たま

雪白紅葉

第1話 神主、猫を拾う

 その日は雨が降っていた。


「おや、こんな所に箱が」


 置かれていたのは蜜柑の入っていたであろう段ボール箱。

 神社の前に塵を不法投棄とは罰当たりな者がいたものだ。


「ん?」


 今箱が動いたような?


 それに何か鳴き声が聞こえたような?


「まさか」


 傘を置いて思い切って箱を開ける。

 箱は厳重にガムテームで封をしてあり、それを全て剥すのに少々手間取ってしまった。

 開けられる程度に剥し終えて一気に箱を開く。


「……捨て猫、ですか」


 そこにいたのは一匹の黒猫。

 紫の目をした、変わった黒猫。

 まだ子供で、雨のせいか弱っているようだった。


「まずは動物病院ですかね? その前に暖めてあげましょう。寒かったでしょうに」


 冬の雨は段ボール越しでも寒いに違いない。

 そもそも雨で地面が濡れ、箱の底が濡れていた。

 触れてみれば猫の体も少し濡れている。

 これでは体を壊してしまう。

 

 一度住居の中に戻り、毛布でくるんで暖房で暖めてあげる。


 それから暫くして、黒猫の体が落ち着いたのを確認し、動物病院へと出かけた。

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