第2話

 僕の名はオルクス・ルオ・ヴァダム。5歳になったばかりの男児だ。今僕は大事な話があると呼ばれ、お母様と共に屋敷の大部屋にいた。目の前には鎧をまとった兵士が顔色悪く片膝をついている。その兵士は領地の警備巡回で屋敷に何度も出入りしている男性で、がたいの良い体格をしているのに、今の僕にはとても肩身狭く小さく見えた。そして、お母様が兵士に報告をするよう促すと、兵士は堅い口調で次のように告げた。


「申し上げます。ご当主様、隣国との戦で敗戦し、討ち死になさいました」


 僕はその言葉が理解できず思わず聞き返す。


「ご当主って、……お父様が死んだ?」


 お母様は僕の言葉にかまわず告げる。


「そうですか……、もう少し詳しい内容はわかりますか?」


 お母様は毅然きぜんとした態度をとって兵士に尋ねていたが、わずかに手が震えていたのがわかった。


「はい。戦で敗戦し撤退するウルタル第二王子の安全を優先するため、殿しんがりを努め、敵の数に圧倒されながらも時間を稼ぎ、……後討ち死になさいました」


「そうですか。報告御苦労でした」


「はっ」


「そんな、あのお父様が死んだ……」


 ――バタッ。


 繰り返された報告に僕の意識はそこで急速に途切れ闇に落ちた。




「奥方様、オルクス様にはまだ早かったのでは?」


「いずれ知ることです。それに、あの子は次期当主。子供といえど乗り越えるべきことです。それに今は、情勢や領地のことに悩まされなければなりません」


「それはそうですが……」




 ♦



 僕が倒れてからも、当主であった父ルオ・ヴァダムの死後、日々は慌ただしく過ぎ去って行った。その間も寝込む僕は心配されていたが数日の日付が過ぎた頃、ようやく閉ざしていた目をゆっくりと見開いた。





「俺、いや僕は……、そうか、これが転生の影響か。思った以上に記憶の錯乱さくらん混同こんどうが激しいな。僕が眠っていたのは、魂と記憶、その両方を混ぜ合わす為か?」


 僕は刺すような痛みと鈍い痛みの組み合わさった頭に手をやり、オルクスとして見覚えがあり、菅創也としては初めて見る天井をぼーっと眺めていた。しばらくして頭痛が治まりつつある頭で身体を起こし、オルクスと菅創也の記憶の併合へいごうが正常にされているか思考を巡らせ探る。そこでふと頭にやった手の腕に見覚えのあるものがあった。それは銀色に淡く輝く腕輪である。それを見て、僕は記憶を手繰り寄せて言葉にする。


「今の僕はオルクス・ルオ・ヴァダム。名前と家名の間のルオは父の名か。12歳までは保護者となる人の名前が、自分の後に付くらしい。現在の年齢は5歳で、これは女神様に要望を出した通りだな。それと、記憶によれば僕には兄弟がいるようだ。兄弟は3歳くらい年が離れた弟に妹がいる。

 そして僕自身は男爵家の長子で跡取り息子か、父親が戦死したとか言ってたか。記憶が併合したせいか胸にくるものがあるな……。はあー、情報は少ないが時代レベルで言えば地球で言うところの中世前後といったところか? 後は実際に見て調べてみないとわからないが……。そしてこの腕輪、女神様は約束を守ってくれたらしい。ほんとにこれは、僕にとってご褒美といってもいいくらいだ」


 だが、いつまでも現状確認ばかりを、延々しているわけにもいかないだろう。何と言っても現当主である自身の父親が死んでしまったのだ。呑気に寝ているよりは、現状を知るために情報を集める必要がある。僕は近くにあった呼び鈴を軽く鳴らし、誰かしらに自分が起きたことを知らせるべく呼び出す。


「お、オルクス様! お気づきになられたようで、本当に何よりでございます!」


 部屋の扉を勢いよく開き入ってきたのは、メイド服を着た見知った相手だった。ただ、認識と意識がまだ不完全なようで少し戸惑いを覚える。ただ、顔に出さないように相手をうかがう。


