第84話

 今の日付が3月の5日である。実家にある集落での生活にゆっくり着手できるのも数日だけだ。後4日もすればヘルウェン王国に到着して、戦勝式典に参加しないといけないのだ。というか、僕抜きでやっても問題はないのではなかろうか? 功績の関係上それはダメかね? やっぱりヘルウェン側でも顔繫ぎは必要だろう。と言うか、もう僕の実力なら学院に入っても問題なさそうだが。でもそれをすると、ラクシェ王女がどう思うだろうか。何ともしがたいことだ。


 うーん。何か良い手はないだろうか……。とりあえず、モイラアデス陛下かヴァレン宰相様に相談してみるとか? それが無難かな? 図書館通いだけでもいいけど、講師の声も聞いて見たいことではある。それに、学院に通う生徒の中には、本物の秀才とかもいるだろうし。全てを真似るつもりはないけれど、参考にできる賢い処世術は磨くべきだろうなぁ。最悪は、王女に許可をもらって……。なんだか、こういうのを妻に判断をゆだねる優柔不断な男像になってしまうんだよね。


 まあでもラクシェ王女だって、いつも僕といるって言うわけにもいかないだろう。婚約者だけれど、それぞれ時間を共有しないことだってある。そんな当たり前のことで、ウダウダ悩んでいても仕方がないと思う。行動あるのみ、と言う感じか。というか、すっかり忘れていたけど、僕を目の敵にしてると言う……、ミリャン第四王子だったか? 色々目論んでたのを僕がご破算にしたとか思い込んでるんだろうけど、僕は模擬戦大会で否応なく戦った後は何もしてないと思うんだけど。僕の思い過ごしか? 何かしたっけ僕。


 まあ、今頃はどうなってるのか知らないけれど、向こうに着いたら聞いて見ればいいか。



 ♦♦♦



 もう3月に入ったと言うのに、まだ寒い気温が続いている。彼は今頃どの辺まで来ているのかしら。言玉で言葉を送っても良いのだけど、あまり使うのもしつこい女だと思われてしまいそうで。気になってなんだか使えないし。そう言えば、最近陛下が言っていたけど、ミリャン義兄上あにうえをお見掛けすることがめっきり減った様な気がするわ。というか、戦勝のパレード以降で見てないように思う。


 なんでも、戦争の最中独断専行を行った罪で宮廷での軟禁状態が続いているとか。なんで戦争でそんなことしたのかしら。分からないけど、会う機会が減ったと言うのは私にとっては、良い状況と言える。それにしても私の婚約者は、武勲や功績があり過ぎて、違う意味で国の高官達を困らせているそうだ。でも、それで彼に相応の褒賞や報酬なんかを渋るようでは、我が国としての面目が立たないと、陛下や他の義兄上あにうえ達が漏らしていたわ。


 それに、王太后様おばあさま曰く、爵位と領地は何を与えるかは既に決めてあるから他の事を考えるんだね、と陛下や宰相達の焦りを煽るようなことを言ったらしい。彼からの手紙では、こちらへの到着は3月の10日前後になるだろうとの事。彼から3月に入る前に直接言玉で聞いていた私は、不自然にならないように喜んで見せたけれど、王太后様おばあさまは何となくだけど、私が秘密にしていることを察しているような気がする。だけど敢えて言ってこないのは優しさかしら?


 兎も角、私は日課になっている礼儀作法や、その他のお勉強をしっかりこなして、学院に飛び級で入れるようになりたいと思って努力している。彼もそれを望んでいるのは何となく察せられたから。できれば学年を一緒に彼と学院で学びたいと思うけど、私の能力では彼の足を引っ張ることになると思う。


 それと、つい数日前にユピクスの第二王女と婚約したと連絡を受け、実際にユピクスで彼が購入したと言う屋敷で、その人と会ったわ。彼と10歳ほど年齢が離れているのに、彼女はとても落ち着いていた。短い時間だったけど色々と話をして、あ、この人も彼の事を本当に好きなんだと感じることができて、納得してしまった。


