第23話 エピローグ
朝、鳥の鳴き声が聞こえ始める頃、僕は目覚めた。起き上がると両腕を上げ大きく伸びをする。ベッドの上に再び身を横たえることができたるようになってから、よく眠れるようになった。周囲の本棚をぼんやりと眺めながら僕はそんなことを考えていた。
アリシアが僕と一緒に暮らすにあたって、色々な物が運び込まれた。その中にはダブルベッドもあったのだが、彼女と一緒に眠るわけにはいかないので、今まで使っていたものをギルに頼みどうにか書斎の方に移してもらい、僕はそこで寝起きすることにしたのだ。
家畜小屋へと向かう前に僕はそっとアリシアの眠る部屋を覗く。大きなベッドの上に横たわる彼女の両目は伏せられ、安らかに眠っていた。一人が怖いと言っていた彼女だったが、今ではだいぶ落ち着いていた。彼女が眠りにつくまで一緒にいてあげれば、時々真夜中に途中から付き添ってあげる必要はあるものの、大体そこからは一人で寝られるようになっていた。
日課となっている吸血行為。新たに連れて来られた牛に覆い被さりその生き血を吸い、家へ再び戻る頃にはアリシアは起きており、台所で皿やコップを食器棚から取り出し、並べていた。
「今日の朝食は私が準備するわ」
彼女は戻ってきた僕の姿を見るなりそう告げると、まだおぼつかない手つきながらも朝食の準備を始めた。彼女の細長く綺麗だった指は今ではかさつきひび割れている。これまでの貴族としての生活とは違って不自由で面倒なことが多い中彼女は精一杯頑張っていて、僕はそれを補助しつつ見守っている。
今はただこんな風に過ごせる時間が続けばいい。
僕はそう思った。
END.
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