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それから僕はシエラから任された仕事をこなして、午後になってから僕と幼馴染とステラは隣町に向かった。道中に特に異常はなく、問題なく町に到着した。


「よし到着っと…」


「何事もなくてよかったわね」


元気な僕らとは正反対にステラは不機嫌そうで、元気がなさそうにしている。


「なんでこっちにきたんですか…?」


「言ったでしょ、条件があるって」


それだけを言って僕は村人に話しかけて、質問をする。

彼が離れてからステラはため息をつく。


「ごめんね、ステラさん。あいつ重要なことは話さないことが多くて…」


「あ、いえ…大丈夫です。でもなるべくなら…」


「おーい、帰ってたんなら言えよ!」


大柄な男性が声をかけられた瞬間、ステラの体がビクッとする。


「まったくお前が居ないと大変なんだぞ」


「す、すみません…」


「じゃあもう帰るぞ、ほら!」


男はステラの腕を掴んで引きずって連れて行こうとする。


「ちょ、ちょっと!」


「い、いや…!」


「いや…だと?」


そう言うと男はステラの頬を叩く。そして男は豹変したように


「いやとは何だ、お前の家族は死んだんだ!そして行き場のないお前は俺の家族になったんだ!なのに家族に向かってなんて口の聞き方だ!」


もう一度ステラの頬を叩こうとする。それを止めようと幼馴染が動くがその前に話を聞き終えた僕は男の手首を掴む。そして僕はステラの顔を見て状況を把握する。


「何をしようとしているんですかね?」


「お前は何者だ!俺の邪魔をするな!」


掴まれている手を離そうとするが、手を離すことは出来ない。

それどころか掴まれている手を後ろに回され、そのまま地面に押し付けられる。


「くそ、離せ!くそがぁ!」


逃れようと抵抗するが、まったく歯が立たない。


「少し落ち着いてもらえるかな」


そう言いながら押し付ける力を強める。


「ぐぁぁ!分かった、分かったから!」


「そう、よかったよ。分かってくれたみたいで」


そう言いながら僕は少しだけ力を緩める。


「で、あなたは一体何者なのかな?」


舌打ちをして嫌な顔をしながら答える。


「俺はステラの保護者だよ!帰ってきた子供を迎えるのは保護者の務めだろ!」


「ふーん、子供の頬を叩くのも保護者の務めなのか?」


「そ、それは躾だ!保護者に逆らった罰だ」


僕はそれ聞いた瞬間、鼻で笑ってしまう。


「お前は何様のつもりだよ。本当の親ですらない人間がたかが二日、三日ともに過ごしただけで親気取りか」


「なっ…!」


「さっき話した少年が言ってたよ、『いつも殴られててステラお姉ちゃんが可愛そうだ』てな」


男は悔しそうな表情をする。僕は手を離し、その場に男を放置する。


「行こうか。目的地はここじゃない」


僕たちはその場を後にする。離れてから大きな罵声が聞こえた気がするが、無視して先を急いだ。

それから僕たちは村の奥にある墓地に辿り着く。


「えーっと…この辺かな…。あ、あったあった」


僕は他とそんなに変わらない墓石に向かう。幼馴染はわからないが、ステラは気が付いたようだ。

そう、その墓はステラのご両親のものだった。

僕は両手を合わせて、目を瞑る。


「ステラさんのお父さんとお母さん。娘のステラさんを僕の下で働かせます。今日はその許可を頂きに参りました」


ステラはハッとした表情をする。条件とは…


「決して無茶はさせません。どうかお任せ下さい」


ステラも墓の前で彼と同じ体勢を取る。


「私からもお願いします。ここから離れることをどうかお許しください」


その瞬間、風が吹く。強い風だが、どことなく優しさを感じる。その風に乗ってステラの髪飾りが飛んでいく。ステラは泣いている。


「お父さん…お母さん…」


「大丈夫かい?」


「…はい。だいじうぶです!」


「噛んでるよ」


ステラは照れる。僕と幼馴染は笑う。


「わ~!ひどいですぅ!」


「いや、可笑しくてついね~」


「そうね、面白かったからね」


ステラのご両親に挨拶をし終えた僕たちは、笑いながらその場を後にした。

ステラの家の荷物は後日、城の兵士が取りに来ることになっているので、僕たちはそのまま町の出口まで歩く。

しかし、町の出口には村人達がいて、出口を塞ぐように立っている。


「…あの、邪魔なんですが?」


すると、村人全員が土下座をし始める。一体何のつもりだと聞くと、一番年老いていそうな男性が話し始める。


「その子は村で唯一の娘なのです。その子を連れていかれては困るのです。村の存続がかかっているのです」


そこまで聞いた僕は勘づいてしまった。しかも最悪な勘だ。僕が幼馴染を見ると、幼馴染も同じ考えのようで頷いてくれる。


「2人とも席をはずしてくれるか?なるべく聞こえないところに行ってくれ」


「分かったわ」


そう言うと幼馴染はステラを連れて遠くに離れていく。


「さて、話の続きと行こうか。その話から察するに娘が生まれる確率が下がってきていると?」


「はい、年々少なくなってきているのです。ですから…」


「だから、夫婦を殺したと」


ざわめき始める。


「はて、何のことでしょうか?夫婦は盗賊に殺されたはずですが?」


「とぼけなくていい。大体察しているよ。同じ話を彼女の両親にも言ったんだろう?そしてそれは断られた、それでどうしようもなくなったから殺した。そうだろう?」


「はは、冗談がお上手ですな。そんなことさすがに致しませんよ」


「とぼけなくていいと言った。あんたら匂うんだよね、血生臭い匂いがさ」


僕がそう言うと村人たちは武器を構える。


「止めなさい!」


老人が一喝する。


「なぜ、分かった」


「そうだね、何となくかな。と言いたいんだけど、実はおかしいと思ったんだ。

理由はこの村に来てから女の子に会わなかったのと、さっき鎮圧した男性は少年から聞いた話だと優しい性格だと聞いた」


「なるほど、聡明な御方だ。だからこそ厄介だ」


村人たちが再び武器を構える。


「…僕はあなた方を殺す気はない。しかし向かって来るというのなら、容赦はしない」


「止めろと言っている!」


老人が再度止める。


「取引をしようか」


老人が顎で指示する。すると若い男性が一人の女性を連れてくる。その人はどことなくステラに似ている。最悪の予想は当たる…か。


「娘を渡せばこいつを生かそう。しかし連れていくのであれば…殺す」


僕は…笑ってしまう。


「な、何がおかしい!」


「こんな三流な展開今時流行んないよ。しかも真剣な顔して『殺す』とか!」


僕は腹を抱えて笑う。


「貴様…!どうするんだ、娘か、母親か!早く選べ!」


僕は笑うのをやめる


「そんなの決まってるじゃないか」


手の平を村人たちに向ける。


「どっちも助ける」

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