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「私は…行きます。元より覚悟は出来てます。でも薫ちゃんは…」


「私も行きます」


「薫ちゃん!?」


「私も覚悟は出来てる。最後まで付き合うよ」


「…ごめんね」


「謝らないの、私が好きにやってるだけだから」


「うん……その、ありがとね」


私がそう言うと薫ちゃんは笑顔で「気にしないでいい」と言ってくれて、私はその言葉に安堵した


「そろそろ準備は宜しいですか?」


「うん、お願い!私たちを異世界に連れていって!」


「分かりました、では行きますよ」


その言葉と共に真っ白だった風景が、突如として大草原の上に切り替わる。

どこまでも広がる大草原などという、今までに見たこともない景色が私達の前に広がる。


「うわぁー!すごいすごい!」


「本当に異世界があるなんて…」


驚いていると、ゆらゆらと光がこちらに近づいてくる。


「別の世界はここ以外にもありますよ。あなた達がいた世界も、この世界の人達から見れば異世界ですからね」


さっきまで会話していた人の声がする、恐らくゆらゆらと動いている光がそうなのだろう。


「さて、それでは探し人の元へ向かいましょうか」


「え?手伝ってくれるんですか?」


「えぇ、道案内を致します。私の名前はアルテミスです。よろしくお願いしますね」


「あ、こちらこそよろしくお願いします!」


私は光の玉に向かってお辞儀をする。


「では向かいましょう。まずは近くの村で食料などを調達しましょう。ここから中央王都までは遠いですから」


そう言うとアルテミスさんは動き始める。私たちも後に続いて歩き始める。


「中央王都ってところにお兄さんは居るんですか?」


「はい。中央王都グランダラント。彼はその国の王になりました」


王?王様?まさかさっきの話は本当に…。


「事実です。彼は今も王として務め、民を導いているはずです」


「そんなわけ…………いや、お兄ちゃんならやってそうで困る…」


「でも、そこまで分かっているならどうして、中央王都をスタート地点にしなかったんですか?」


「それが…近くにしようとしたら、ここに飛んでしまいまして……恐らくは彼を連れてきた者の妨害か何かでしょう」


「なんで妨害するんでしょうか?」


「分かりません、何かしらの理由があるのか…それとも…」


そこでアルテミスは黙ってしまう。私たちに言えない何かがあるのだろうか。

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