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「大丈夫ですか?」


僕はステラのお母さんを抱き起し、猿ぐつわを外す。


「だ、大丈夫です。い、一体何が…」


辺りを見回すとそこには氷漬けにされた村人たちが。


「ひっ…!」


「大丈夫です、動けませんから」


僕は彼女を落ち着かせる。よく見なくても彼女はボロボロだ。ここにいるべきじゃない早く帰ろう。


「動けそうですか?」


そう言われた彼女は体を動かそうとするがうまく動かない。


「少し失礼しますね」


僕は彼女を背中におぶる。


「あ、ありがとう…」


「うーん…」


「なにか?」


「いや、やはり似てるなと思って」


「え?」


「娘さんに」


「娘を知っているのですか?」


「知っています。彼女は僕の下で働くことになっていますから」


「そうなんですね。よかった…」


「…僕がどんな人間なのかも分からずに、よかったなんて言って良いのですか?」


「ふふ、そんなこと言っても意味ないですよ。実際にあなたは私を助けてくれましたからね」


「そうでした」


「それで…娘はどこに?ここにいらっしゃるということは一緒に来ているのではないですか?」


「先に村から出ているはずです、取りあえず外に出ましょう」


「分かりました。ですが彼らは…」


村人たちを見る。


「大丈夫です、僕が離れたら解けますから」


僕たちは村を後にする。外には2人が立っている。


「お母さん!」


ステラが駆け寄ってくる。


「降りますか?」


「…お恥ずかしい話ですが…」


「気にしないでください」


「ありがとう」


僕はおんぶを継続する。それを見たステラは心配そうに母親の顔を覗き込む。


「大丈夫…?」


「大丈夫よ、少し動けないだけ」


「よかった…」


「ステラ、彼女と先に歩いていてくれないか」


「な、何でですか?」


「いいから、先に行ってくれ。後からついていくから」


「は、はい」


そう言うとステラは幼馴染に近づいて、一緒に先を歩き始める。少し口調が強すぎたか。


「…泣いていいんですよ」


「えっ…」


「母親は子供の前じゃ泣けないでしょう。僕は誰にも言いません」


流石に体が震えているのに気付けない人間じゃないさ。


「ありがとう…、本当に…」


そう言うと彼女は僕にしっかり抱き付いて、声を押し殺して泣き始める。


「しかし二人が再会できて良かったですよ。どうですか?貴方さえ良ければ、僕の下で娘さんと共に働くというのは」


返事ができない彼女はただ頷く。


「分かりました。これからよろしくお願いしますね」


こうしてステラとステラの母親が僕の下で働くことになった。

しばらくは皆にグチグチ言われそうだなー…



その日の夜、珍しく早く寝ていた僕は、窓をたたく音に起こされる。

窓を開けるとそこには見たことがある鳥が。


「やぁ、元気かな?」


「もうちょっと寝れたら元気だよ」


不機嫌そうに僕はそう答えた。


「済まないすまない、急ぎ伝えたいことがあってね」


「伝えたいこと?」


「近いうちに良くないことが起こる。具体的には分からないが、とてもよくないことだ」


「ふーん…」


「何だい?関心がないみたいだけど…」


「いや眠いだけなんだけど…」


「そんなことか…。まぁいい、伝えはした。どうするかは君次第だ」


それだけを言い終えると何処かに飛び去っていく。


「…寝よ」


窓を閉めて、僕は再び就寝する。


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