第83話

 ヘイリー王女、彼女だって疲れているはずだが、ついてくると言われた以上同行することは問題ない。が、あれだな。国王陛下がいくつか見繕ってくれた屋敷と言うのは、基本的に家の相続人がついえたか、お金に困って手放したか、後は犯罪者として財産を取り上げられた者の家だったりする。


 そう言うこともしっかりリストに載っているのだから行ってみたいと思うかどうかは内容によるだろう。だが、しっかり家を保たせる為に、定期的に見回りや掃除を行っている屋敷と言うのは安心できるところだ。見に行ったら蜘蛛の巣だらけだったとか、ホラーハウスさながらの屋敷だったりはいくら僕でも嫌だ。


 さておき一軒目の屋敷に到着する。ちなみに屋敷を一軒一軒案内してくれるのは、屋敷の管理等を全て請け負っている部署の人だった。まだ若いように見えるが、僕から若いなどとは絶対に言えない事だ。


 そして一軒目、割りとシンプルな家だがその家の広さと庭や噴水などが並ぶのを見て、管理をしっかりしないと大変そうだと言うのはすぐに分かった。ちなみに僕に使用人はいない。トヨネ達はガーディアンであり、信用のおける従者だが、彼等を使用人としてだけに留めるなんて問題外だ。普段の生活だけならば問題はないけれど、必要な時にすぐ動けることが望ましい。


 屋敷にはレムルのような使用人や、ビジルズのような家令か、執事が必要だ。それも王家にすがれば信用できるものを用立ててくれるだろうが、その辺は自分達で何とかするのが良いだろうおと思う。頼るところは頼るけど、おんぶに抱っこではねぇ。人材を集めるのにどうやればいいかなんて、結構面倒な感じがするけど。この辺を甘くすると他家のスパイとか入ってくるし、信用ならない相手を入れると、僕が知らない間に不正とかする可能性もある。


 まあ、言えば切りが無いのだけれど、どうしたものかな。うーん、実家と陛下に相談だけはしてみるか。方法くらいは聞いておくのがよいだろうと思う。



 で、だが。屋敷を一通り見ても立地も良いし広さもある。何かあった時に避難できる場所もあるし、地下室もあるようだ。これって貴族の家に必要不可欠なのか?


 確か、カックシーの屋敷でも地下室はあったし、後ろ暗いことをするなら御誂おあつらえ向きではあるがねぇ……。一通り見た後、ヘイリー王女の感想を聞くに、城から少し距離があると言うのが、少し不満点だったらしい。なるほど、彼女は王女であると共に宮廷魔術師でもある。何かあればすぐに現場に向かわなければならない身だ。


 今度はそれを考慮した屋敷を見て回ることにする。



 ♦



 これで7軒目だが、漸くここなら良いかもと言いだした、我が婚約者殿。僕はもう基本的な部分だけ抑えられていれば、後は従者達が勝手に魔改造するだろうと思っているので、何も言わないことにした。ただ、何も感想を言わないと彼女がむくれてへそを曲げそうになるので、とりあえず納得したように相槌を打つ。


 そして決まった屋敷なのだが。実家の3倍はあるでかさだ……。しかも、何故か隣の家も空き家だったので購入することになった。これ使用人何人が必要だ? 使用人の別館もあるし、屋敷とは別にこじんまりした小さな屋敷もさらに別館としてあるのだ。これの下の持ち主は、あー相続人がいなかったわけか。ならば特に言うことはないな。曰く付きの屋敷以外ならば基本的に、僕は特に気にすることはない。


 ちなみにここから城へは一本道で行けるし、学院や図書館にも都合が良い通りに面した屋敷だ。それに道を変えれば市場や工業区への道にも繋がっている。僕は基本的にこの街に住むのは結構先になるだろうと思うし、使用感としてはヘイリー王女に合わせて購入した方が良いだろうと思う。あ、勿論屋敷は購入だよ? あげると言われたけれど、それでは申し訳ないし、国税を圧迫すると言う意味合いでもお金を出した方が、個人の気持ち的に楽なんだよ。


 ただ、家具や調度品などは王女の方で手配すると言って来た。男の甲斐性というもので、お金は出すけどと言ったのに、親に甘えておくところは甘えておくのも子供としての義務だと言われた。まあ、そう言う考えもあるかと納得した。僕も少しは甘えた部分を出した方が良いのだろうか。


 家を決めて後はいつも通り帰るだけだ。ヘイリー王女も気が済んだことだろうし僕としても何も言うことはない。そしてあと数日もすれば僕はこの国を出てヘルウェンへと戻らねばならない。少し寂しい気持ちはあるけど、言玉やポータルを預けておいたので、いざと言うときは何かしら言われるだろう。


