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「……と、言うことがあってさ」


「なるほど。しばらくは城内や城下町の警備も厳重にした方が良さそうですな」


「察しが良くて助かるよ、そっちの方はルインとカインに任せる」


「承りました。では我々は早速対策を考えます。行くぞ、カイン」


「はっ!では先に失礼します」


ルインとカインは部屋から出ていく。


「私は明日の会議に備えようと思います」


「そうだね、何かあればすぐに報告を」


「了解です、マ……陛下」


わざわざ言い直さなくてもいいんだけど、真面目なんだよなー。


「ローザはいつもと同じで良いけど、いつでも出れるように準備はよろしく」


「畏まりました、マ……ご主人様」


今のはシエラさんをからかう為にわざといい間違えたな。というか言い直しても意味が変わらないのですが……。


「私はどうすればいい?」


「君はいつもと変わらず、僕の身辺警護に決まってるでしょ」


「……それもそうか。じゃ、いつも以上に気合い入れて護るね」


「ありがとう、よろしく頼むよ。それじゃ、話は以上だ。解散してくれ」


それからしばらくして、皆がいなくなり、静かになった部屋にノック音が鳴り響く。


「邪魔するよ」


「サラか」


「頼まれてたもの作ってきたよ」


お菓子とお茶をテーブルの上に置いてくれる。


「悪いね、いつも助かるよ」


「別に……あんたのために腕を振るってるだけだから」


「ははっ、だからこそだよ。作り手に対して感謝しなければ、美味しく頂けないからね」


「じゃ、返す言葉はありがとうだね。…………ねぇ、アタシの料理は美味しい?」


「いつも美味しいと思ってるよ」


「ほんとに……?」


「ほんとに」


僕はそう言いながらサラの頭をくしゃくしゃと撫でると、サラは恥ずかしくなったのか、真っ赤になった顔を隠してしまう。


「あ、あたしな、あんたに伝えたいことがあるんだ」


「……ん?」


「あたしは料理しか能がなくて、他のことはからっきしだけどな、あんたの事が……」


コンコンと扉がノックされる。

サラは黙ってしまう。


「この部屋の音は外には聞こえないから、続きを言っても大丈夫だよ?」


「……いい」


そう言うと機嫌の悪そうな顔になったサラは立ち上がり、部屋から出ていくのと、入れ違いに青の国の王が入ってくる。


「あ、あの……私はあの方に何かしたのでしょうか?」


「……良いところに邪魔が入った…ってやつですよ。まぁ僕としてはありがたかったですが」


まだ答えられる自信ないし。


「はぁ……そうですか…」


「立っているのもなんですから、どうぞこちらに」


僕は目の前にあるソファーに座るよう促す。


「はい、失礼します」


「お茶をどうぞ。お菓子もご自由に食べてください」


「あ、ありがとうございます……」


「ですから、この時間は腹を割って話し合いましょう」


青の国の王は驚いた顔をする。


「い、一体いつから……」


「いえ、勘です。まさか本当に隠し事をされているとは思いませんでしたよ」


彼女はやってしまったみたいな顔をする。


「大丈夫ですよ、この部屋の音は外から聞くことは不可能ですから」


「えっ?」


「特殊な結界で部屋を包んでいますので、ご安心を」


僕がそう言うと彼女は安堵の表情を見せる。


「しかし、あなたは隠し事が苦手なようだね」


「そ、そうですか?」


「最初に会った時も、仲間が死んだのに涙を流していませんでした」


「そ、それは……」


「人によるとは思いますが。一兵卒だけではなく、親しい者を連れてきているはずだから、あそこまで冷静にはなれないと思ったんだよね。それに呼吸も乱れてなかったし、すぐに敵が逃げたのも気になりましてね」


「そんなことまで考えてらしたんですか!?」


「いや~、お恥ずかしながらこれくらいしか出来ることがなくて。政務や普段の仕事は部下に任せっきりですし、承認業務だけやっているのも悪い気がしますから。せめて無能に見られないように『考えることだけ』はしてるんですよ」


「ふ、ふふ……あはは」


彼女は笑い始める。 狙い通りだけど、まさかここまで笑われてしまうとは。


「あ、ご……ごめんなさい。まさかこんなに面白い方だと思いませんでしたので……」


「そう思って頂けたなら、僕にとっては光栄です」


「ふふ、優しい御方ですね…………わかりました。本当のことをお話致します」


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