「レムルか、心配掛けたみたいだね。さっき気がついて起きたばかりなんだけど、僕はどれ位の間、気を失ってたのかな?」


「は、はい、お倒れになってから3日程寝た切りになっておられました」


 今までこのようにしっかりと話すことのなかった僕に、多少の戸惑いがあったのか、レムルは少し間を置いて聞かれた質問に丁寧に返してくれた。


「3日か、結構経ってるんだな。お父様が亡くなったと聞いたけれど、お母様はどうしてる?」


「はい、ビジルズさんと引き継ぎをされております。明朝より王城に向かわれて国王様にお目通りされる予定です」


「国王様と? とりあえず、お母様と話がしたい。悪いけど早急に会いたいと伝えてくれるかい?」


「かしこまりました。すぐに」


 しばらくしてレムルが戻ってくると、了承が得れたと服を着替えさせられた。

 姿見の鏡に映る僕の姿は小学生の低学年くらいだろうか。いや、幼稚園児ぐらいだろう。目の色は青系統の碧眼で髪は金髪というよりは薄い黄色のクリーム色といった感じだろうか。光に当たると白く見える。


 しかし何時までも驚いてる菅創也の意識でいると、違和感が半端ではない。僕は早く慣れるためにオルクスの意識を前面に出すように意識を高める。それと少し気恥ずかしい気持ちもあったが立場が貴族ということもあって、レムルに着替えの手伝いをされる。というか傍目から見ても、これでは着せ替え人形かな。これが当たり前というものなのだろう、とこれも無理やり意識から遠ざけることにした。


 そういえば、気丈な様子を見せていた現世での自分の母親だったが、夫が帰らぬ人となって何も思わないでいるような人には見えなかった。何より手の震えを見てしまったのだ、あれは演技ではないだろう。気丈に振舞うのも貴族として、さらには母親としての務めなのだろう。僕はそのことを気に留めながら、母ビスタリアの元へ向かった。


 正直にいうと、この身体は少し動かしにくい。というか慣れていないから、大人の身体であった前世の感覚でいると、とてもではないが歯車がかみ合わない、そんな感じがする。兎も角、レムルが僕に合わせた歩速でいてくれているので、それに甘えながら、やっとの思いで記憶にある父親の執務室の前に到着する。


 ノックを短く3回、名を告げると入室の許可が来た。部屋にいたのは母上と家令のビジルズだった。


「お母様、いえ母上、申し訳ございません。報告の途中で見苦しいところを見せた上、今も時間をお取り頂いて」


「い、いいのよ? 無理もないことでしたもの。それで、……もう動いても大丈夫なの?」


 母ビスタリアは一瞬驚いた風な表情を見せる。倒れた僕が普段の振る舞いと違うことに気付いているのだろう。しかし、驚きを声に出さないように努めてこちらの様子をうかがっているようだ。ビジルズも同じような感じだろうか、いつも細めている目が若干良く開いている気がする。


「はい、母上が王城に行くとレムルから聞き、何事かと急ぎまいりました。王城へはどのようなことで行かれるのですか?」


「そうね、時間が無いので手短に話しておきましょう。ビジルズ説明を」


「はい、オルクス様、僭越せんえつながら申し上げ致します。貴方のお父上であるルオ・ヴァダム様は、戦死する前に王族であるウルタル第二王子を戦場より退却する時間を稼ぐため尽力し果てたのです。その役目の大きさは戦場ではかなりの武勲として功績あるもの。そして、その功績をたたえ、国王より金銭とは別に褒美をたまわることになったということです。それを受け取りに、明朝ビスタリア様は屋敷を出発し王城へ向かわれることになっております」


「本当は褒美よりも……」


「奥様、お気持ちはわかりますがそれ以上は……」


「っ! ……そうだったわね。それで、王城へはさっきの理由で褒美として金銭と可能な範囲で願いをかなえると伺っているわ。どうしたものかしらね……。いきなり手紙でそのように言われてしまって、とても困ってしまっているのよ」