 ちなみに、僕が渡している魔道具を持っていることは、国王と王妃、それとヘイリー王女で共有してもらった。親子の問題だから僕がとやかく言うことはないし、縁が無ければ教えることもなかった。ただそれだけなんだよと伝えてある。


 さて、今日はもう21時前だ。寝床に入ってから寝るようにしないとなぁ。



 ♦



 今日も今日とて3日目、僕は宰相様と机を挟んで話し合いをしている。宰相様も時間には限度があるので、それを分かった上で話を進める心積もりだ。


「そなたが賜る領地はフィナトリーと相成ったわけだが、どのような場所かは知りはすまい。過去には巡察使じゅんさつし按察使あぜちと言ったものが管理していたが、現在は手腕の期待できる代官に任せたりが一般的だ。貴殿が管理能力がないか、管理できる体制にない場合はそのまま続けさせるがどうするかね?」


「管理の継続をお願いします。自分で考えたやり方を試したい気持ちはありますが、何も知らないのに口を挟んで、その領地のバランスを崩すようなことは望ましくないと考えます。それに、一つにはエルフ達の移住を視野に入れた動きと、その他の事は可能かどうかを調べる方が先です。その代官殿には申し訳ないのですが、準備を整える時間を頂きたく思います」


「ふむ、先ずはそれが良かろう。領地との連絡は伝書鳩を使うが良い。荷物があるなら信用できる者に届けさせるが……、ああ、そうか。そう言えば、もう数日後にはこちらを発つのだったな。連絡手段はどうすれば良いか……」


「そのことで一つご相談が」


「遠慮なく申してみよ。ある程度の事は叶えられるように取り計らう故」


「私の従者にペガサス乗りと飛竜使いがおります。伝言や荷の配達、必要物の行き来はその者に任せようと思っております」


「なん、と……、いや、大したことでは驚かんつもりだったが。それは真か?」


「こんなことで嘘など言いません。お願いしたいのは竜の発着所をこの城のどこかに、永続的にお貸し願いたいという事と、フィナトリーの代官殿にも発着ができる場所の確保をお願いしておきたいのです。基本竜は一日二日で大抵の場所を飛び回れます。なので伝令にはもってこいなのですが、いかがでしょうか?」


「そうさのう……。異国にその様な国があるとも聞く、そのペガサスや飛竜がしっかりとしつけられていて、周囲に被害を出すようなことがないと分かれば、許可を出すことはやぶさかではない。ただのう……」


「そんな便利なものを独占していては問題だ、そのようにお考えであれば、定期的にこちらで使わない非番の時は、そちらの都合を優先させても構いませんが?」


「やはりそうきたか。有体に言えば、国で共同管理しているから、周囲には問題視するなと周知させろという事だな?」


「さすがに話が早くて助かります」


「しかし……、困る。困るのう」


「何がでございましょう? ああ、食事でしたらこちらで用意するので問題はありませんが?」


「そうではない。ペガサスや飛竜などと呼ばれるものが国を行き来するのだ。それを国内で周知させるのは問題ない。が、どうやって手なずけたのか、どのように入手したのか、水掛け論になるだろう。すぐさまそう言う話が出てくるはずだ」


「なるほど。では、このように仰ってください。ダンジョンで卵を見つけ育ててみたら、生れ出たのは何とペガサス、あるいは飛竜の子であった。それを密かに育てて飼いならしたのが私の従者であると。説得力は薄いですが、話のそらし方はいかようにでもできます。同じことが可能ならばと、ダンジョンに人がなだれ込むでしょう。そうなればギルドも冒険者も、私兵も傭兵も動くかもしれません。人の持っているものを欲しがるのは人のさがですから。人気のないダンジョンにて、その噂を広げれば相乗効果を生み、お金の流れが出来上がるかもしれませんね」


「お主、本当に……。いや、陛下でもう懲りていると言うのに、この年で驚かされる身にもなってくれんかのう。一体お主は何手先を見るのだ? その思考はどのようにして形成されるのか、わしはそれを知りたいわい」


「ウルタル殿下にも言われましたが、その時の私は“必要なところまでですよ。どこまででも、は無理ですけど、ある程度ならば予想可能ですから”とお答えました。それでご納得頂ければ幸いです」


「良い良い。聞いたわしが悪かったわい。報奨金については、色々と決めた中で額を小さくする代わりに権利を主張する。お主は本当に他の貴族とは違うな。普通は報奨金をもらえるだけもらうのが普通だと言うのに。それを物流やら、商品の所有や独占、それに製造権や著作権に、無形や有形固定資産などの権利の方が、目先の金よりも大切だとは恐れ入る。それを有効的に活用する下地も作り始めているのだから、こちらから疑問を言う隙などないわ」


