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イリスは剣を下ろし、大声で笑い始める。いったい何が面白かったのだろうか。
「どうしたんですか?」
「いやはや…自分が殺されそうなのによくもまあそんな態度をとれるなと思ってね」
「いや~、君が僕を殺そうとする気がないって思ってね」
「おや、それはどうしてだい?」
「こんなところで、しかも無策で殺そうとするほど君は馬鹿じゃない。そもそも君が本気なら最初に扉を開けた時点で殺しそうだし」
「それは……否定できないね」
そう言いながら剣を鞘に納める。先程までの殺気はもはや微塵も感じない。ここまで殺気の出し方が上手いとなると、彼女も赤の国の王と同じ武人タイプの王なのだろう。
「と言うか君は…」
「イリス、と呼んでくれないのかな」
「え?いや、年上を呼び捨てなんて」
いやいや待て待て、僕は既に呼び捨てにしてる年上の方々がいらっしゃいましたね。
つまり今更というわけであり、それを理解しているということになるな。なんとも恐ろしいほどの情報網なのだろう。
「わかったよ、イリス」
そう答えるとイリスは「よろしい」と言い、いたずらっぽく微笑む。その顔は少女のように思える。歳は知らないけど。
「じゃあ…話の続きなんだけど。君は会議の時に、敵対する様なこと言ってたけど、なんで僕の所に来たの?」
「それはあの場ではあのように振る舞うべきだと感じたからだ。ここに来たのは君の真意を探るためさ」
イリスの発言に僕は素直に驚く。まさかあれが演技だったとは、途中から喋らなくなってたし、敵対意思を示して出ていったから完全に敵対したと思ったのに。
「…あれって演技だったの?」
「ふむ、あれを見破られなかったとは。私の演技力もたいしたものだ」
「嘘だろ…。完全に騙されてたよ」
「君の演技もなかなかだったよ。さて、私からも質問良いかな」
「バレてましたか…。もう好きにしてくれって感じかな…」
「ま、そう腐るな。ではまず一つ目。今回の黒幕は青の国の王か?」
「…それはどうかな、今はまだ分からない」
「ふむ、二つ目。この件は全ての国に危険が及ぶのか?」
「そうだね、このまま放置してれば必ずそうなると考えている」
「最後の質問。君は青の国の王と結託して、我々を滅ぼそうとしているのか?」
「そんなことはしない。何なら書状でも書くよ」
「成る程、よくわかった」
「これだけで?」
「詳しく話せないこと、危険なこと、君に敵意が無いことが分かれば十分さ」
僕はイリスの勘の良さに唖然としてしまう。たったこれだけの質問でおそらくだが、ほぼ理解しているように見える。
「さて、こうなると私も手伝わざるを得ないね」
「手伝うって…一体どうやって?」
「フウ、ライ出ておいで」
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