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次の日の朝が来る。あれから僕は眠れないままでいた。というか眠れるわけがない。女の子に挟まれて寝ることなんて普通あるわけない。左を見ると幼馴染、右を見るとシエラがいる。きちんと寝息が聞こえることから2人は寝ていることが分かる。僕は体を起こしてそっとベッドから降りて、疲れがとれていない体をほぐす。


「お目覚めか、新たな王よ…」


「…誰?」


「窓の外だ」


声の主に言われるがままに窓に近づく。そこには一羽の鳥がいるだけだった。


「誰も居ないじゃないか…」


「居るではないか」


「鳥が…喋った…?」


いや、オウムだ。そうに違いない。


「ただの鳥ではない。こいつは使い魔だ」


「使い魔…」


改めてここが異世界なんだと思い知らされる。使い魔なんて存在はファンタジー世界の話でしか聞いたことがない。まぁ僕が知らないだけかもだけど。


「それで、使い魔を寄越してきた貴方は僕に何の御用なんでしょうか」


「何、王の顔を見てみようと思ってな。声をかけたのも偶然君が起きたからだ」


「はぁ…それだけですか」


なんか拍子抜けだな…なんかしら忠告をしてくると思っていたのに。


「まぁ、折角だから君に忠告しておこうか」


あ、忠告してくれるんだ。


「近いうち、君の下に新たな仲間が現れそうだね。まぁその子が本当に仲間になるかは君次第だね。一歩間違えれば敵になる可能性もあるね。何にせよ頑張り給え」


「仲間…ね」


「さて、私はそろそろ帰るとするよ。いつか君とも直接会うことになるだろう。その時まで生きていてくれよ」


「いやいや、不吉なことを言わないでくれよ」


「ふふっ、ではまた会うときまで、さらばだ」


鳥が飛び去った後、僕はため息をつく。次々に厄介事が増えて、これから大変になりそうだ。僕はベッドに戻り、2人の様子を見る。2人とも起きる気配がない、熟睡しすぎじゃないかと僕は思う。逆にそれほど僕を信頼してくれているのだとも取れる。しかし朝日も昇っていい時間になってきたので、僕は2人を起こす。


「2人とも起きて、朝だよ~」


「う~ん…後1時間…」


「あと一時間ってどんだけ寝る気なんだ…」


「…うぅ…もう朝ですか…?」


シエラは起きたようだ。眠たげな目を擦りながら起き上がる。でも僕は目を逸らした。


「シエラ、起きてくれたのは嬉しいけど、衣服の乱れは直してくれるかな」


シエラは一瞬何のことか分からない様な顔をして、下を向く。自分の格好が凄い事になっていることに気づいたシエラは慌てて衣服を着直す。


「すみません…もう大丈夫です」


さて、シエラは起きた。問題は幼馴染だな。あと一時間とか言ってたけど、そんな寝かせる時間があるとでも?僕は幼馴染のほっぺたを抓る。幼馴染は顔を徐々に歪める。そしてあまりの痛みに目覚める。


「痛いな!何するのよ!」


「痛くしたの。あと一時間とかふざけた事を言ってたからね」


「はぁ!?何言ってんのよ!そんなこと言った覚え…」


「あるよね?」


「うっ…」


ばつが悪そうに俯く。彼女の寝起きの悪さを僕はよく知っている。なんせ小さい頃によく一緒に寝てたからね。


「ごめんなさい…」


「いいよ、慣れてるから」


こうして起きた僕達はそれぞれに身支度を整え、みんなで朝食を取った後、団長のご家族を呼び、会議を始める。


「さて、それじゃ会議を始めようか」


「今日の議題は団長の処遇とこれからについてですね」


「じゃあ団長の処遇から行こうか」


「畏まりました。これまでのルイン団長の功績から考えると…」


「あ、大丈夫。もう僕が考えてあるから」


「そうでしたか。ではどうぞ」


僕はわざとらしく咳払いをする。


「ええと、ルイン団長は団長の任を解きます」


その場にいる皆が驚く。


「分かりました。後任は誰に?やはり…」


「それももう決めてあります。カイン、君が後任の団長だ」


これにはルイン団長も驚きを隠せない。


「待ってください、まだカインに団長の職務は…」


「そうです、私にはまだ早すぎます」


「最後まで話を聞いてください」


僕の言葉で2人は静かになる。


「そして、その監督官としてルインを付けます。2人で騎士団を纏めてください」


2人は呆けた顔になる。ここまで面白い反応をしてくれるとは…


「いいですね?」


「は、はい!お任せ下さい!」


「お任せ下さい、王よ」


「よろしくね。あ、それとルインの奥さんなんだけど…」


「今日からお城の給仕として働きます」


「な、お前の…!」


「まぁまぁ、これには理由があるんだ」


僕は給仕として雇った理由を話す。2人に騎士団を任せること、団長が前王を殺してしまったこと。そのことが原因で暴動が起きたとき、奥さんが近くにいなかったら不安になってしまうだろうと。それでせっかくだからお城住み込みの給仕になってもらおうと。


「まさかそこまで考えて頂いていたとは…、ありがとうございます」


「お礼なんていいよ。じゃぁルイン団長の処遇はこれでおしまいだね」


「では、これからについてを話し合いましょう」


それから僕たちはこれからについてのことを話し合った。カイン新団長達は先ほど話した通り、騎士団のまとめ上げを、幼馴染は僕の身辺警護、および城内の監視。シエラは僕が仕事を覚えられるまでのサポートをしながら秘書をするらしい。肝心の僕は…何もしなくていいらしい。ただ、目を通す必要がある書類に判を押す仕事をすればいいとか。そうして皆それぞれに役割が出来たところで、会議が終わり、皆それぞれに仕事に取り掛かる。会議室に1人取り残された僕は特にすることがない。取りあえず自分の部屋に戻ることにした。

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