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二日目の夜、僕は就任式で疲れた体を癒す為、ベッドに寝転がる。それにしても今日はいろんなことがあった。裏切られたり、死にかけたり、契約してしまったり…。そこで僕はシエラとキスをしたことを思い出す。
「よくよく考えればあれファーストキスなんだよなぁ…」
死にかけの状況だったり、忙しかったりで考えていなかったけど、僕はファーストキスを奪われたのだ。まぁ危機的状況なのだから奪われて当然なのだろうけど。
思わず唇を触ってしまう。あの状況下でもやはり唇に感触は残っているものなんだな。…柔らかかったなぁ……
「はぁ…」
扉がノックされる。その音に僕の体は思わず、びっくりしてしまう。僕は動揺を隠して、「入っていいよ」と声をかける。入ってきたのはシエラだった。
「どうしたの?」
「あの…その……」
なんかモジモジしながらボソボソと何か言っている。何を言っているのか聞き取れない。僕は聞き取る為にシエラに近づく。するとシエラは僕から離れる。僕が近づく度にシエラは離れていく。
「もしかして…男が苦手?」
「………はい…」
「でも昨日は話せてたよね?」
「あの時は従者の方がいたので…」
よくよく考えると就任式の時も喋っていなかった気が…きっと助けた時は必死だったのだろう。
「……それってさ、僕が初めてのマスターってことだよね」
「あ、はい。そうなりますね」
さらっとすごい事言ったな。女の人にとっては大切な事だろうに…。
「貴方は私を救ってくださいました…。だから…契約したんですよ…?」
「あ~…」
そうだった……というか。
「僕が考えている事分かるの?」
「は、はい…。筒抜けではありませんが、集中すれば聞こえます」
「なるほど」
シエラって可愛いよね。
「え、そ、そんな事ありませんよ」
「がっつり聞こえてるじゃないか…」
「す、すみません…」
まぁ、僕の事を思って言ってくれたんだろう。責める気はない。しかし筒抜けか、めったな事は考えられないな。
「あ、あの…」
「あぁ、それでなんか用があるんだっけか」
「は、はい。その…」
再びモジモジし始めるシエラ。なんだろうか…少し待ってみよう。
……30分後
まだモジモジしている。このままだと一向に話す気配がないと思われたが。
「えと…私と…一緒に寝てくれませんか…?」
思わず吹き出してしまう。こいつは…こいつは何を言っているんだ!?いくら契約しているとは言え、見知らぬ男に一緒に寝てくださいなんて!馬鹿なのか!アホなのか!
「ダメ…ですか?」
なんで上目遣い!?こ、これは断れない!
「じゃ、じゃぁ…一緒に…」
…言い切る前に背筋に悪寒を感じる、それと同時に殺気も感じる。僕はその正体が何かを分かっている。扉の外には居るのは、そう幼馴染がいる。
「や、やぁ…」
「なに…してるの?」
おかしい。笑顔なのにこめかみがピクピク動いている。
「い、いえ何もしておりませんよ。まだ」
「まだ…ってことはこれからするってことかな?」
「し、しません…」
「そう、それならいいんだけどね」
よかった…。僕は無事生き残れたみたいだ。
「それで、シエラさんは何で一緒に寝ようと思ったの?」
「え、そ、それは…その…」
やはり言えない事なのだろうか。
「えっとですね…。私には師匠がいるんですが、その…。師匠から契約をしたその日からマスターと共に寝ろ…と言われていたんです」
「それで彼と一緒に寝ようとしたのね」
なんというか…シエラさんは天然なんだと思う。恐らく師匠さんはシエラをからかっているのだろう。そしてそれをシエラは真正面から受け止めたんだろう。…後、師匠の言った意味とシエラが考えている事は違うだろう。
「…シエラさん、それはどうしてもやらなきゃいけないこと?」
「…はい。師匠の言いつけを破ると怖いので…」
「なるほど、じゃあ条件付きでもいい?」
「なんでしょうか…?」
「私も一緒に寝る、それでどう?」
僕はまた吹き出してしまう。この幼馴染は何を血迷ったことを!
「…分かりました。それでいいのなら」
「じゃあ決まりね。ほら寝るわよ」
幼馴染はそう言うと僕の腕とシエラの腕を掴んで、ベッドまで引っ張る。そして幼馴染、僕、シエラの順に横になる。
「じゃあ、お休みなさい」
「おやすみ~」
「…おやすみ」
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