Magical Pumpkin Knight

 本格的なサークル活動も始まって、放送サークルMMPにも少しずつ1年生の見学者が訪れるようになっていた。ゲッティング☆ガールプロジェクトという作戦名で動いている今期の新歓。果たしてこれからどうなるやら。

 今日は友達同士で見に来たと思われる男子学生が2人。服装や見た目からして情報系だろう。俺と同じものを感じる。それを応対するのは菜月先輩と圭斗先輩。サークルのツートップ。


「ん、口で説明するばかりじゃわかりにくいから、実際に見てもらった方がいいかな。菜月さん、頼むよ」


 菜月先輩がアナウンサー席に座れば、デモンストレーションの開始。それを、1年生に対して圭斗先輩が説明を入れながら見る形。まあ、実際これが一番わかりやすいよなあ。


「何をボサッとしてるんだノサカ」

「えっ」

「ミキサーがいないじゃないか」

「あっ、はい、すみません!」


 突然の指名で驚いた。何故って、今のMMPには機材に触れる人間が俺を含めて3人いるんだけど、一番ミキサー席から遠い俺が指名されるとは思わないじゃないか。もっと言えば、それまでミキサー席に座ってたりつでいいじゃないか。


「それでは、ゲイン合わせます」

「はい」


 簡単な見本番組でも、マイクに声を乗せる前には一連の動作を。でも、あんまり急でちょっと落ち着かない。菜月先輩が声を出すその横で、俺は機材のいろいろなつまみを先輩に最適化するよう調整するのだ。


「……男相手だとやる気が出ない」

「菜月、お前の本音はそれか」


 見学者が帰るやいなや、菜月先輩はむすっとした表情。それまでのいい先輩してますよオーラもどこ吹く風。番組仕様の声から比較してもトーンや張りが落ちて、あからさまにやる気がなさそうだ。


「大体、友達同士で冷やかしに来る連中なんてMMPに定着することなんかそうないんだから、ああいうのに営業するのもめんどくさい。全部圭斗がやってればいいのに。もうやだ、知らない人と喋りたくない」

「相手が男女関係なく、ああいう場では女性の方が印象はいいからね」

「知るか。うちは人見知りなんだ。番組だって三井か誰かに任せればいいんだ、アイツなら引っ込めって言っても出しゃばるのに」


 菜月先輩がめそめそと愚痴を垂れ流している。よほど男相手に応対していたのが堪えているのだろう。確かに、よくいる理系だし特別イケメンでもなく、俺の食指もそこまで反応しなかったからなあ。

 あ、誤解を避けるためにも言っておけば、俺は別に女性に興味がないというワケではなく、片想いをしている相手が至上なだけであって他の女性は皆カボチャだし、イケメンが好きなのは特撮や何かで若手俳優を知っていった結果だ。


「うう……いい加減かわいい女の子が来て欲しい」

「贅沢を言うんじゃないよ」

「ウルサい、お前とノサカが片っ端からビラを配らないのが悪いんじゃないか」

「そういう自分はどうなんだ」

「うちは女の子の連絡先ひとつゲットしてる」

「ならその子を待ちなさい」


 今年も菜月先輩はワガママ放題なのか。いや、それを許してしまう俺も少しは反省しなくてはいけないのだけど。

 はあ。俺はカボチャよりイケメンの方が需要あるんだけどな。圭斗先輩もイケメンだけど、タイプの違う美少年来い! 妖艶でない美少年!


「ところで野坂君」

「はっ、はい…! 何ですか圭斗先輩」

「菜月がこの通り不機嫌なんだ。どうかここは一発、ローキックの的になってはくれないか」

「重いのが分かっていて的になりたいと挙手が出来るほどドMではありません!」

「マサフミのMはドMのMじゃなかったかな」

「違います!」


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