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「はぁ!?」


カインは大きな声を出す。

これで何度目だろうか、いい加減理解してほしいものだ。


「だーかーらー!この人を騎士団に入れるつってんの!」


「しかし、このような素性もわからぬものを入れるわけには…」


「大丈夫だよ、この人自体は問題ないから」


「そう言う問題ではありません。騎士団の名誉的問題です」


「いや、分かるけどさ。この人は優秀な人材だよ?」


「それは…分かりますけど…」


「…うーん…。わかった!じゃあ足りないところはカインが補ってあげてよ」


「えぇ!?」


「だって、バラッツォさんは常識に疎いようだし、その点カインはしっかりしてるじゃん?」


「は、はぁ…」


「だからバラッツォさんにいろいろ教えてあげてよ。騎士団のこととか、常識とかさ」


「え、ちょ…」


「じゃ、よろしく~。バラッツォさんもこれからよろしくね」


「…よろしく」


僕はそそくさとその場を後にした。カインは大きくため息をはく。


「しかし、頼まれたからにはやるしかないか」


「よろしく頼む…」


「ただいま~っと、なんだこのデカい男は?」


まずは親父に話すことにしようか…。


さて、バラッツォさんは任せといて、僕はギルドに向かうことにした。

正門に到着すると、門の外にはローザさんが居る。

その姿は先ほどまで着ていたメイド服ではなく、急所のみ鎧が付いた戦闘服のようなものを着ている。


「女の勘は当るものですね、お待ちしておりました」


「ど、どうしたの?」


「いえ、ご主人様がギルドに向かうのではないか、と思いまして」


ギクッ…


「そ、そんなことないよー?あー外の空気美味しいなぁー!」


「ごまかさなくても大丈夫です。私も付いていきますから」


「え、大丈夫なの?」


「えぇ、慣れていますから問題ありません」


慣れてるってどういうことなのと僕は思った。

気になるけど、それはまた次の機会に聞くことにしよう。


「わかった。とりあえず向かおうか」


僕は歩きだそうとするけど、やめた。


「ご主人様?どうかなさいましたか?」


「…ギルドってどこにあるの?」


ローザさんに大きくため息をはかれる。いや僕のせいだけどね。


「案内致しますので、付いてきてくださいね」


僕は元気よく返事をして、先行するローザさんの後ろをついていく。


歩き始めてから30分後、ローザさんが止まる。


「到着いたしました。目の前にあるのがギルド総本部でございます」


目の前の建造物を見る。そこにあるのは酒場だけだ。


「これのどこがギルド総本部?」


「百聞は一見に如かず。入りましょう」


ローザさんはが先に入っていくのを見て、僕も後を追いかける。

中に入るが、やはり見た目に違わず酒場だ。しかも昼間なのに人もそこそこいる。

しかし普通の酒場と雰囲気が違う。何かこう…殺伐としているというか…。

ローザさんはカウンターのお姉さんに話しかける。


「ギルド長とお話しがしたいのだけれど…いるかしら?」


「ギルド長はいま~忙しいのでお会い出来ませ~ん」


…今の一言で見た目は全てカモフラであることが分かった。

となると、僕は今命の危機なのでは?

後ろを見ると今にも殺そうと考えている連中がこちらを見ている。

は~、飛んで火にいる夏の虫ってか~?泣けるぜ…


「やめろ、てめぇら!」


突然大きな声が部屋全体に響き渡る。


「客人に手を出すなといつも言っているだろうが!」


その声は腹にも耳にも響く。


「客人、1人で部屋に来な。連れは置いて来いよ」


奥の扉がひとりでに開く。僕一人と話したいってことか。

いいだろう、虎穴に入らずんば虎児を得ずの精神で行こう。

僕はローザさんに待っているように伝えると、不服そうな顔で了承してくれる。


「くれぐれもお気をつけください」


ローザさんの見送りを背に扉の奥に進む。

部屋の中は特に広いわけでも、狭くも無い。ちょうどいい広さだろう。

机と椅子、左右の壁には本棚が設置されている。


「ようこそ、こんな辺鄙なところへ。私の名前はアレク。以後お見知りおきを」


椅子に腰掛けて窓の外を見ている人に挨拶をされる。…失礼な人だな


「あ、これはどうも。僕は中々面白い場所だと思うけど」


「そうかい?王族の方には窮屈で汚らしい場所に見えると思ったが…」


あぁ、この人は僕を王族の人間だと思っているのか。


「僕に王家の血は流れていないよ。だから王族じゃない」


「なに…?」


アレクは椅子から立ち上がる。先ほどまで見ることができなかったその姿は、長くウェーブのかかった髪、僕よりも高い身長、おまけに顔だちも整っているので美人なおかげで男か女か区別がつかない。しかし、その容姿でギルド長とか…。

そのままギルド長は僕の前に立ち、少し屈みながら僕のことを観察する。

怪訝な表情を浮かべる彼に対して何故だろうか、むかっ腹が…。


「ふーむ、確かに…。こんななりで王族とは言えぬか」


「…確かにその通りだけど、はっきり言われるとそれはそれでムカつきます」


思ったとおりのことを言い放った彼に、僕はつい思ったことを言ってしまう。


「はは、すまないね。そう言う性分なもので」


「尚更たちが悪いですね」


「まぁ…世間話もそこそこにして本題に入ろうか」


あんたが逸らしたんだろうが…。くっ、つい口調が…気をつけないとな。


「実は先ほど、あなたのところの団員が僕のところに来たんだ」


「なるほど、それで?」


「それで…って、あなたの部下でしょう?」


「確かに。だがギルド全体の方針としては、各ギルドごとに責任を負うことになっているんだ」


「つまり…?」


「簡単さ。その押し掛けてきたギルドに文句を言えばいい」


あー、これはめんどくさいやつだ。


「ギルド名はなんと?」


「えーっと…確か『ハゲタカ』って言ってたような…」


「…確かかい?」


アレクはあからさまに嫌そうな顔をする。


「あぁ、確かそう言ってた」


「参ったな…」


「なにか?」


「そのギルドはまだできたばかりで、しかも管理管轄は私なんだ」


…なるほど


「じゃああなたに文句言えばいいですね」


僕は笑顔でそう答えた。


「ま、まぁ待ちたまえ。私に文句を言ってもいいが、それでは事態は解決しないのではないかな?」


「一理あります。しかしそもそも原因はあなたの管理がずさんだったからでは?」


「ぐっ…」


「この体たらくのくせに、いっちょ前に高圧的な態度取ってましたよね。はぁ~その程度の管理体制でギルド長とはね」


「そ、それは…」


「なにか反論することでも?」


「…無いです」


すっかり委縮してしまったようだ。少しやり過ぎた。


「まぁ…その件に関してはもう解決しているので厳重注意して頂ければ結構です」


「りょ、了承した。ほ、他に何かあるのかい?」


「えぇ、こちらのほうが本題です」


「なるほど、一体どんな用件かな?」


「実は…」


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