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その日の夕方、ローザさんからシエラさんの言伝を聞いて、僕は城門に向かうことになった。他国の王が着いたので、迎えに行ってほしいとのこと。

それって僕が行く必要があるのか正直言って謎だが。

僕が城門に着くと、何やらうちの兵士と誰かが揉めてる。


「どうしたの?」


「へ、陛下!お待ちしておりました!」


「え、なに?」


「なんだ。お前がこの国の王か!」


僕と兵士の間に入ってきたのは、僕より背の高く、炎よりも赤い赤髪に赤い鎧を身に纏った女の人が、鋭い目付きで僕の顔を覗きこんでくる。


「そ、そうですが、何でしょうか?」


「そこの兵士が、お前に顔合わせするまで入れられないと言いやがったんだ」


「あー、えーっと…それは申し訳ないことをしました。僕が遅れたのが原因です、本当に申し訳ありません」


僕はそう言いながら頭を下げる。

女性は「お、おう……」とひきつった顔をしながら答える。


「でも、約束の時間より早く来るとは思いませんでしたよ」


「ふん。遅れるよりはよかろう」


「ははっ、確かにね」


「しかし、思ったより剛胆なものだな」


「誰が?」


「貴様に決まっているだろう。ひょろっとした青二才が王になったと噂されていたからな」


「剛胆ね……言われたことなかったな。それよりも青二才かー…」


「それは貴様が若いから、周りから嘗められているのだろう」


「なるほどね。ま、人を見た目で判断する人に言われても痛くないからいいかな」


「ふっ…ははは!貴様のことが気に入ったぞ。俺は赤の国の王、名はライラ・ベルメリオだ。よろしく頼むぞ」


「こちらこそよろしく」


僕は近くにいた兵士に彼女を城まで案内するように伝える。


「ではまたな、小僧」


そう言って彼女は僕の頭を優しく叩く。

小僧って……


「陛下、次の方がお着きになりました」


「わかった」


そうして兵士に案内された場所には、二人の女性がいた。


「君がこの国の王か」


「あ、はい。そうです」


「ふむ、思ってたより良い男だな」


「は、はぁ…」


「良い噂と、悪い噂が半々くらいに伝えられていてどのような人物か想像が出来なくてね。だが実際に見たら、中々に良い男じゃないか」


「そ、そうですか」


長身で容姿端麗、黒髪に角の生えた女性の饒舌と、先ほどと同じように顔を覗き込まれて、僕は思わずたじろいでしまう。


「どうだい、今夜辺り酒でも飲みながら話でも……」


「イリスちゃんばっかり話してずるい~!フィリアも話すの~!」


「わかったわかった。おっと、最後に自己紹介だけ。私は黒の国の王、イリス・クロウェル。よろしく頼む」


「こちらこそよろしく」


「ねーねー、次はフィリアとお話しよ!」


「うん、いいよ」


背の高かった女性達から一転して、僕の腰辺りぐらいの身長で白いドレスに身を包んだ少女は一生懸命に話してくれる。よく見ると彼女も頭に小さい角が生えてる。


「わーい!あのね、フィリアはね、フィリア・W・ハルニクス!白の国の王なんだよ~!すごいでしょ!」


「はは、そうなんだ。それはすごいね」


「えへへ~!それでね、イリスちゃんと一緒にお互いの国を統治してるんだよ!」


「そうなの?」


「あぁ、フィリアの先代と約束していてね。それに彼女一人に任せると言うのも酷だろう?」


「なるほど」


しかし、それだけじゃないように見えるのは僕の気のせい…と言うことにしておこうか。

軽く自己紹介を終えたのち、取り敢えず僕は近くにいた兵士に二人を城まで案内するように伝える。


「ではまた会おう、若き王殿」


「お兄ちゃん、またね~」


姉妹のような二人の王を見送り、兵士から次の王が来ていると伝えられているので向かった先に待っていたのは。


「あ、ヤッホー!君がこの国の新しい王ダネ」


「あぁ、そうだよ。えーっと君は……」


「私は黄の国の王、名前はキルシュ・アマレロ。よろしくネ!」


頭に猫耳、褐色肌で、豊満なボディを隠さない露出度の高い服を着た王だ。正直少し目のやり場に困る。いや健全な男としては眼福な服装だけどさ。


「こ、こちらこそよろしくお願いします…」


「ところで~……」


挨拶が終わるとキルシュは僕に近づいてくる。


「君って、イ・イ・ヒ・ト…っているのカナ~?」


そう言いながら、体をくっつけてくる。

二つの大きな膨らみが、僕の体に当たる。


「な、なにを……!」


「アタシってば、独り身なんだよネ~。だ・か・ら~……」


押し付けが強くなる。


「ちょ、やめ……!」


「ねぇねぇ……イイでしょ~?」


「キルシュさん、お止めなさい」


一人の女性がキルシュの頭に殴ってから引っぺがす。


「いった~……何よ、あんたには関係ないでしょ!」


「困っている殿方を無視出来ません」


「うっさいわね!いつもあと少しのところで邪魔ばっかして!」


「それはあなたが無理矢理に迫るからでしょう……」


そう言いながらキルシュは女性に引きずられる。


「友人が大変ご迷惑をお掛け致しました…。私は緑の国の王、サクヤ・ヴェルデと申します。以後お見知りおきを…」


緑の長髪に和装衣装を身に纏った女性が頭を下げる。こちらはキルシュさんとは異なり落ち着いた印象を受ける。服も露出度が少ないし。


「あ、どうもご丁寧に。こちらこそよろしくお願いします」


こっちにも髪の色はあれだけど、日本人がいるのかと思ったが、顔をあげた彼女の耳を見て、少しがっかりする。エルフ耳か……ま、髪も緑色だしな…


「私共もそろそろ城に向かいたいのですが、案内を付けていただけますでしょうか?」


「分かりました」


僕は近くにいた兵士に二人を城に案内するように伝える。


「うぅ~、ダーリンまたあとでね~……」


片方は呻きながら、片方は会釈をしてその場を去っていく。


「そんな関係になった覚えないんだけど……」


さてあと一人か、確か青の国の王だったかな。


「報告がないけど…何かあったのかな」


することもなく、じっと待つ。

しばらく城門から外の景色を眺めていると遠くの方で砂煙が舞い上がっているのが見える。


「陛下!大変です!」

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