秘密結社の良心
「わーっ! ゲンゴローが死んだー!」
「きゃーっ!」
「ユキちゃん大丈夫!?」
「変な味ー、と思ったけどこれは慣れればイケるや。はちみつとチーズかな」
俺の部屋は、何かの焼けるちょっと変わった匂いが充満して、いくつかの死体が転がる混沌の空間と化していた。ここで行われているのは、インターフェイスの1年生で集まって開かれているたこ焼きパーティー。
俺の中では普通のたこ焼きをころころ焼いて、それを山積みになるまで焼いてわーってみんなで食べるっていう楽しい会のつもりでいた。それがどうだ。何人かは明らかにハズレを引いている。
「って言うかたこ焼きでしょ!? ユキちゃん、ホットケーキカステラじゃないよね!?」
「うん、タネはたこ焼きー。でもはちみつチーズ案外美味しいよ。ミドリも食べてみたら? まだこの山の中にあるかも」
「あ、うん、俺はいいや」
そして黙々とたこ焼きを焼き続けるのがタカティとアオっていう時点で恐怖しかない。タカティは「俺細かい作業得意だから出来るかも」って言ってて、アオは「学祭で上達したから任せてほしい」って言ってたよ。真に受けちゃいけなかったんだなあ。
「だから言ったべ。高木とアオに任せると地獄絵図になるって」
「うん、エージの言うことは正しかった」
「ファミレスのドリバーでもゲンゴローが高木に殺されてたっていう。カラオケでもアオがロシアンたこ焼き注文してたべ。この2人は混ぜるな危険だべ。買い出しの時点から結託してたに違いないっていう」
いかにも真面目そうなタカティと、カタそうなアオが率先して悪乗りするタイプだったっていうのがこの空間をカオスにしてる原因だったんだと。エージも、わかってたならもっと強く止めてくれればよかったのに。
「タカティ、次はどうする?」
「うーん、そうだなー。ゲンゴローが死んじゃったし明らかにマズいのはやめとこ」
「じゃあワサビとカラシは片付ける。ショウガはどうする?」
「ショウガは相性いいのあるかもしれない。はちみつチーズは好評だったしもう1個作ってみようかなあ」
「1点ものだったの?」
「うん」
平和なたこ焼きパーティーを荒らした張本人たちは、相変わらず楽しそうにたこ焼きを丸めている。そう言えばアオはサークルのときも闇鍋やりたいって言ってたし、こうなるって俺もわかってるべきだったんだなあ。
「高木、お前はさっきから何やってんだっていう」
「あイタっ」
「ここから先は俺がやる。お前らこれ以上食材に触るな」
「エイジは神経質だから」
「お前が気にしなさ過ぎなんだべ! 食いモンで遊ぶな!」
エージのお叱りが入り、ゲテモノたこ焼きをこれ以上生成しない方向性でまとまった。闇たこ焼きパーティーはおしまい。これからは普通のたこ焼きパーティーが始まる。
ただ、それまでに積み重ねられたたこ焼きの山は、何がどうなっているかわからない。タカティとアオ曰く普通のたこ焼きもあるそうだけど、ワケのわからないたこ焼きの方が多いかもしれないそうだから、正直怖い。
「そう言えば俺全然食べてないや。エイジ、いつ焼けそう?」
「お前は今までに作ったゲテモンでも食ってろ」
「えー、何が入ってるか知ってるし食べたくないなあ」
「じゃあ作るなっていう!」
なんかもうタカティがわからない。
そして、例の山をどれが美味しそうかなーって物色するのははちみつチーズがアタリだったユキちゃん。
「ユキちゃん危ないよ、変なの混ざってるし普通の食べた方がいいよ。今エージが焼いてくれてるし」
「一点ものってわくわくしない? それに、あたし辛いの平気だからゲンゴローみたいにはならないと思うんだー。あっ、これにしよーっと」
「ええ……大丈夫…?」
「あっ、これピザソースとウインナーだ! おいしー!」
「えっ、当たりもあるんだ。って言うかユキちゃん当たり率高いね!」
「ミドリも食べてみなよ、案外美味しいのあるから」
そう促されてつまんだたこ焼きは、当たりでも外れでもなく微妙だったのでこういうところでも俺は持ってないなって思いました、まる。どうせなら両極端な感じで当たるなら当たる、外すなら外したかったなあ。
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