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私は怪物とにらみ合う。ホントはそんなことしなくても良いんだけど戦いと言ったらこの展開よね。先に動いた方が負ける的な。
「お前…いい女だなぁ。どうだオデの嫁にならねぇかぁ?」
背筋に悪寒が走り、ぞわぞわする。こいつ気持ち悪い。殺そう。そうしよう。
「あんたバカじゃないの?私はあんたみたいな化け物と結婚する気ないわよ」
「そうかぁ……じゃぁ無理やり持ち帰るしかないなぁ!」
そう言うと怪物はが先に仕掛けてくる。すぐに近づいてきて、持っている棍棒を振り下ろしてくる。私はそれを軽々と避ける。さすがに足が速いだけじゃ、私は捉えられないわよ。でも当たったら、まずいわね。先ほどの攻撃を受けた地面が陥没している。さっさと決着をつけないと。
「避けるとはなぁ、次は当てるぞ」
「大丈夫、次はないから」
「はぁ?」
「刻眼…発動」
その瞬間、私以外の時が止まる。この目を発動している間は私以外は動けない。私はゆっくりと怪物に近づき、剣で胴体を両断する。
「鎮まれ刻眼…そして再び時を刻め」
「あ、あれ?お、お前、いつの間にそこに…」
「そんなこと考えてる時間ないと思うわよ」
怪物の上半身が滑り落ちる。地面に落ちた怪物は叫び始める。
「な、なんで!いてぇ、いてぇよぉ~!いやだぁ!死にだくねぇ…死にだくねぇよぉ!」
「私の大切な人を傷つけようとした罰よ。楽には殺さない、苦しんで逝きなさい」
怪物はしばらく叫んでから絶命する。そして先ほどまで怪物を乗せていた獣が下半身を落として、遠吠えをする。するとどこからともなく獣たちが現れ、怪物を何処かへと運び始める。巣に持ち帰るのだろうか。リーダー格らしい獣が自分に向かって軽く頭を下げる。彼らはどうやら怪物に力で抑えつけられていたようだ。怪物を運び終えると獣たちは去っていった。
「大丈夫?怪我はない?」
「大丈夫よ。あんたと違って私は強いんだから」
「なら良いけどさ」
「で…理由でも聞こうかしらねぇ」
「うっ…実は…」
僕はこれまでの経緯を話す。
「あんたねぇ…」
「だってみんな忙しそうだったし…」
「それでも誰か一人ぐらいは護衛をつけなさいよ!仮にも王様でしょうが!」
「うぅ…ごめん…」
「あの…あまり責めないであげてください」
「う~ん…、そう言われてもねぇ」
「今回はそのおかげで私も助かったんですから」
「はぁ…分かったわ。今回だけよ」
「やった!」
「ただし、次一人で出掛けたら…殺すから」
ドスの効いた口調で言われる。これは本気だ。
「わ、分かったよ。次は護衛をつけます」
「ならよし。ところであなたは何故こんなところに?」
「自己紹介が遅れました。私の名前はステラと言います。実は城下街町に住んでるお祖母ちゃんを訪ねようと思ってここまで来たんですが…」
「さっきの獣に追い回されたと」
「はい、森の前の街道を通ろうとした時に追われたんです」
「なるほど、取りあえず歩きながら話そうか。どうせ僕たちも同じ方向だし」
「そうね、ステラさんもそれでいい?」
「あ、はい。寧ろありがたいです」
僕たちは一緒に城下町に向かった。
……………
しばらくして城下町についた僕たちはステラと一緒にお祖母ちゃんを探してあげることにした。ステラから聞いたお祖母ちゃんの特徴は僕が町を散策している途中で出会った人物と似ていたので、僕は道案内をした。そしておばあちゃんと別れた場所につくと、何かを見つけたステラは走り出す。その先には先ほどのおばあちゃんが商売をしていたようだ。おばあちゃんとステラが感動の再開をしている間、僕たちは離れたところで待つ。
「…守れてよかった」
「そうね」
沈黙、恐らく考えていることは一緒だろう。
「僕たちの家族も元気にしてるかな…」
「元気よ、きっと…」
「絶対向こうに帰ろうね」
「当り前よ、それと帰るときは絶対一緒だから」
僕は頷いた。再び沈黙。それから辺りが暗くなって2人がこちらに来るまでの間、僕たちが喋ることはなかった。
「すまないねぇ、こんな時間まで待たせてしまって」
「いや、気にしないでください」
「それと申し訳ついでに一つお願い事してもいいかねぇ?」
「なんでしょうか?」
「あたしゃの家は狭くてねぇ、この子を置いとけないんだよ。だからねぇライルさん…いや王様。この子を預かってくれないかねぇ」
あらら、やっぱりばれてたか。
「お祖母ちゃん…やっぱり迷惑だと思うよ…」
「いいですよ」
「そうね。いまから帰るわけにもいかないだろうし、良いんじゃない?」
「すまないねぇ。ほら、ステラも感謝しなさいな」
「あ、ありがとうございます。なんかいろいろお世話になってしまいますね…」
「気にしないで、自分でそうしたいと思っただけだから」
「そうよ。こいつは根っからのお人好しだから、気にしなくて良いわよ」
「そうだね。お人好しついでに明日は隣町まで送るよ。もちろん君も一緒に来てもらう」
僕は幼馴染を見る。
「さりげなく私を巻き込むのやめてくれない?」
「それじゃあ、僕だけで送っていいのかな?」
「…分かったわよ」
少し不機嫌そうに答える。
「ありがとうねぇ、あんたみたいな方が王様になってくれてよかったよ」
「その…ありがとうございます」
「どういたしまして。じゃあ行こうか」
僕たちはおばあちゃんと別れて城へと向かう。城に向かう道中で美味しそうな物を販売している出店に寄り道をした。城についたころには夕焼け色だった空はすっかり暗くなっていた。城の中に入るとルイン、カイン、シエラが出迎え…と言うか待ち構えていた。それから後は想像通りにさんざん怒られた。それと同時に少し嬉しかった。こんなにも心配してくれている人がいることに。さんざん怒られた後、新しい仲間?のサラの料理をみんなで食べ、それから今日一日の報告を皆から聞いた。
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