 やはり母上は気丈に振舞っているだけで、父上の事をとても想っているようだ。恐らく子供に弱い母親を見せたくないのだろう。なら僕のすることは、この生涯で母上に安住を提供することだろうか。それとも……。いや、今は目先の事を片づけることからするべきか。


 金銭については助かるが、可能な範囲の望みというのが悩みの種らしい。そこで僕はハッと頭をよぎる確固たるものに思い当った。僕がどうしてこの世界に転生したのかと。


 突然だけど、”街づくりゲー”や”箱庭ゲー”といったサンドボックスゲームのシミュレーションジャンルをご存じだろうか。やったことがなくても、いくつかのタイトル名だけは知ってるって人もいるかもしれない。その中でもVR(バーチャルリアリティ)とRTS(リアルタイムストラテジー)が合わさり深化しんかしたゲーム。


 僕はそのジャンルのオンラインゲームを手掛けていた一人だ。そして僕は悔やんでいた。その手掛けていたゲームの運営会社が突如とつじょとしてサービス終了を宣言した期日、その日になって宣言通りゲーム自体が終了してしまったからだ。度重なるゲームの復帰や継続を署名や嘆願書でうながしても、運営会社は聞き入れず、ゲームの権利を手放すことなくそのゲームを永久に停止させた。


 プログラマー兼ゲームデザイナーとしても、ゲームの管理者であるGM(ゲームマスター)としても長年たずさわってきたそのゲーム『ドミネーション・チョイス』は、長寿番付でも上位に組み込むだろう30余年という年月を終えて永眠した。そして僕も会社の決定に悔みながらも半強制的退職を迎えた後日に、脳梗塞(実際いには原因不明)にかかり全身の殆んどを動かせなくなり病院で余生を送った後、息を引き取った。


 これはもう運命とかそういうレベルじゃなく、あの女神様がそうさせたのではないかとさえ思ってしまうほどの意図を感じた。いや実際は僕の勝手な思い込みかも知れないけど。だけど、かまいやしない。僕の記憶の中では、領地の開拓はあまり進められていないらしく、国も各地の隣国から嫌がらせのように頻度高く攻められて、我が国の政務が落ち着かないと父親のルオが話していた。これは使命だ。そうに違いないとさえ思える。現に僕には、腕輪の支給が認められたのだ。そう思った僕は記憶をできるだけ探り思い出すと、息を一つ置いて母親である目の前の女性に進言する。



「母上、この際に、領地の開拓に踏み切ってはいかがでしょう。父上と話していたときにも、この領地の近隣にはまだ未開拓な土地が多くあると聞きます。父上は戦争が終われば領地開拓もしたいと仰っていました。ですので、その土地の権利全てをこの度の褒美として頂いてはいかがでしょうか? 山と森を開拓すればいずれ何かしらの役に立つと思います」


「貴方の考えは先々では良いのかもしれない。だけど、今はルオが死んで、おまけに頼りの我が領の戦力がかなり落ちているのよ。残念だけれど、その話は少し考えないといけないわ」


 僕は大雑把にではあるがこれからの方針を示してみた。だがしかし、母上の返答は色良いものとは違っていた。それはそうだろう、父上の死が、どれだけ我が家に負担としてのしかかるのかを考えてみれば、とてもではないが余裕がない、となってしまうのもわかる。それに理由はそれだけではなかった。


「それに加え、今回の敗戦で我が領の領民の人手も減っているのよ。だから、貴方の考えは、あまり得策とは言えないわ。あの戦は急に始まったのが大きな原因なのよ。それで領民からも民兵を募って参戦した。けれどその民兵も帰らない者が多いし。それに、魔物の被害もでるのよ? 私では家令のビジルズがいても領地の運営だけで手が回らず、とても杜撰ずさんな管理となってしまうでしょうし、今は特に時期が悪すぎるわ」


 ――魔物がいるのか!? 僕は内心驚きながらも平静を保ち、声と話に乱れがないように努める。


「いえ、開拓の指揮は僕がとります。金銭の報酬で必要数奴隷を購入しましょう。もちろん犯罪奴隷は入れず、戦闘奴隷を含めたその他のみで見つくろうつもりです。安心してください。奴隷といっても購入すれば自領の民として手厚く扱うつもりです。それと人手がほしい理由として副業を行うためです」


