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兵士が慌てた様子で駆け寄ってくる。


「何があった?」


「馬が一頭接近しており、乗り手は青の国の王と思われます。そして追いかけるようにその後方から何かの軍勢が迫っております!」


「何かってなに?」


「ここからではよく見えないため、何なのか判別できません!」


「うーん……わかった。急いで門を閉める準備を、魔導士隊と弓部隊は城壁で構えて待機。敵が射程圏内に入ったら一斉射してくれ」


「はっ!」


「君は青の国の王が門を通ったら、すぐに門を閉めて結界を発動してくれ。合図は僕が出す」


「了解であります!」


命令は出した、後はタイミングと運次第だ。

しかし…どこの勢力なんだ?他の国は全員来ているはずだ。

いや、先に来てる誰かが命令したのか。それとも…。

などと考えていると、青の国の王が視認できるくらいには近づいてきた。

だが距離がまだ遠いので、門を閉めることができない。

絶好のタイミングを待っていると、後ろから追いかけてくる連中の姿も視認できるようになる。

視認できたは、人の形はしているが、人に見えるモノではない、少なくとも僕には人に見えない。あれは……。


「陛下!一斉射します!」


兵士の言葉とハッとしたのと同時に、一斉射が行われる。

無数の矢と魔法の雨は果たしてあの軍団に対して効果があるのか……。

着弾した結果、効果はあったらしい、追いかけている何かの行軍速度はあからさまに下がる。そのおかげで青の国の王と何かの軍団の距離が大きく開く。


「今だ!」


そして青の国の王はその速度のまま、門を通り抜ける。

僕が合図出す。門が閉まり始め、結界が発動する。


「これで大丈夫だろう。みんなお疲れさま。でも油断しないで、しばらく牽制でもいいから攻撃を続けて、警戒を怠らないでください。何かあればすぐに報告を。相手の出方を見ます」


「了解であります!」


指示を受けた兵士は城壁に上がる。出し終えた僕は、青の国の王へと駆け寄る。


「大丈夫ですか?」


「は、はい…!な…何とか……」


「一人ですか?御付きの方などは…」


「………皆、私を守るために…」


「……分かりました、こちらの兵を護衛につけます。今はお部屋でお休みになってください」


「申し訳ありません、ありがとうございます」


近くにいた兵士に彼女を護衛と案内をするように伝える。


「今は失礼いたします、後程伺わせていただきます」


そう言って彼女は城へと向かっていった。


「さてと……」


さっきのよくわからん連中を調べにいくかと思い、城門に振り向くと兵士が近づいてきている。


「陛下!」


「どうした?」


「先ほどまでいたはずの敵が消えました!」


「何が起きた?」


「分かりません。申し訳ないのですが、突如として消えた……としか言えません」


「死体とかは?」


「それが…それすら消えているようでして…」


「……わかった。一応偵察隊を出して確認してきてくれ。僕は報告するために城へ戻る。今日からしばらくは警備を厳重にして、夜の見張りの数も増やしてくれ」


「はっ!」


僕はその場をあとにして、城へと戻る。一抹の不安を感じるが、この場にいても出来ることなんてないし、取り敢えず皆に報告しよう。


それから時は過ぎて、夜になり、僕は皆を執務室に呼び、夕方に起きたことを話す。

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