 ああ、そう言えば、私は彼からお願いをされていたことを思い出した。私はそれを伝えに、父である国王陛下ではなく、王太后様おばあさまのところに伺いを立てに行く。



 失礼致します。王太后様おばあさまに折り入ってお願いがあってまいりました。私がそう言って部屋に入ったところで、王太后様おばあさまが私に椅子を勧めてくる。


「今日はどうしたんだい? あの坊やはまだ帰ってきていないと思うが」


「彼からお願いを受けていたのをすっかり忘れておりまして、陛下達は式典の準備でお忙しいようでしたので、王太后様おばあさまに相談しようかと」


「ほう? で、何を頼まれていたんだい?」


 王太后様おばあさまは、私が話す内容を飲み物を手に取りながら、聞き逃さないように尋ねてくださった。


「ふむ、この国の城下に城が欲しいと?」


「城ではなく、屋敷ですわ。王太后様おばあさま!」


 まぁ似たようなもんだろ、一国一城の主とは言わずとも、国の中に屋敷を持ちたいと言うのは中々言って、おいそれと出来る事ではないんじゃよ? 王太后様おばあさまはそう言った。


「資金は払うので、できれば大きめの屋敷で城や学院、市場にもいきやすい場所の屋敷があればそこを買いたいそうです。ユピクスでも同じような立地の屋敷を購入したとかで、交通に便利な立地の良い場所に屋敷があれば購入したいと」


「ほうほう。向こうでいくら稼いだか知らないが、こちらでも同じものが欲しいなんて、案外欲があるじゃないか? それともお前への贈り物かねえ?」


「そ、そういうわけでは……、あったら嬉しいのですけど」


 まあ、そういうことなら、私がいくつか調べて見繕っておいてやろうかねえ。主人がいなくなった屋敷も多い。屋敷を保たせる為の人員も必要だろうし、とりあえずは、屋敷が優先だねぇ。わかったよ、私の方でやっておくからまかせておきな。王太后様おばあさまはそう言ってカッカと笑われた。



 ♦



 念話でラクシェ王女からそんな話を聞いて、お礼を述べて労う。これからヘルウェンで住まう予定の屋敷は必要だ。宿舎での住まいも良いが今後の体面的に、そう言うのを良く思わない人もいるだろう。まだ、戦勝式典を終えなければ、僕はまだユピクスの人間であり、ヘルウェンにとっては一労働者でしかないわけだ。爵位はこれからもらうと言っても、自分の家くらいは持っておきたい。


 これは僕だけの問題ではなく、婚約者であるラクシェ王女の世間体も加味したことだ。結婚は先だけど、婚約者と住まう家くらい用意しておくべきだからね。さて、後は向こうでの式典と、その他の話し合いをする場面が、ある程度見通しであるくらいだろうか。


 従者はたくさんいるし、問題も少しずつこなしていけばよい。次に取り掛かるのはエルフ達の住まいだが、そろそろ森を自由に行き来させても良いだろうか? 報告では大した魔物は存在しないらしい。あー、そう言えばハニークイーンが住人に匂い付けしておくとか言ってたな。


 なんでも、僕の実家にスパイらしき人間が紛れ込んでいるらしい。住人名簿は作ってあるので、それ程困ることはないのだけど、一目で見分ける方法がそもそもないんだよね。カックシーのような魔道具の私用も考えたが、エルフ達の心情的にそれはダメだろうかなと躊躇した。ならば奴隷だけにでもするか? それなら問題はないが、何かしら仕掛けをしておかないと、似たようなものを作って紛れ込まれたらやはり問題だ。


 ご苦労なことに、そこまでして我が実家から何かしら技術を盗みたいと考えているのか、それともただの偵察か。恐らくは前者の目的が濃厚かな。村や街を作ったら、いや、作る前の段階でそう言うところはしっかりとセキュリティ対策をしたいところだな。何かそう言った便利なものはないものだろうか。


 そこでとりあえず何か案がないかと考えていた時、ハニークイーンが僕のところまで訪ねて来た。なんでも、進化したのに僕が一向に来ないからしびれを切らしてきたらしい。僕は君をテイムしたつもりはないんだけど……。まあ、それは良いとして。


そんな彼女は何と人間の子供ぐらいの姿形までなっていて、パッと見て蜂のコスプレ……、いや、子供が着飾ったような姿になっていた。だが、背中に羽はあるし、収納自由なお尻の付近に針があるらしい。僕が彼女の進化を見たのは結構前だったのだけど、触れずにいたのがまずかったかな?