「目先のお金よりも、先を見越した施策は早めに確保したかっただけです。戦争が頻繁に起こるならば、また功績を挙げてしまえばいいだけと思いますが。恐らく早々戦争は起こらないでしょう。捕まえた人が王族ですし」



「まあ、お主の言うことは尤もだ。それにお主の事だから、有言実行できるのだろうだからな。だが、確かにダンジョンを利用すればペガサスや飛竜の卵が手に入るかもしれない。その話に踊らされる者等が可哀そうでならんが、必要悪と思えば仕方なしじゃろうて。ちなみにそのペガサスや飛竜はこの後見せてくれるのだろう?」


「ええ、お望みならばすぐにでも」



 ♦



 これが飛竜にペガサスか……。宰相様が見て呟いた竜は背丈にして、成人男性の約4倍ぐらい、もっとあるか? 青く全長で20mと結構な大きさである。手足と翼が独立しているタイプの飛竜と全長が3mの白いペガサスだ。確か本で読んだワイバーンなる亜竜種は全長5mから10m前後と約この竜の半分と言ったところか。それにワイバーンは手と翼がまとまっているのが特徴的である。ワイバーンもテームすれば使役できるとは本で読んではいたが、この目の前に飛竜は、僕が呼び出したガーディアンと一セットなので、基本は食事も魔力で補うこともできる。ただそれなりの魔力の燃費は必要とするけどね。


 ちなみにガーディアンの名前はテコア、飛竜の名前がコルチールだ。僕の従者リストにあった飛竜乗りを数名呼び出しておいた。これで、ポータルを使った際の言い訳も緩和できるし、運用に文句は出ても実用的なものを捨てろとは言うまい。寄こせとは言ってくるだろうが、僕が12歳になった際に爵位が上がることは周知されている。現状で伯爵だからと言って無理難題を言ってくることはないと思う。そう言う馬鹿な事を言う奴には、僕からでも国からでもお灸をすえる手はずである。


 僕がコルチールに手を上げてやると、顔を擦り付けてくる動作をしてくる。それに近くには馬達もいるが、最初は怯えていたのにコルチールが声を上げると、何か知らないが落ち着いたらしい。テコアが言うには、威嚇などしないし襲いもしないと動物達に告げて示したらしい。


 さすがに元は成長する動物型AIなのだ、とてもお利口である。それを見た宰相様は、問題なさそうだな、と僕に発着所の許可をくださった。それに、飛竜の体型にあった装備を無料で作ってくださるそうだ。報奨金を約半分以上は受け取らなかった僕に対しての、せめてもの行いなのだろう。


「契約書はすぐに発行させる故、そなたの移動する前には準備させる。それと、これは以前からあったことで覚えておるかどうかわからんが、そなた宛に届いていた手紙の類をそろそろそちらで処理してもらいたいのだが、新しい屋敷に人手がいないと聞く、人は派遣する故そなたの屋敷に移してもよいだろうか?」


「あ……、面目ないです。ずっと頼りっぱなしで」


「構わんよ、忙しいのは分かっておるし、人手の手配は王女殿下と相談して候補を決めておこうか? そう言う派遣のギルドと言うのは存在するし、勿論信用できる者とそうでない者の判断は必要だが、必要ならばわしからも要請を出しておこうと思う。最終判断はそなたと王女殿下ですればよい」


「何から何までお世話になってばかりで、感謝の言葉もございません」


「気にすることもない。何しろここだけの話、ヘイリー王女殿下はその思想や人柄故に一生独身かもしれんと思っていたのだ。それが棚から牡丹餅的な感じで、そなたと婚約した。そなたには感謝こそすれ、恨むようなことは一つもない。国益になる様に後は動いてくれれば、それでわしは肩の荷が下りるというものだ」


「宰相様にはまだま、これからも国を見て頂かなくてはならないのに、まだ肩の荷を下ろすといわれるには早いと思われます。御用があれば私でもできる仕事は担いますので」


「覚えておこう」



 ♦ ♦



 さて、大抵の仕事は終えたのだが、いや、仕事と言うか報酬や褒賞の取り決めの話し合いだ。それを終えて僕の懐はプラスマイナスで言えばプラス寄りだ。屋敷は資産になるからね、そういう意味でもプラスなんだよ。


 後は特に大したこともする予定はない、ヴァーガーのところに顔を出すくらいで後は、ヘルウェンへ戻るだけか。ヘイリー王女には屋敷の事は大抵任せると言っておいた。それに移動手段が増えたことで、結構会う頻度もあるかもしれないとも言ってある。


