30ページ目

「ゆきぃー!!!」


「いいかげんに……しろ!!!」


聞き覚えのある大声が聞こえたと思うと、同時に大男が空の彼方に吹っ飛んでいく。


「まったく、妹ちゃんに手をだすなんて…あんたらには死ぬより辛い目に味わせてあげるから覚悟しなさいよ」


「いや、流石にそれはやりすぎだよ…」


現れたのはお兄ちゃんと幼馴染みさん。


「あ、やっぱり雪だったか」


私をそう呼ぶのはお兄ちゃんだけ…ということは本物だ!


「お、お兄…」


「やい!そいつらは俺たちのもんだ。横取りはさせねぇぞ!」


そうだった、まだ他の山賊達が残っていた。二人増えたところで50人程の軍勢を相手にするのは…

私がそんなことを考えているとお兄ちゃんが掌を山賊に向ける。


「何の真似だ?」


「お前ら……雪を物扱いしてたね」


「は、だからどうしたってんだよ」


「…許さないってことだよ」


急激に寒くなり始め、周囲に冷気が漂い始める。


「なんだ?急に寒くなってきやがった」


「た、大変です!足元が!」


山賊達の足元が、凍り始める。それは徐々に這い上がってくる。


「な、なんだ!?何が起こってやがる!」


「その氷が徐々に君たちを侵食し、やがて全てを凍らせる。そういう魔法だ」


「な!?や、止めてくれぇ!」


「なぜ?」


「し、死にたくねぇ!だから…!」


「君達は今までにそう言ってきた人たちを助けてあげたの?」


「そ、それは…」


「自業自得だ。自らの罪に裁かれたと思っときなよ。彫像になってさ」


「い、嫌だ!た、たすけ…」


お兄ちゃんが、手を握りこむと一瞬で山賊達が氷に包まれる。


「相変わらず凄く派手な魔法ね」


「どーせ1日もすれば溶ける魔法だよ、死にやしないさ」


「さて」と言いながら、お兄ちゃんはこちらを見る。


「雪、詳しく話を聞こうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る