「貴方が開拓の指揮を? それに副業? 貴方はまだ5歳でしょ。それに魔術だってまだ使えないのに」


「(やっぱりあるんだな魔術……、魔法とは違い魔術と言われたのだ、後で調べておこう)それも考えてあります。これをご覧ください」


 僕はおもむろに腕にはめ込んでいる銀の腕輪を母上に見えるように掲げる。


「……それは?」


 母上やビジルズのいぶかし気な表情に、僕は疑念を持たれないように気を付けながら言葉を織り交ぜていく。


「これは、戦に向かわれる父上が選別にと言って僕に下さったマジックアイテムです。この腕輪は何故か僕しか使えませんが、いくつかの魔術が使えるすぐれものです。今からその魔術を使ってみますので見ていてください(嘘です。そんなものもらっていません! ごめんなさい!)」


「そ、そうなの? わかりました。……あの人、あんなもの持っていたかしら?」



 母上は息子の話に淀みがないため、疑念はあるようだが思ったことをぼそぼそと口に出しはしたが、とりあえずは、ビジルズと共に流れに身を任せるらしい。見せられた腕輪で本当に魔術が使えればそれに越したことはないし、使えなければ、それはそれで父親が渡したとなれば、それは形見となる。特に期待をするわけでもなく、夫ルオが渡したというマジックアイテムをかざす僕を見つめいるようだ。


 僕は母上とビジルズ、二人の様子を窺いながら、演出よろしく声を張って宣言する。


「我ここに盟約の証をかざさん。(久々だなこのセリフ。ドミネーション・チョイスの自陣がある場所に、最初の配下を召喚する為のセリフだ。記憶が蘇ると同時に、ゲーム内であれば手元に契約の金の腕輪、通称『奇跡の腕輪』があらわれるよう演出されるが、今回は腕輪が銀から金へと色を変えていく演出だ。女神様に頼んでおいて正解だったな。聞き入れてもらえるとは思ってなかったけど、まさに僥倖ぎょうこう!)忠実なる者よ我が前に姿を!」


 僕の着けている腕輪が輝きを増す。その変化が見られたことに母ビスタリアとビジルズの二人は、揃って驚きを表情に出した。


 僕がセリフを言いながら腕輪を前方にかざすと、目の前の床に魔法陣が描かれ、瞬く間にその上に人の姿が光り輝いて現れた。光が人型を成して収まっていくと、そこには召喚に応じ現れた、フリル付きの白いエプロンと黒に近い藍色あいいろの服を着た、所謂レムルが来ていたのとは少し違った、メイド服姿の黒髪をポニーテールでまとめた、15歳前後の凛々しい少女が膝をついた状態で姿を見せた。


 僕は余韻に浸りたいのを我慢して、その少女の名前を呼ぶ。どうしても確認しておかなければならないことがあるからだ。


「久しぶりだねトヨネ。『僕』が分かるかい?」


「もちろんです『ご主人様』。再び仕えることができ、大変嬉しゅうございます。御用があれば、何なりとお申し付けください」


「うん、ありがとう。話をしたいのはやまやまなのだけど、少しだけ待っててほしい」


「はい」


 僕は、その場で立ち上がり、頭を下げて一歩下がったトヨネから、母ビスタリアと家令のビジルズに向き直り、今起こったことの説明を再開する。当然都合の良いようにあることないこと混ぜ込んでである。多少気が引ける思いではあるが、僕にも秘密を持つ都合というものがある。心の中で、二人に謝っておく。


「母上、これがこの腕輪の能力の一つ召喚です。ガーディアンと呼ばれる従者を召喚できます。従者は遠くからでも現地に呼び寄せる能力があります。先ほども言いましたが父上からの形見は僕しか扱うことはできません。他者が持ってもただの腕輪です。ですが、僕であればこのように運用には事欠かない素晴らしいものです。このまま僕がこれを使用し続けてもよろしいでしょうか?」