「お主が全く我を構って……、いや、我のとこまで来ぬから、ちと様子を伺いに来た。我は匂いを付けた人間なら、ある程度離れた場所でもばすぐに分かるでな」


 それを聞いた僕は、ん? 僕にも匂いなんてつけてたの? と言うか、それって何かに使えないか? と頭に何かしら引っかかった。とりあえず、詳しい話を聞くと、ハニークイーンは、主と決めた者や仲間に、特殊な匂いを付ける習性があるらしい。例に漏れず、僕や僕の従者、それに他の蜂の仲間にもそれをつけているらしい。それを聞いて僕はこれなら使えるんじゃないか? と、マティア達錬金術師のクラスを持つ者達を呼んで、住民登録が可能な不正入手不能なものを作れないかと話してみる。


「ハニっちと、我々だけでもできると思うっすけど、どうせならラタルっちとリタールっちの協力を得たいっすな。ご許可頂ければ嬉しいっすよ」


「ハニっち、とは我の事か!?」


「勿論許可するよ。ただ、つけるところは首に巻くのが一番無難だと思うんだよ。エルフ達の事を思うと他の場所が良さそうだけど、作業中に取れたりするのはまずいし、腕や足だと判別できないからね」


「お主もスルーか!?」


「ご許可が出たので、早速取り掛かることにします。ハニっち、いくっすよ」


「ま、待て! わしはまだ――」


「後で時間作る様にするから、その時にゆっくり話を聞くよ。それまではよろしく頼むよ。期待してるから」


「ぬ~! 絶対だからなー!」



 ♦



 そんなやり取りをして、一体どんなものができるのか。楽しみではあるね。さて、次はやっとこさエルフ達の件だが、トモエや他の従者達が木々を移動させたり、道を開いてくれたりしてくれたおかげで、何とか形になった森とその整地された道。普通の馬車で通ってもそれほど問題がないようにしてもらったが。


 さて、エルフ達はどうしているかな? そんなことを思っていると、エルフの族長イアンテ殿から呼び出しを受けた。今から何かやるようだが?


「族長殿どうかされましたか?」


「ん? おお、オルクス殿か、来てくださったな」


「えっと、何か始まるんですか? 周りのエルフさん達から魔力が膨れ上がってますが……」


「この森に魔力で活力を与え、木々に成長を促すのだ。オルクス殿も良く見られると良い。他の方々には遠慮して遠ざかってもらったが、オルクス殿なら何の問題もなかろう。むしろ見てもらわねばと思う」


「秘術の類じゃないですか、そんな軽々しく見せられても」


 ふはは、と族長殿が笑う。エルフにしかできぬ術を、エルフ以外に見せぬのには理由がある。それは、御存じのようにそれを目当てに利用される恐れがあるからだ。そして、エルフの術を使える者に見せると言うのは、それだけ意味深な事である。我等は住まう地にその先民の長がいれば、許しを得て住まわせてもらう代わりに、木材を提供するのがエルフとしての、当然の行いではある。


 だが、その資格が相手にあるかは、接してみなければわからないものだ。だが、ジュロウが言うように、彼の同郷の人間で頼れそうな者に巡り会えたのは、あながち奇跡と言ってもよいだろうと思う。だから、オルクス殿にはこの場に来て見てもらおうと思ったのだ。そんな言葉で族長殿は締めくくった。


 信用を得たと思えばいいのか、され過ぎてると思えばいいのか、少し戸惑う場面ではあるけれど、族長殿が良いと言うのならば、他のエルフ達も文句はないのだろう。エルフ達が魔力を練り膨らませるように、魔力を織り成していく。その光景はどこか幻想的で、見ていてとても安らかな心満たされるものであった。