 と言うかあれだな、ヘルウェンにも屋敷を構えておくべきかな? その辺はモイラアデス国王陛下に話を振った方が良いのかな。まあ、開いている屋敷があるかどうかもわからないのだから何とも言えないか。資金は結構あるのだし、買ってしまって管理は任せる相手も探すのは骨が折れそうだ。


 と、そんなことを考えていると、ヴァーガーの商店に到着する。そしていつにも増したテンションの高さでお出迎えされるわけだが。変な称号がないか逐一チェックしてる僕って一体……。


 さておき、奴隷をちょくちょく買いに来ている僕に、逆指名で引き取ってほしいと言う奴隷が来ていると話を聞いた。どこの誰がそんなこと頼んだよと思わなくもないが、称号を見たりステータスを見たりした限り、スパイだよな……。明らかにスパイだよ。しかもこれでもかってくらい多く来てるし。どこの誰からと言うのは普通は秘密であるらしいが、こっそりリストの余白に名前が書かれている。ヴァーガーもその辺は商売人としてではなく、人格者として信用できると言うことかな。


 勿論そんな人間達を買う予定はないし、無駄金をはたく気はない。だけど情報としては後で敵対するのか、ただの情報収集の為なのかは、ヘイリー王女にお願いして調べてもらおうと思う。


 数名を購入して、実家からの馬車を待って回収してもらう予定である。手段としては飛竜が使えるようになったので、馬車を飛竜に運んでもらうなんて方法もあるが、まぁその辺はどうとでもできる蛇足的な事だ。


 結局僕は屋敷を購入したが使うことはなく、城の宛がわれた部屋で未だ過ごしている。落ち着いて過ごせるのはいつになる頃だろうか。そんなことを考えながら雪の降る窓の外を見る。早ければ4月の初め頃には少しずつ春の訪れを感じさせてくれる気候になるのだと聞くが、まだ外は暗がりに横殴りの雪が見える。


 明日出発という事で、晩餐を王族方と一緒にしたわけだが、なんとも和やかな食事会であった。というか、みんな忘れてることだろうけど、王妃に毒入りのお菓子を送った相手って誰だったんだろうか。僕は知らなくても良いことなんだろうか。それは兎も角、ヘイリー王女に追々聞けばいいことだろうと思う。


 明日もあるし、そろそろ寝るとするか。そんなことを想いながら布団に潜り込むと、少し肌に冷たい布の手触りに、一瞬ピクリとしてしまった。ただ、少しずつだがそれに慣れてきた体温が、僕の眠りを誘い深く沈ませていった。



 ♦



 翌日の朝、ヘイリー王女達と別れを惜しみながら、馬車に乗ってヘルウェンへの道を進む僕の馬車。ああ、古巣を離れるようなそんな心境が微妙にわいてくる。すぐ戻れる手段はあるのだし、連絡だってすぐにできるのだ、チート魔道具万歳。それで片付く問題なのだから、今は先に待つヘルウェンでのことや、実家に移住させたエルフ達の事に思考を割こう。


 馬車はどうせ6日間の移動中は誰も来る予定はないので、ポータルで実家に移動して用事を済ませることにする。


 まず手始めにガーディアンの数を、今の3倍にはしておくことが望ましいか? 3倍って何故か響きが良いからね。これと言った大した意味が無いけど気分的な問題だ。というか、訓練以外で魔術を使ってないので、蓄積した魔力が十分すぎるほどある。これなら、召喚に必要なコスト次第では全員呼べるんじゃないかな? でもまあ、何が起こるか分からないから使い切ったりはしないけどさ。それでもトヨネ達が用意した、必要とされるガーディアン達を呼び出すのは問題ないだろう。


 とりあえずは10人、メイド部隊と言っても過言ではない。トヨネ達のような万能タイプの従者を10名呼び出し、それぞれについている名前でさすがに問題がある者は改名させる。あまり必要と言う意味で彼女達を従えていなかったプレイヤーがいたのだろうな。さすがに初期状態の者もいるな……。彼女達の能力値をもっと大幅に上げてやった方だ後々、何かあった時に役立ってくれるだろう。僕はとりあえず、メイド型AIの彼女達を最初の10人から3倍に増やした。


 いや、あのね? リストに載っている数がおかしいのさ。僕に問題があるわけじゃないよ? メイドに囲まれたいとかそう言う願望はほんの少ししかないからね? 兎も角、彼女達にはバージョンアップに必要なアイテムを持っていなければ、渡してあげることにする。これはGMゲームマスターとしての特権。アイテムの複製で、人数分を用意できる。もう滅茶苦茶だなって? 今更だよ。


