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そう言うと彼女は話し始めた。
彼の軍勢は彼女の父親のモノ、彼女が一人で追われていたのも、父親の策略。僕に助けを請い、同盟を組むのが目的だそうだ。
「同盟を組むことにメリットなんかあるの?」
「……恐らく父は貴方を孤立させることが目的です」
「孤立させる?」
「元々中央王都以外の国は、領地を広げるため、互いに争っていました。それを中央王都の初代王は休戦させ、互いに協力するように協定を作ったのです」
「なるほど、それが今回の会議なのか」
「そうです。そして今回の件で貴方が私の国に加担をすれば、ある事項を破ることになるのです」
「ある事項?」
「……中央王都は全ての国に対して中立とする」
「なるほど。確かにそれを破ったら、僕だけが狙い打ちされそうだね」
でも……と僕は続ける。
「他の国に助けを求めるとか、逃げるとかは出来ないの?それとも……」
「御察しの通りです。もしも逆らったり、失敗した場合は母が殺されてしまいます」
やっぱり人質取られてますよね~。ダメもとだけど聞いてよかった。
「にしても自分の妻に手をかけようとしてるとは…外道だな」
「……正確には正妻ではないのです。父は正妻とは子供が出来ず、妾を取り、私が生まれました。つまり妾の子です」
「これはまた複雑な。じゃあ王位は?」
「それは正式に私が受けております。でも裏では……」
「父親が牛耳っていると……」
僕は大きくため息をはく。
「あの……ご迷惑でしたら……」
「仕方ない、やろうか」
「……はい?」
「その話に乗ろう。で君の母親を助けて、父親はぶっ飛ばそう」
「え……えぇ!?」
「そんなに驚かなくても」
「い、いえ……その…噂では冷たい方だと伺っておりましたので……」
「冷たいねぇ。自分では思ったことないけどなー」
「す、すみません、噂話を信じてしまいまして…。しかし大丈夫なのでしょうか」
「なんとかなりますよ。えーっと……」
「あ、自己紹介してませんでしたね。私はソフィア・ランセルキと言います。気軽にソフィアとお呼びください」
「わかった。ソフィアさんに聞きたいことがあるんだ」
「何でもお聞きください」
「君の母親の居場所について知りたい。連れ出してこちらで保護しようと思う」
「母は国境にある小屋に一人で暮らしていると聞いております。場所は……」
僕は地図を広げる。
「ここです」と指された場所は、ここからはそんなに遠くない場所だ。
「分かりました。では救出と保護はこちらにお任せください。取り敢えずもう遅い時間なので、話はここまでにしましょう」
「分かりました、今日はありがとうございました」
「もし父親に聞かれた場合は、うまくいったとお話しください。嘘ではないですからね」
「お気遣い頂き、ありがとうございます。ではお休みなさいませ」
ソフィアが出ていき、部屋が静寂に包まれる。
「さて、僕も寝るとするか」
明日の決戦で睡眠不足なんてやってらんないからな。
だけどその心配も空しく次の日、何かが起こることはなく、会議が始まろうとしていた。
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