「これは凄い……、なんだか森が喜んでいるような感じがする」


「ほうほう、そう感じますかな? やはり良い感覚をお持ちのようじゃ」


 僕は何だか誘われるように、少し前に歩き出していた。意識はあるけど身体が勝手に動くような感じ。それを意識しながらも身を任せるように、地面に手を置いて腕輪の残りの魔力を全部使うつもりで、魔力を解放した。


「どよめきが起こるのは当たり前ぞ。これが、オルクス殿の力の一端か?」


「一端と言うよりは、魔力を溜めていたものを解放しただけですから、それ程驚くことはありません」


「な、そなたは……。オルクス殿の従者か?」


「はい、トヨネと申します。恐らく、蓄積していた魔力を全部使ってしまうのではないでしょうか。戦争が収まった状況下にありますし、使う機会もあまりないとお考えなのでしょう。オルクス様個人の魔力はそのままでしょうから、負担はないと思われますし」


「なるほどのう……、これ、術を最後まで掛けるのに気を抜くな、エルフとしての矜持を示せ馬鹿者! だが、良かったのかのう? オルクス殿が我等の秘術を使えるという事が、他の誰かに漏れれば大変なことになるぞ?」


「問題はありません、その時は相手によりますが……」


「なんとも物騒な従者殿じゃな。だが、それは道理じゃろうて」



 ♢♦♦♦



「久しぶりに魔力を使い切っちゃったよ」


 そんなへらっと笑いながらこちらに戻って来たオルクス殿。その驚愕する魔力量に、魔力に自信のあるエルフでさえも、見開いた目で彼を追う者がたくさんおる。


「オルクス殿も人が悪い。そのなりで、どこにそれだけの魔力を持っておるのか……」


「まあ、秘術を教えてもらったし、言っても良いかな。僕の着けてる腕輪には魔力を蓄積させておけることができる、言わば魔力を一時的にストックしておける魔道具があるんですよ。それが種明かし、戦争が終わってずっと使う機会が訓練にしか充ててなかったので、有り余ってたんですよ」


「ほお……。それにしても凄い魔力じゃった。先ほどの魔力は、期間にしてどれぐらいで溜まるのじゃろう? 詮索するのは失礼だが、ついでに教えてもらえまいか。わしに良い考えがある」


「3日から4日かな?」


「そんな短い期間でか!? いや、もっと長い期間かと思ったが……。それならば、我等が秘術をする際にサポートしてくださると助かるのう。昔なら1000人以上いたエルフが3分の1になってしまった。秘術をまだ使えん者もおるでな。だから、納入する木の量を少し少なく見積もっておったのじゃが」


 でも僕はそんなに暇を持て余してるわけじゃないんだよ? そんな事を言ってくる彼に、月に2回か3回で良いので頼めないか聞いて見る。


「暇を見て帰って来た時に、そちらも時間があるなら一緒にという事でどうです?」


「おお、それで良いとも」


「でも、やり過ぎると木々達に負担がかかるし、その辺はそっちで調整してもらえます? なるべくその指定日の前後には戻る様にするので」


 なんと、我らエルフよりも木々の負担を心配しているとは……。彼は生まれてくる種族を間違ったのではないだろうか、とさえ思えてしまう。彼にならついていって問題なかろう。彼がその生を終えるまで、我らエルフの安住の地が彼のいる場所にあるという事だ。ありがたい事だ。



 ♦



「3月の終わり頃か……」


「……オルクス様の誕生日ですか?」


「そ、何故か前世と同じ日が僕の誕生日なわけ。だからどうしたと言うわけではないけど。この世界で初めて一年を迎えるわけだ。勝手気ままに領地運営だ、開拓だなんて言ってたけど。一年を無事に迎えられたら、僕はまた一歩、先に進めるんだろうか。いずれは大人になって、子供に恵まれたら良い余生を送れるだろうか」