 これで約30人のメイド部隊が整ったわけだが、彼女達はトヨネ達と違いLVレベルを上げたことがないんだ。なので、久しぶりに以前行った“数の暴力”や効率の良いダンジョンを利用しようと思う。それはまた追々であるが、他に椿や小春のクラスを、これも30人程だが増やしておくことにする。名前は漢字寄りに少し偏りがあるな。さすが前世の日本でくノ一として扱われたガーディアン達だ。勿論、女性だけじゃなく男性も忍者として存在するよ? 女性ばかりと言うのは、変な風評や勘違いされるのが嫌だしねぇ。普段はメイドや執事として動いてもらえばよいか。


 他には飛竜にペガサスを使役するクラスを全部出しておこうか。それ程数も少ないしね。後はグレイス狙撃手ケンプ拳闘士のクラスも少ないがいるな。数が多いのはルルス魔術師マティア錬金術師セシル神聖術師のタイプのクラスかな。実は他にもクラスは存在するのだけど、ついでにと言うのは失礼だが呼んでおこうか。


 オルペは男性でクラスが“騎士”、剣と盾を使うオーソドックスなスタイルだ。この世界ではよく見かけるタイプかも知れない。次にキヨハは女性でクラスは珍しく“ルーンマスター”である。主に魔術の陣や文字を描きつつ使う、魔術師に近いクラスである。続いてテミウスも女性、彼女は“召喚術”を使う。僕と似たようなクラスだ。ただ、呼べる召喚は獣であり、その種類は様々だが基本的に動物に類するものが多い。ルドラトは男性で、クラスは“剣士”。この世界でも使われる剣の二刀流なのが特徴で、その太刀筋は基本が攻めの一手の連撃である。


 そして、ツブキと言う女性ながら小太刀と刀の二刀流の侍。その特徴は剣士の連撃に通じるものがあるが、刀と言う武器を使う為に、防御にも優れた力を持っている。太刀筋で攻め寄りの守りが可能なクラスである。当初、さむらいと剣士を区別するかどうか、前世の僕等はそれを悩んだ記憶がある。結局は区別すると言うことになったのだけど。剣士と騎士、それに侍については、AIが結構個性があるのが面白い結果となった。彼等の同じクラスもそれなりにいるが、召喚しておくことで後々役立ってくれるだろう。


 そして最後に、GM専用にクラスを作ってもらって、プログラマーやデザイナーからプレゼントされたのが、ラタルと言う女性AIでピクチャーマスターと言う、オリジナルのクラス。明るい緑と髪と青い瞳、で僕を見る彼女は、所謂“絵画作成、及び絵画操り師”と言うのが彼女の特殊クラスだ。それともう一人、リタールと言う女性AIで、彼女もオリジナルクラスの“マシーニスト”。くすんだ茶色い髪に、赤と黒のゴーグルを付けて白っぽく見える瞳の彼女は、所謂“工作機械熟練工”であり、“機械運転者”でもある。前世では僕のサポートを良くしてくれた二人だ。


「マスター、漸くお会いできた。姿形は違えども、貴方はマスター。私はまた共にいれることを嬉しく思う」


「元気してたかい、マスター? 私達の力が必要になったってとこかね。あたいも会えて嬉しいよ」


「僕も嬉しいよ。それぞれ、先に召還した従者達と情報を共有してほしい。伝えたいことは山ほどあるからね」


 ここまでで約100人以上は召喚を繰り返しやっていると、腕輪の魔力もさすがに5分の1になってしまった。この辺でとりあえずはやめておこう。最初に3倍って言ってなかったか? なんて野暮なことは聞かないでほしい。調子に乗ってやったらこんなことになった。そんなありがちな事だよ。お前は変なところで計画性がないなとか、衝動買いに走るな、なんてよく同僚には言われたことはあるが、必要だと思ったのだからいいじゃないか。


 ヘイリー王女には、とりあえず従者を購入した屋敷に移す旨を伝えておく。いきなり押しかけていったら問題だからね。ただ、購入した屋敷を何故かさらにリホームするみたいなことを聞いていたが、それが終わったら使わせてもらえばいいだろう。


 それまでは、家の実家か集落でのんびりしてもらえばいい。時間があるなら、ユピクスのダンジョンで……。あー、冒険者ギルドから何か手紙が複数来てたのを忘れてたな。内容は大したことはなかったが、うちの女性陣が行ってまた問題が起きるのは嫌だな。とりあえず男性陣と合同で登録をしてもらうようにするかね。

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