「オ、オルクス。あなた髪の毛の色が……銀色に。それに目の色も少し変わったような。……ごめんなさい。突然の事で考えが追いつかないし、まとまらないわ。少し待ってちょうだい」


「私もです。大変驚かされました」


 そういうと母上は手で口元を隠し、何やらつぶやいているようだ。そういえば髪の毛の色が見える範囲で金色から銀色に変わったように思う。腕輪は逆に銀色から金色に変わった。ゲームだったときは金色がデフォルトだったのだけど、演出で機能が復帰したことを示したような塩梅なのだろうか。女神様も粋な計らいをしてくれる。それと目の色も変わっているらしい。後で姿見で確認しておくか。


 そろそろ、母上が再起動してくれるみたいだ。咳払いをして、ビジルズに話しかけている。もうしばらく静観していよう。それから少しして、二人は多少の戸惑いを見せているが、結論を出したようだ。


「ええ。ルオが貴方にそれを託したならそれは貴方の物。それに使える物は無駄にするなというのもルオの口癖でした。私もそう思います。これからもそれは貴方が使い、正しく運用すればよいのです」


「ありがとうございます。今後とも大事に扱います」


 母上から腕輪の所有を認められ安心していると、少し黙っていたビジルズが尤もなことを尋ねてきた。


「ちなみに召喚の他にも、何かできるのでしょうか? 聞いて共有しておければ、何事も相談しやすいと思うのですが」


「……そうね。他にもあるならここで出来る範囲で見せて頂戴」


 母上はしばし腕輪に視線を向ける。腕輪を夫が持っていれば死ぬことはなかったのではないかと心中思っているのかもしれない。しかし、ビジルズの質問にすぐに僕に視線を向き直し、この腕輪の性能を確認する。


「はい、僕の魔力量に応じてですが召喚が他にも何人か、それにある程度の量の物品の収納と取り出し、魔力や身体能力の向上などにも効果があります。あと、これを」


 僕は腕輪のインベントリから、大人の手であれば握りこめるほどの、ガラス玉のような透明な球体を取り出し、それを母上に手渡す。


「これは?」


 母上とビジルズの困惑に、僕は母上達がいる所から少し離れた場所まで行き腕輪に向かって声をかける。すると母ビスタリアに渡した透明な球体から先ほど腕輪に充てた僕の声が聞こえたはずだ。その現象にビックリする二人だったが、構わず僕は腕はに声を向け説明を続ける。


「このアイテムの正式名は『言玉』。離れた場所からでも腕輪と球体の持ち主とを繋いで会話、もしくは念話というか、心の声を飛ばすことができるというものです。これがあれば、領地開拓で何かあってもすぐに連絡がつくようになります。それはお母様とビジルズが、それぞれ持っていてください。連絡の用途が多いでしょうから。

 それに僕も領地の運営をお母様一人にお任せしようとは思っておりません。出来る限り手伝い負担を軽くできるよう努めてまいります。弟妹達も大きくなれば小さな仕事もできるようになるでしょう。生意気を言うようですががんばりましょう。きっとうまくいきます母上」


 母ビスタリアは僕の熱弁する姿に目頭を熱くし、駆け寄って抱き締める。


「ええ、私は一人ではないのですね。貴方達がいるのだもの、やって見せなければルオに叱られてしまうわ。一緒に頑張りましょうオルクス!」


「はい、母上!」


 それから、僕、母上、ビジルズの三人とトヨネを含め、夜遅くまで今後の予定を話し合った。そこで僕に欠けている知識や常識の埋め合わせ、母ビスタリアは今後の領地運営についての方針を固めていく。トヨネは説明の補足を尋ねたり、ビジルズは自分の仕事内容と処理能力について説明したりと、共有する時間が少ないと感じるぐらいの時を過ごしていった。


 そして僕に致命的というほどでもないが、欠点があることが判明した。ただそれは、後日機会があるときに触れることにする。


 そして翌朝、挨拶もそこそこに弟達をビジルズに任せ母上と僕は、トヨネと数名の警護をつけて王城のある王都のあるユピクス王国に向かっていくのだった。

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