「主様は、オルクス様はまだ5歳の身です。6歳を迎えられる前に、先の事など考え過ぎると、また足元がおろそかになります。それをお支えするのが我々ですが……。仲間も増えましたし、貴方様にはこの世界を楽しんで頂きたいと言うのが、我等従者の望みですので。今度は我等を置いてどこかに行くことがございませんように」


「わかった。トヨネの手厳しいお小言が聞こえる場所に、なるべくいるようにするよ」


「それはどういう――」


 トヨネが僕に聞き返す前に僕はその場を走り出していた。その気になればトヨネの瞬発力にかなうはずもないのだけど。トヨネは何故か追ってくることはなかった。ただ、呆れたように溜息をついている様ではあったけど。



 ♦ ♦



 エルフ達はそれから森での生活を始めることになったが、全員がと言うわけでもないらしい。仮設テントが住みやすいのもあるのだろうな。まぁ自由にやってくれたらいいよ。程々にルールは村長殿と決めてあるからね。


 それに奴隷達との交流もしてもらうのが大前提なんだ。以前のような閉鎖的な考えは捨ててもらわないといけないな。でも、彼等の文化だってあるんだからそこは彼等のテリトリーであり、誰も置かせない部分だ。人間で言うところの人間味と言うか人格を尊重しなければね。


 それと、マティア達に頼んでおいた。領民の見分けで試作として頼んでおいたものだが、首に付けておくと匂いで判別できるものらしい。加えて、印となる首に巻くチョーカー同士を近づけると淡く光る仕組みである。これなら似たようなものを作っても、二重の意味で見分けがつけられる。


 どう言う意味かと言うと、匂いに関して見張りをするのはハニークイーン率いるハニービー達であり、それで不審者とされた者は、組織した兵隊でチョーカーを調べるという事。ハニービー達が集落を飛び回っているのは、すでに周知されているし、彼等の納品する蜂蜜は上質な甘味であり、奴隷達の食事にも出される趣向品だ。だから、奴隷達はハニービー達を恐れないし疑わない。彼等が不審者と言えば、その相手はどんなに姿形を化けていても、奴隷になりきっていようと、言い逃れはできない不審者となる。


 この仕掛けを公表する前に、一度不審者をこちらで補足しておき泳がせておく。そして、早速不審者の取り締まりを行ったら、見事数時間で不審者を見つけることに成功した。それも泳がしていた4人全員である。この結果に満足した僕は、早速ハニークイーンを呼び出し、今後の打ち合わせと言葉が喋れるハニービーの一覧の作成を依頼した。それから彼女達の立場を改めて認めることで、彼等の自由な行動と、金銭のシステムを教えることで、給料や物資の購入等、人間に依頼できることを決めて彼女等が、その働きに見合った対価を求められるようにした。


 とりあえず捕まえた4人に関しては、僕の預かりとして、僕の仮設テントの横に頑丈にこしらえた地下牢へ、いつ作ったんだよそんなの、とは言わないでほしい。いつか何かしら地下室って言うのは使えるだろうと思って、従者達にこしらえてもらっておいたんだ。そこで、捕まえた4人を閉鎖された空間に閉じ込めておく。彼等が精神異常を起こしたところで僕にはなっけいないからね?


 残酷? 馬鹿いちゃいけないよ、人の領地に無断で入り込んできた連中に慈悲なんてないよ。このことは、母上達にも今暫くは秘密にしておこう。彼等から抜き取った記憶を辿れば、誰が僕の敵なのか、何が目的なのか、そう言うのが見えてくるってものだ。それは追々活用するとして、今は手柄を立てた者を労おうと思う。


 うちの領地は蜂を雇ってますよ。と大々的に触れ回ることはしなくても、うちに来ればそれが普通であるとすぐに分かる様に御触書や案内をすることも忘れないように徹底させる。決まりごとが増えて互いに負担があるだろうが、それは慣れればどうと言うことはない。そう言う意思の一致で話を付けた。


 そろそろ、この集落も村として機能させても良いのかもしれない。それに集落か村かは兎も角、名前をそろそろ付けても良いのではないだろうか。そんなことを考えている内に、僕の自家用馬車がヘルウェンに到着する日が来た。

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