~い!!」

「何を粗相しているマリア!」

「い、いや勝負を挑もうと……」

「だからと言って『貴様』などと言いおって、相手は私と同じ王だぞ!」

「でも……」


なんだ!と言わんばかりにライラはマリアと呼ばれた少女を睨む。睨まれた彼女は縮こまってしまう。このままだとなくなってしまいそうだ。というかこの展開、さっきもやらなかったか?


「ま、まぁまぁ。彼女も反省してるみたいだし、許してあげなよ」

「しかし……」

「僕は気にしてないからさ」

「分かった。貴様がそういうのであれば、私も許そう」

マリアもほっとした表情をする。


「で、いったい何の用かな?」

「あぁ、実はこいつを我が国からの使者として預けようと思ってな。話をしたら……」

「なるほど」

その言葉で僕はすべてを理解した。ライラが話す→どんなやつか見てみよう→お宅訪問って感じだな。


「それで君は何をしに来たの?」

「私はき……貴方に勝負を挑みにきたのだ」

「勝負って?」

「私達、竜人の悪い風習だと思ってくれ。私たちドラグーン族は強者の下にしかつかない。強者、それは誰よりも力が強い者なり、とな」

「そういうことか」


お宅訪問×勝負じゃあ!◎ってことか。


「まぁ、そう言う仕来りなら仕方ないね。せっかく訪ねてもくれたんだ、戦おうか」

「良いのか?俺の命令で就けと言えば、聞くと思うぞ」

「それじゃ本人は納得しないでしょ。無理やり就かせるのは違うと思うな」

「……そうか。なら好きにするといい」

「じゃ、外に出ようか」


僕たちはその場を後にして、試合が出来る試合場に向かった。


「さーて着いたけど、試合方法とかルールとかは?」

「ルール無用のデスマッチ。お互いのどちらかが死ぬ、または降参したら終了だ」

「は?何言ってんの?」

「だから言ったのだよ、良いのかと。しかも人間と竜人では"試合"どころか”死合”になる可能性もあるな」


まさに殺死合ってか。やかましい!などと突っ込みをいれたいが、そっと心にしまうことにしよう。というか突っ込んだところで状況変わんないし。


「まぁ、言ってしまった以上はやるしかないか」

「潔いな。では両者は武器を持ち、中央に」


僕とマリアは中央に見会うように立つ。


「怖じ気づきませんでしたね。それともバカなのでしょうか?」

「そうだなー、言うなら後者が7割ってとこだろうね」

「ふん!なら人間風情が竜人に勝てないことを教えてあげます!」

「そうか、ならしっかりと教えてもらおうかな」


僕は剣を鞘から抜く。マリアは槍を構える。その姿、気迫は正に武人である。

まともに戦えば…命はないかも。まともに戦えばね。


「試合開始!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る