36ページ目
「……と、言うことがあってさ」
「なるほど。しばらくは城内や城下町の警備も厳重にした方が良さそうですな」
「察しが良くて助かるよ、そっちの方はルインとカインに任せる」
「承りました。では我々は早速対策を考えます。行くぞ、カイン」
「はっ!では先に失礼します」
ルインとカインは部屋から出ていく。
「私は明日の会議に備えようと思います」
「そうだね、何かあればすぐに報告を」
「了解です、マ……陛下」
わざわざ言い直さなくてもいいんだけど、真面目なんだよなー。
「ローザはいつもと同じで良いけど、いつでも出れるように準備はよろしく」
「畏まりました、マ……ご主人様」
今のはシエラさんをからかう為にわざといい間違えたな。というか言い直しても意味が変わらないのですが……。
「私はどうすればいい?」
「君はいつもと変わらず、僕の身辺警護に決まってるでしょ」
「……それもそうか。じゃ、いつも以上に気合い入れて護るね」
「ありがとう、よろしく頼むよ。それじゃ、話は以上だ。解散してくれ」
それからしばらくして、皆がいなくなり、静かになった部屋にノック音が鳴り響く。
「邪魔するよ」
「サラか」
「頼まれてたもの作ってきたよ」
お菓子とお茶をテーブルの上に置いてくれる。
「悪いね、いつも助かるよ」
「別に……あんたのために腕を振るってるだけだから」
「ははっ、だからこそだよ。作り手に対して感謝しなければ、美味しく頂けないからね」
「じゃ、返す言葉はありがとうだね。…………ねぇ、アタシの料理は美味しい?」
「いつも美味しいと思ってるよ」
「ほんとに……?」
「ほんとに」
僕はそう言いながらサラの頭をくしゃくしゃと撫でると、サラは恥ずかしくなったのか、真っ赤になった顔を隠してしまう。
「あ、あたしな、あんたに伝えたいことがあるんだ」
「……ん?」
「あたしは料理しか能がなくて、他のことはからっきしだけどな、あんたの事が……」
コンコンと扉がノックされる。
サラは黙ってしまう。
「この部屋の音は外には聞こえないから、続きを言っても大丈夫だよ?」
「……いい」
そう言うと機嫌の悪そうな顔になったサラは立ち上がり、部屋から出ていくのと、入れ違いに青の国の王が入ってくる。
「あ、あの……私はあの方に何かしたのでしょうか?」
「……良いところに邪魔が入った…ってやつですよ。まぁ僕としてはありがたかったですが」
まだ答えられる自信ないし。
「はぁ……そうですか…」
「立っているのもなんですから、どうぞこちらに」
僕は目の前にあるソファーに座るよう促す。
「はい、失礼します」
「お茶をどうぞ。お菓子もご自由に食べてください」
「あ、ありがとうございます……」
「ですから、この時間は腹を割って話し合いましょう」
青の国の王は驚いた顔をする。
「い、一体いつから……」
「いえ、勘です。まさか本当に隠し事をされているとは思いませんでしたよ」
彼女はやってしまったみたいな顔をする。
「大丈夫ですよ、この部屋の音は外から聞くことは不可能ですから」
「えっ?」
「特殊な結界で部屋を包んでいますので、ご安心を」
僕がそう言うと彼女は安堵の表情を見せる。
「しかし、あなたは隠し事が苦手なようだね」
「そ、そうですか?」
「最初に会った時も、仲間が死んだのに涙を流していませんでした」
「そ、それは……」
「人によるとは思いますが。一兵卒だけではなく、親しい者を連れてきているはずだから、あそこまで冷静にはなれないと思ったんだよね。それに呼吸も乱れてなかったし、すぐに敵が逃げたのも気になりましてね」
「そんなことまで考えてらしたんですか!?」
「いや~、お恥ずかしながらこれくらいしか出来ることがなくて。政務や普段の仕事は部下に任せっきりですし、承認業務だけやっているのも悪い気がしますから。せめて無能に見られないように『考えることだけ』はしてるんですよ」
「ふ、ふふ……あはは」
彼女は笑い始める。 狙い通りだけど、まさかここまで笑われてしまうとは。
「あ、ご……ごめんなさい。まさかこんなに面白い方だと思いませんでしたので……」
「そう思って頂けたなら、僕にとっては光栄です」
「ふふ、優しい御方ですね…………わかりました。本当のことをお話致します」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます