忘れかけてた遊び方

「ヒマだー」

「いや、お前年末予定入りまくってんだろ」

「うんうん。しんちゃんこっちで予定のない日ないでしょ」

「違うんだよロイド君、バンちゃん、お前らはわかってない」


 年末年始ということで、地元に帰ってきた。今回も謎にシンの車で途中ぷらぷらしなからのドライブ旅。それが終わって実家に荷物を置いて、そのまま遊びに出るとかそんなようなノリで。

 今日はバンデンも一緒にうだうだと。まずは喫茶店でだらだらと。ただ、このだらだらしている時間もシンにとってはヒマな時間らしい。つらつら話すだけじゃなくて、どうせなら何かをしていたいらしい。


「というワケでこれからどうする」

「映画とかどうだ。見たいの何本かあるし」

「あっいいねえ。薫くんのオススメって絶対面白いし」

「えー、俺映画見てらんねーんだって眠くなるし」

「あー、イメージは出来る」

「そうだね。じゃあ映画の他で考えよっか」


 さて、ここにそんな娯楽があるのかという話だ。山羽市は一応山羽エリアの庁舎があるくらいだから小さくはない街だ。だけど、俺たちの基準はいつの間にか三大都市圏の星港になっている。星港基準で考えれば、しょぼい街だ。

 映画を封じられてしまえば、他に何があるだろうか。俺たちは向島に出て3年目。それまで当たり前だと思っていた物が逆に新鮮に感じるだろうかと観光サイトを見てみたけど、やっぱり面白くなさそうだったので観光も却下。


「てかロイド君普段何して遊んでんの」

「普段? 部活が現役だった頃は遊んだ記憶ないしな……」

「記憶が飛んでるの間違いじゃなくて?」

「うるせー。えっと、映画抜きなら買い物か飲んでるか……ああ、釣りとか観劇とか? こないだは遊園地と鉄道博物館だろ。あとイブにおばなの里のイルミネーションに行った」

「えっイルミネーションとか彼女?」

「いや、山口とだ」

「アニかよ! つか男2人で何してんだよロイド君」


 今から思うと俺もワケがわからないけど、イルミネーションに関してはそれが一般評なのだろう。男2人でイルミネーションと聞くと、うん、確かに。周りはカップルが多かった。


「バンちゃんは何して遊んでんの?」

「あのねー俺はねー、……バイトしてるかなー」

「ダメじゃん!」

「あとはゼミ室でお喋りしてるとかー」

「ダメったらダメ!」


 全然ダメじゃんなー、とシンは俺とバンデンにダメ出しをしてくる。その言い方があまりに酷かったからお前がどうなんだと問い詰めてやったら、ゲームやってるって返ってきたのでシンも人のことは言えない。


「シン、バンデン。ボウリングなんかどうだ」

「えー!? 俺めっちゃ下手なんだけど!」

「俺も下手だよー」

「心配するな、俺も下手くそだ。俺たちに縁遠い物はスポーツだ。だからこそ優劣の付きにくい、かつ動いてるって感じの娯楽としてボウリングを提案する」


 結局、これからボウリングをやって、カラオケに行くことに。それで、夜は軽く飲めばいいんじゃないかということで落ち着く。バンデンは酒をあまり飲めないらしいので、ここからはドライバーをやってくれることに。


「だけどな、誰かと会ってても動いてないとヒマってのもなー。シンの考え方は極端すぎるだろ」

「えー、喋ってるだけとかネタ尽きるだろ! 新しい話のタネを生み出さねーと間がもたねーのよ」

「そうやって、こっちにいる間は動き続けるんだねしんちゃんは」

「そーそー。あっそうだ、ロイド君とバンちゃん大晦日ヒマ? 高校で花火やるんだけど来るよな!」

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